地底アイドルにもTOがいた話

地下アイドル用語の1つにTOというものがありまして、トップオタの略、つまりその子の所謂1番強いオタクと言いますか、まぁそう言った存在の方がいるんですよ。

TOがいない現場ももちろんあって(みんな平等だから1番なんてないよみたいなね)、私自身もTOという言葉を、わかりやすいから使うときもありますがあまり肯定派ではなくてですね。でも今回の記事ではわかりやすくする為にあえてTOという言葉を使います。

まずはじめに、オタク=趣味です。
どんなに強かろうが、金を使おうが、命削って社会的にアウトなくらい会いに行こうが、趣味です。仕事でも義務でもない。趣味です。
だから私は絶対に「無理しない程度に遊べ」と言い続けてました。趣味で人生滅ぼす訳にいかないからね。

食費を削ったり、家庭に亀裂を走らせては元も子もないんですよ。趣味なので。何回でも言いますよ。趣味なので。

そして、動員も実力も所謂地底レベルの私にもありがたいことにTOがいました。
出会いは2014年の3月で、あなたは当時私が働いていたメイドカフェのご主人様でした。詳しい時期はごめんね、ちょっとあやふやなんだけど、確か同じ年の6月頃に帰り際、「推しだからね」と言われた記憶があります。
あなたはお昼休みに会社を抜け出しメイドカフェのランチを食べて、食後のデザートみたいなテンションで、なんてことない平日の真昼間に1万5,000円するタペストリーを頼みましたね。食べ終わった食器を下げながら「何かおかわりいりますか?」と聞いたら「じゃあタペストリーください」なんて言われて、お皿をひっくり返しそうになりました。その時のことを私は今でも鮮明に覚えてます。

それから、その年の8月に行った私の初めての生誕イベントで、当時私のことを推してる人なんてほんの限られた人数しかいなかったのに、あなたもお店に通い出してそんなに時期も経ってなかったのに、その中でとても頑張って盛り上げてくれました。人見知りのあなたは勇気を出してみんなを巻き込んでおっきなお祭りにしてくれましたね。
当時の私のカラーはオレンジで、人生でいつかはサイリウムの海に溺れたいって言ってた私の夢を叶えてくれました。一曲丸々大泣きして踊れなくてごめんね。

それから節目節目では口上を作ってくれたり、サイリウムをバキバキ折ってくれたり、常に私が1番喜ぶことは何かを考えて、たくさん幸せにしてくれました。

私が初めて心がバキバキに崩れてもう活動出来ないですってサジを投げた時、1番はじめに頭に浮かんでたのは誰でもなくTOの顔でした。きっと私を責めないで、でもとても悲しむだろうと思ったけど、それどころじゃないくらいに私はもう外に出れなくなってしまって、今までの恩を仇で返してしまいました。

私はもう人前に立たないと決めてから2回も改名してノコノコとやり直したのは、あなたに素敵な景色をまだ見せてないと後悔していたからです。恩着せがましかったら本当にごめんなさい。

私の大阪遠征も北海道遠征もついてきてくれたし、3年くらいはライブ全通だったし、私の月22回くらいあったメイドカフェの出勤も全通してた時期もあって、12時から22時のオーラスの日は昼休みと会社終わりで1日に2回も来てくれて、嬉しい気持ちとこの人マジで大丈夫か???って気持ちの板挟みでした。大丈夫じゃなかったよね???

当たり前なんて1つもなかったから私はいつもごめんとありがとうを連呼してたけど、「雫のTOさんなんで今日はいないの?」って他のメイドさんに言われて内心イラついた時もありました。TOだろうがなんだろうが、いて当たり前なんてことはないはずなのにね。でも、周りからいて当たり前だと思われるくらい私に愛を注いでくれてたことは本当に感謝しています。ありがとね。

あなたの口癖は「彼氏がいても結婚しても推しは推し」「幸せになってほしい」でした。
その点に関してはまじでごめんというか、幸せになるにはまだ時間かかりそうだから長い目で見ててほしいです。笑
いつか私が結婚出来たら、ウェディングドレス姿見せるから待っててね。

そのくらい、とても仲の良いTOでした。
私が活動を続けられたのは間違いなく彼のおかげです。

だから、私は長年「TOでも古参でも新規でも絶対に特別扱いはない。みんな平等だからね。」と言い続けてましたが、その約束を最後の最後に破って、自分のモットーをねじ曲げてでも、引退ライブで私予約で来てくれたお客さんが他にも何人もいてたくさんの人に囲まれてる中で「アイドルは見られないと続けられない仕事です。愛されないとアイドルではいられません」と言ってからステージを降り、あなたの前に立ち、「私をアイドルにしてくれてありがとうございました」と頭を下げました。

もう、もらってばかりの私に出来る、あなたへの感謝の伝え方がそれしか思いつかなかったからです。

あなたは持ちうる殆ど全ての時間を私に使ってくれてたと思います。そんなこと、恋人でも旦那でもできないことで、だから私は絶対にこの人だけは裏切れない一心で6年間やってきました。

私が例えばどんなに良い歌を歌おうが、例えばめちゃくちゃ顔が可愛かったとしても、そこにお客さんが誰もいなかったら意味がないんですよ。アイドルってそういうもんだと思ってます。
だから、私がアイドルになれたのは間違いなくあなたのおかげでした。私の夢を叶えてくれてありがとうございました。

私はアイドルのステージを降りましたが、あなたにもらった思い出は大切に胸にしまってこれからの人生を歩んでいきたいと思います。

オタクという生き物はオタクをやめれないと思うし、あなたは私のことを全力で愛してくれていたけど、それでもDD気質なのできっとまた近いうちにどこかの現場でサイリウムを折っていることでしょう。

私にくれたその愛情を、次の推しに注いであげてね。その子はきっと私みたくアイドルやってて良かったって思うはずだから。私だったら絶対そう思うから。

でも、今まで人に使ってた時間やお金を少しでいいから自分に使ってあげてね。 ちょっと、いやとても、心配だよ。

私は自分のことをどうしても好きになれない空っぽな人間でしたが、それでもあなたに5年半愛され続けて、少しだけ、自分のことを褒められるようになりました。
何もない私なのに、ファンにはとても恵まれたというか、良い人ばかりに囲まれたなと思ってます。私のことを守ってくれてありがとう。私がのびのびアイドル出来る環境を作ってくれてありがとう。世界一私のことを愛してくれてありがとう。親の顔より見た顔です。笑

私も人のこと言えないオタクなので、きっとどこかでばったり会うでしょう。その時は一緒に対面打ちでもしよーね!笑

あなたがTOでよかったです!本当に本当に、ありがとうございました!!!

嫁のことは大事にしろよ!笑


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