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(6)いよいよ手術 #IPMN

手術前日

オペ説明が夕方になるというし、手術当日は朝が早いので、前日から病院そばのホテルに宿泊。
外来で説明を受けたとおりの手術の方式とその後の管理、手術に伴うリスク、合併症などについて説明を受ける。
説明を聞いて、同意書にサインしたからといって、それら全てに同意している訳ではない。
が、ここでサインしない選択はできないのだろう。
何だかなあ。

宿泊先はビジネスホテルだが、トイレとバスルームが完全に独立していて、バスタブにお湯はりする機能(自動でストップ)もついている。
これがとっても快適で、とてもいい温度のお湯がたまる。
夫の入院中、何度もここに泊まることになるのだが、このお風呂には本当に慰められた。よかった。

手術当日の朝

午前8時に病棟エレベーターホールに来るように言われていたので待機していると、偶然、執刀医が通りかかった。
にこにこと健康そうな笑顔。
コンディションばっちりという感じ。
これは大丈夫。
そう思えた。

しばらくすると、看護師に付き添われて手術着姿の夫が現れた。
緊張するなあ。
八年前、私は逆の立場だった。
何となく見覚えのあるオペ病棟へ移動し、オペ室の前で夫とは分かれる。

いってらっしゃい。
がんばってね。

余談だが、夫に付き添ってきた看護師は無愛想で冷たい感じ。
嫌な気分がしたが、オペ室担当の男性看護師はとても明るく穏やかで、私が耳が悪い不安を伝えると、
「大丈夫です。PHSブルブルしますし、もし電話に出て分からなくても、ここに来てくだされば大丈夫ですから。」
と言ってくれた。
あとは待つだけ。

ひたすら待つ

手術予定時間は約10時間。
麻酔の時間を含めると11時間ぐらいか。
午前中はまだよかった。
病院内のカフェで珈琲を買い、スマホのメモに心境をタイプしたりしながらゆっくりする。
図書コーナーで、退院後の参考になりそうなレシピ集を読んだり。

お昼どきになっても、まだ4時間だ。
オペ室に入ったのは午前8時半ぐらいだから、それから麻酔の処置をしたとして、オペが始まったのは9時ぐらいか。
まだまだだなあ。

午後4時。七時間経過。
外来がほとんど終わり、人が減っていく。
院内のコンビニやカフェも、少しずつ寂しくなっていく。

早く終わらないかなあ。
いやいや、予定より早く終わるということは、何らかのトラブルの可能性があるわけだから、だめだめ。
十時間しっかり。
として、あと3時間?

ここからが長かった。
永遠と思えるほどに長かった。

午後6時になると、院内の主な照明が消え、外来窓口は暗くなる。
手術が終わるのを待っているであろう人も、あと三人、四人ぐらいか?

午後7時。
そろそろ十時間だ。
待っている人は私を含めて三人。

午後7時半。
PHSが鳴った。
電話に出たけれど、医師の声が全く聞こえてこない。
困ってしまって、とりあえずオペ病棟へ行く。
ちょうど同時に呼ばれた他の患者さんの家族に、一旦電話を代わってもらって、どうしよう・・と慌てていたら、主治医の姿が見えた。
電話に出てくださった方にお礼を言い、説明室に入る。

手術無事終了

長時間のオペを終えたばかりとは思えないほど、主治医は相変わらず機嫌よく元気。
説明の合間に思わず、「先生、10時間飲まず食わずですか?」と聞いたら、「いやいや、途中交代しますよ」とのこと。
ダヴィンチの操作は主治医にしかできないけれど、簡単な縫合などは別な医師がするのだろう。

「予定どおり済みました。傷口も小さい。出血も少ない。大丈夫。」

心強い主治医の言葉。
とにもかくにも第一関門突破。
手術は無事に終えた。
よかったよかった。

そして、10時間超のオペに耐えた夫とモニター越しに対面。
痛み止めが効いているみたい。
ホッとした顔をしていた。
手も動かせないだろうし、喋れないだろうから、私の声が聞こえたら目をぱちぱちさせてね、と約束していたら、大丈夫?という問いに、目をぱちぱちした。
よかった。

夫は、この日と翌日はICUで過ごす。
スマホにも触れない。
しばし音信不通になる。
心配だが、仕方ない。
ICU担当の看護師に、
「スマホの電源、切らないでくださいね」
と言われたのが、わかっていることとは言え怖かった。

午後9時近く、ホテルの部屋に戻り、熱いお湯をバスタブにはり、ゆっくりつかった。
長い長い、とにかく長い、心と体にどっしり疲れがのしかかる一日だった。

あとは順調な回復を祈るばかり。
ここからがまた大変だったのだけど。

→(7)に続く


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