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頂戴って言われたのは初めて

一年で私が最も好きな日。

それがバレンタインデーだ。


「渚先輩のこと大好きです!!」

「おぉ、ありがとう。」

「渚、こないだは本当ありがとう。
これお礼のチョコ。」

「いやー、きにすんな。」

「渚ちゃん、これ。
いつもありがとう。」

「いえっ!!
なんかあったらまたいつでも駆け付けます!!」


私は多分、

そんじょそこらの男よりモテる。


まぁ、たまに本気で女から告白されて
結構困ることもあるけど

大抵は嬉しいし美味しい。


気分上々でバイトに行くと

岬はソファでゴロゴロしていた。


「あー、渚さん、おそいー。」

「つーかお前、大学は??」

「もう行かなくても単位取れたんで。」


本を読みながら
お菓子を食べてそう言った。


「あ、渚さん、これ。

事務所のポストに箱で来てました。

さすがプチ伝説ですね。」

「プチは余計だ。」


中には、私がまだヤンキーだったころ
ちょっと遊んでた奴らの名前が書いてあった。


「やっぱ渚さん、
人気なんですねー。女から。」

「まぁな。」


自信を持ってそう答えたら
本から顔を上げる岬。


「いや、今のは嫌味です。」

「はぁ??どこが。」

「…気付いてないなら良いです。」


そして岬はソファに座り

私に手を伸ばして来る。


私はその手に脱いだコートを渡すと

振り払われてしまった。


「おまっ、なにすんだよ!!

これ、郁さんが選んでくれた
お気に入りのやつなんだぞ!!」


「チョコ。」


…よく聞き取れなかった。

いいや、気にしない。


「今日の仕事はなんだろなー、っと。」

「チョコ。
チョコください。」

「あー、また資料整理かよ。」


「チョコくださいっ!!」


ダン、と足を踏み鳴らした岬を

私は思わず睨んだ。


こいつ頭大丈夫か??


「なんで私がお前に
チョコ渡さなきゃいけねんだよ!!」

「いっつも仲良しでしょ?!」

「関係ないね!!

お前は女だっ!!」


「僕は男ですっ!!」


多分言ってから
岬はハッとしたんだろう。

慌ててソファに座り直し

私から目を逸らす。


「…女同士でも、
友チョコとか渡すでしょ。」


岬の気まずそうな感じを見て
私はなんだか逆に申し訳なくなる。


こいつ、なにこんなに

気遣ってんだ。


「…はいよ。」


ポッケに入っていたクッキーを投げ渡すと

岬は嬉しそうに笑った。


「友チョコだからな。」


そういえば私、
バレンタインにあげるの


八年ぶりくらいかもしれない。



頂戴って
言われたのは初めて







**


岬といると本当、

調子おかしくなる。


友チョコだって言ってんのに

なんで嬉しそうにするんだ。






2012.02.15
hakuseiさま
頂戴

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