touji namiki

リタイアした閑人。元はマーケティングがらみの仕事をしていた。もっとも大半の時間は本を読…

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リタイアした閑人。元はマーケティングがらみの仕事をしていた。もっとも大半の時間は本を読んで過ごしていた。これからも本を読んで過ごすつもり。あとどれだけ読めるか。何回「ああ、面白かった」とページを閉じられるか。

最近の記事

大臣は、時をかける元少女

 これはひょっとすると、重大な秘密かも知れない。  こんな重大な秘密をここに書いてよいのかどうか迷う。けれど書かずにはいられない。  むかし、王さまの秘密を知った床屋は郊外の野原に掘った穴に向かって叫んだ。「王さまの耳はロバの耳」。別の少年は、パレード中の王さまに向かって直接叫んでしまった。「王さまは裸だ」。別の若者たちは王さまがこわいのでA4サイズの白紙をかかげた。  床屋も少年も若者たちも、たぶん秘密警察に連行され秘密のうちに秘密の処置を受けたと思われる。  わたしも、秘

    • ■ハッピーリタイア支援法(通称ナリタ自決法)

       これまでは80歳をすぎても年金はふつうにもらえていた。  けれど、高齢者になれば生活も縮小するし、食も細るだろう、たいして金も使わないだろう、というので年金受給から除外されることになった。かわりに国が生活を管理する。必要な支出はお世話係が一人ひとりの高齢者の実情に合わせて支出する。いわば国が成人後見人になって面倒を見てくれるわけだ。もっとも支出には上限があり、歳が増すにつれて天井が低くなる。  また75歳以上の高齢者は先住民として居留地に移住することになる。居留地の多くが原

      • 思い出のアルバム不要論

         ぼくはアルバムというものをもっていない。家のどこかにはあるかも知れないが、中味は大半がむかし飼っていたネコたちの写真だ。ネコたちのことはこころに焼き付いている。久しぶりに開いた本のあいだにネコの毛が挟まっていたりする。ときどき夢にも見る。ネコたちが一匹ずつ去って行ったのもう四半世紀もまえのことだ。飼い始めたのがその四半世紀ちかくまえになる。つまり人生を3つのクォーターに分けて、 第一期、ネコたち以前 第二期、ネコたちの時代 第三期、ネコたち以後 と定義づけることもできる。

        • 年齢観革命が進んでいる。

          アイデンティティの中心は年齢である  ロラン・バルトというフランスの思想家の短いエッセイ。『老人ノゴトキ子供、子供ノゴトキ老人』を読み直してみる。邦訳でたった4ページの短い走り書きだ。本来は、講義の抜粋であったらしい。  書き出しはこうだ。 「幼児、子供、少年、青年、壮年、老年。いかなる社会も、人間の時間を分割して考える。そして世代というものを作りだし、分類し、名前をつけて、その構造を成人式や兵役義務や法規といった方法で社会的機能に結びつける。」  家を一歩出て、何かしよ

        大臣は、時をかける元少女

          ついに後期に到達した。 

           市役所から郵便が届いた。それによるとぼくは後期に移行するらしい。  ブラームスに手紙が届いた。そこにはこう記されている。 「あなたは後期ロマン派と認定されましたのでお知らせします」  ブラームスは気になったので年若の作曲家に電話した。 「リヒャルト、きみんとこは来たかい。後期認定とかいうやつ」 「ええ、きましたとも。グスタフのほうにも届いたみたいですよ。直接はきいてないから良くわからないけど、アントンとかフーゴーにもいったんじゃないですか」 「おれたちは、一把ひとからげで

          ついに後期に到達した。 

          高齢期の意味。規格パーツから規格外へ

           社会は人間を性と年齢によって分類する。10歳代はこう考えている、しかし40歳代はそうは考えない。60歳代は全然別だ、というように、あらゆる行動や思考に年齢別の偏りがあると考える。  たとえば、選挙のたびに年齢別の分析が行われる。若い世代は防衛力強化を支持しているが、高年齢層は反対が多い、というように年齢別のちがいばかりが際立つ。  実際には年齢層のちがいだけが行動や思考に影響を与えているわけではない。住んでいる地域、収入や資産、家族構成、学歴、職業、宗教などで、行動や考え

          高齢期の意味。規格パーツから規格外へ