マガジンのカバー画像

ショートショート

135
ショートショート小説
運営しているクリエイター

2018年10月の記事一覧

予感

水の声が聴こえる。 声はやがて幾重にも重なる波になって、川になり、山を降りて大地を削り、…

都会の中のゲストハウス

「どうしよう…」 恋人と喧嘩をして同棲する5駅手前の家を飛び出したのが3時間前。 僕はもう途…

バターの恋

私はバターが嫌いだ。 見るのも嫌だ。 恋人が浮気をした時、彼の家には手作りケーキがあった…

軍曹のチーム

最悪だ。 僕は会社の壁に向かって立ち尽くす。 壁に貼られた一枚の人事通達。 僕は、社内で…

我が家のルール

「ただいま」 誰もいない家に帰ってきて まず最初に手を洗う。 今日も仕事は忙しかった。 …

神さまの仕業

空の上には、神さまの国がある事を知っていますか? そしてそこには沢山の子ども達がいること…

星のこども

其の者は ある日突然 やってきた。 夏の暑さが和らいで 夜の香りに切なさが混じってきた頃 淡い閃光と共に僕の元へ。 薄いピンク色の靄の中 青い光を燦々と放っている其の者は 星の子ども。 細長い触手が身体から伸びていてぷよぷよとした生き物。 その出会いに 僕はあっという間に夢中になった。 美しいものを見て欲しい。 素敵な音楽を聴いてほしい。 楽しいことを一緒にしよう。 僕たちは たくさん遊んだ。 けれどね 日に日に、陽が落ちるのが早くなる。 1ヶ月経っ

共犯者

喉が乾く。 喉が渇いてしょうがない。 真夜中のベッドの中、そう思いながらも私はまた眠りに落…

僕とカタツムリの夜

ある朝、ベランダに出るとカタツムリがいた。 もう季節は秋で、肌寒い。 「こんな時期に、どう…

サバンナに

この広大なサバンナには、幾千もの生き物たちが暮らしている。 大きいもの、小さいもの、数が…

ボイコット

時はきた。 世界中で大停電が起き、全てのコンピューターは止まり、地球は暗闇に包まれた。 …

イリナとサキ

私たちがこのケイタラという星に調査に来て、3日が経った。 美しい水の星、ケイタラ。 私たち…

お妃様と鏡

あるところに、美しいお妃様がいました。 お妃様は魔法の鏡を持っていて、ある日鏡に言いまし…

生ひ優る

那覇空港で乗り換えて、もう1便。 そこでやっと、彼女の住む島に着く。 石垣空港だ。 飛行機を降りたところに、大きなポスターが貼ってあった。 『ようこそ、石垣島へ』 シーサーとハイビスカスとともに書いてあるそれは、今の僕にはどこか哀愁漂うものにみえた。 成田や羽田と違って、石垣空港はこじんまりと小さい。 小さくて、あっという間に出口に着く。 出口の数メートル手前で僕は足を止めた。 「どうしたの?」 彼女が振り向いた。 「僕は行かない。ここで見送るよ」 彼女は黙って僕を見上