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甘党だからなんだってんだ

山本桜は

相当な甘党だ。


俺がこの一週間で手にした

数少ない情報。


「…だから、なんだよ。」

「だから、なぁ、

それが分かんねーから

お前に聞いたんだろ。」


流星は俺の回答に
はぁ、とため息をつく。


「つーか…、

三年間も同じクラスで
手にした情報、小さくね??」

「逆だろ。

三年間同じクラスだから
もう、新しい情報はない。」


実際、それまでは
山本のこと、そうゆう目で
見たことなかったし。


横溝の親友、程度。


「じゃー、甘いモンやれば??

そうすりゃ、お前のこと
好きになるんじゃね??」

「あのな。

そんな簡単だったら
お前なんかに相談しねぇ。」


俺の言葉にカチンと来たのか

流星は少し顔を歪める。


「どーせ、俺は
最近彼女できたばかりの
役立たずな友達ですよ。」

「そこまで言ってねーだろ。」

「ってか、山本も多分、お前のこと-」


流星が言いかけた時、

横溝と山本が
廊下から戻ってくる。


「あれ、珍しい。

伊達が教室で喋ってる。」


横溝はそう言いながら
はい、と流星に紙を渡した。


「なにこれ。」

「今週の防音室の振り分け。

ちゃんと目通してね。」


山本は横溝のお茶を持ちながら
後ろでかったるそうに待っている。


その手にはほら、

チョコパンと、プリン。


「…伊達??

どうかした??」


ボーッと山本のパンを見てたら
少し笑ってそう聞かれた。


「あ、いや…、」

「伊達もプリン、すきなの??」


いや、俺が好きなのは


山本なんだけど。


「まぁ…。」

「じゃあ、これ、あげるよ。」


はい、と渡されたのは
上に生クリームが乗ってる

更に甘ったるいプリン。


「いや、良いよ。」

「えー、なんでよ。」

「いや…、…ありがとう。」


何を考えてるんだか知らないが

俺はそのプリンを受け取り

なぜか口にしてしまい。


「…うまい。」


流星は隣でまた

呆れた様にため息。


「良かったね。」


結局俺は今日も
手に入れた情報を

生かすことなく、

過ぎ去ってしまうのだ。



甘党だから
なんだってんだ







**

「伊達さぁ。

高校の時、私に
プリン好きとか嘘ついたよね。」


山本は今日もプリンを食べながら

思い出した様にそう言った。


「嘘じゃねーよ。」

「甘いのあんまり
好きじゃないじゃん。」


俺は自分のスプーンで

一口だけ、プリンを取った。


「プリンは好きだろ。」


あの日、あの情報に
振り回されたのは

俺のほうだった。






2011.06.07


【hakusei】サマ
004/365「甘党」

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