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(7)恐れていた合併症 #IPMN

不穏な知らせ

手術から一週間、朝の回診で、主治医曰く、
「今日を超えたら、あとはぐんぐん回復しますよ」とのこと。
夫のLINEも嬉しそう。
順調に二週間で退院できるかも?!

ところが、「今日を超えたら」という主治医の言葉が正に分かれ道。
夕方近く、
「今朝の血液検査で炎症反応が強くて、CTを撮った結果、どうやら膵液漏れが起きて、近くの血管から出血してるらしい。それを止める処置をするんだって。病院からも連絡すると言ってたけど、先生たちを信じていれば大丈夫だから心配しないでね」と、夫からLINE。

膵液漏れ。
血管損傷。
出血。

最も恐れていた危険な合併症だ。
最悪だ。
間もなく私のスマホが震えた。
(iPhoneと補聴器直結、docomoのみえる電話で対応)

主治医は別なオペ中とのことで、他の医師からの連絡。
「カテーテルによる止血処置をします」
「あくまで大出血を防ぐための、手前の処置だと思ってください」
「終わりましたら、またご連絡します」とのこと。

「病院まで来てください」とは言われなかった。
ということは、そこまでの危険はないということ?
大丈夫なの?

そうは言っても落ち着いていられない。
急きょ荷物をまとめて、病院近くのホテルへ。

祈るしかない

暮れてゆく空。
美しい夕焼け。
電車の中で、ひたすら祈る。
どうか無事でありますように。
無事に済みますように。

一時間ほどでチェックイン。
さて、どうしよう、どうしよう。
外はひどい暑さ、汗を流したいけれど、お風呂に入っている間に連絡が来たら困る。
どうしよう、どうしよう。
部屋を1.5往復したところでスマホが鳴った。

は、早っ!

夫、がんばった、乗り越えた

「○○です。」
今度は主治医からだった。
いつもそうなのだが、こちらを安心させてくれる、大らかでのんきそうな声が聞こえてきた。

「どうも、お騒がせして、ご心配おかけしてすみませんでした。
処置は無事済みましたんで、ご安心ください。
出血も少なく、きちんと止血できました。
ご主人もよくがんばってくれて。
あとは、今回できた血の塊がどうなるかで、追加処置が必要になるかもしれませんが、今日のところはもう大丈夫です。」

へなへなと体の力が抜ける。
本当によかった。よかったよかったよかった。
ありがとうございます。
スタッフの皆さん、本当にありがとう。
夫にもありがとう。
全ての存在に感謝したい気持ち。

振り返り

その後、夫からもLINE。

「先生たち、本当にすごいよ!」と興奮気味。
カテーテルによる止血処置は、外科医ではなくカテーテルの専門医が行う。
この医師がすごかったらしい。
(カテーテル処置は局所麻酔なので、スタッフのやり取りは全て聞こえる)
噂によると野戦病院にいたこともあるらしく、相当な凄腕とのこと。
そんな医師に助けていただけて、本当にありがたい。

これは退院してかなり経ってから聞いたのだけど、入院中、最もつらかったのは、オペでも、物が全く食べられなくなったことによる激しい嘔吐等でもなく、このカテーテル処置の夜だったらしい。
そんなこと一言も言わなかったのに。
何でも、朝まで1ミリたりとも体を動かすなと言われ、寝返りも打てないし、腰が痛くなってもどうすることもできない。
とにかくじっとしていなければならない。
万が一、体を動かそうものなら、止血した箇所が再び破れてしまうかもしれない恐怖。

「あれは地獄だった」そうです。

ともあれ、危険な山を乗り越えて、今度こそ回復するのみ!
入院は長くなるけど、命あってこそ。
がんばれ夫、がんばれ私。

→(8)に続く


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