白老・苫小牧・千歳 研修レポート2024/3/6~7
■研修目的
JRで札幌から新千歳空港へ行く途中、もしくは千歳周辺で半日位で観光出来る所はないかという問い合わせをよく受ける。
これまでは主に支笏湖やノーザンホースパーク等をご案内してきたが、今回は主要な場所以外の千歳周辺の観光スポットや工場に目を向けてみることにした。
ウポポイはリニューアル後一度も訪れていない為、一通り見学をして改めてアイヌ文化や歴史に触れ、現地に実際に足を運び目で見て感じた事を今後の案内業務に生かす。
■研修予定
1日目
円山公園駅 8:09 → 新札幌駅 8:35着
【JR特急北斗6号】新札幌駅 8:53発→ 白老9:46着
■ウポポイ(民族共生象徴空間)・国立アイヌ民族博物館見学
【JRすずらん7号】白老14:20発→南千歳14:53着
【JR】南千歳駅14:58発→新千歳空港 15:01
2日目
【道南バス】新千歳空港9:29発 → ウトナイ湖9:49着
■ウトナイ湖自然観察路・道の駅・鳥獣保護区センター見学
【道南バス】ウトナイ湖11:45発→ 新千歳空港 12:10着
【JR】新千歳空港12:54発→ 千歳駅 13:01着
【タクシー】千歳駅13:10発 → カルビー北海道工場 13:15着
■工場見学13:30~14:40(70分)
【タクシー】カルビー北海道工場 14:55発 →さけのふるさと千歳水族館 15:05着
■けのふるさと千歳水族館・道の駅見学
【JR】千歳駅17:37発→新札幌駅17:58着
■研修内容
1日目
新札幌から特急を利用して白老へ向かう。
車内は混みあってはいなかったがそれなりに乗車しており外国人観光客も見受けられた。
隣の席には中国人の女性が座っており函館まで行く様だった。
苫小牧から白老への移動中社台ファームを通過すると産まれた仔馬が数頭おり、寒くないように背中に暖かそうなカバーが掛けられ母馬に寄り添ったり走り回る光景が見れたのが印象的だった。
時々JRやバスの車窓から北海道らしい景色が見たいという問い合わせがあるが近場でも十分北海道らしい景色を堪能できると思った。
■ウポポイへ
JR白老駅からウポポイ迄は交流促進バスも運行しているが今回は徒歩で行ってみた。
ゆっくり歩いても10分程の道のりだ。
気温は2℃と低かったが天候にも恵まれ日差しが強いせいか歩いていてもあまり寒くは感じなかった。
交流促進バス【ぐるぽん】
ウポポイを起点にJR白老駅、ポロトミンタラ※白老駅観光インフォメーションセンター等を経由している。
1回乗車100円(現金のみ) 1日券200円(車内販売)
■国立アイヌ民族博物館
2020年4月にオープンして4年目を迎える。
アイヌ民族の歴史や伝統文化等を広く伝えている日本最北で北海道初の国立博物館だ。
白老ポロトコタン以来訪れておらず、最後に行ったのはいつだったか覚えていない位ぶりだ。
以前入口で来場者を迎えてくれた大きな酋長のコタンコルクル像がなくなっていたのは残念だった。
展示物は6つのテーマに分かれており大人から子供まで分かりやすく多彩な展示方法で紹介されていた。
イヨマンテ(熊の霊送り)の儀式についての詳しい説明や、和人を始めサハリン(樺太)やカムチャッカ半島に住んでいる周辺民族と海を越えて交流を重ねながら盛んに交易をして自らの暮らしを築き、交易品を通してさまざまな文化や民族共生のありかたを伝えるコーナーもあった。
特に和人との間で狩猟権を巡る争い(シャクシャインの戦いやクナシリ・メナシの戦い等)についても、改めて理解を深め掘り下げることが出来たと思う。
展示室には道内各地のアイヌ語を受け継ぐ人が書いたアイヌ語の解説文コーナーもあり興味深かった。
博物館は写真撮影は可能だが動画撮影は禁止。
■チセ(住居)
一般的にチセは骨組みの木や屋根、壁など家を作る際に必要な材料は全て自然のものを使用しており、骨組みの木にはヤチダモやハシドイ等を使用し、屋根や壁には茅やササ、アシ等の草や樹皮等が使われている。
現在は床暖になっていたが昔は蓄熱するという理由で土間も多かったとスタッフの方が教えてくれた。
屋根や壁に使用されている茅も同じく筒状になっていて蓄熱しやすいという利用から、茅はよく使用されていたようである。
又この時期ならではの保存食の干し魚(サッチェプ)や神々に祈りを捧げる際に用いるというイナウも下げられていた。
イナウを作るのは主に男性だが作った本人しか触ることが出来ないようである。
チセの中では衣装を着る体験も出来、写真を撮っていた人も見受けられた。チセでは囲炉裏を囲んで棒で拍子を取りふしを付けながら語る口承文芸ユカラと言われるアイヌの叙事詩の実演があり、この日は名古屋や神奈川からの観光客が多く、語り手の男性も札幌から通っているそうで和やかな中、口承文芸の世界観を体験出来たのは貴重な時間だった。
■工房(もの作り見学)
スタッフによる実演が行われ伝統的な衣服やガマを使用したゴザ等を作成していた。
長く受け継がれている技術を近くで見学出来、実際に手で触れる事も可能だ。
衣服は主にオヒョウやシナノキ等の樹皮や植物繊維を使用しているようだが、衣服1枚作り上げるのに長い時間をかけ心を込めて作りあげているのがよく分かった。
■体験交流ホール
ここでは伝統芸能の上映や短編映像の上映を観ることが出来る。
エントランス棟もしくは体験交流ホール前のチケットブースで座席指定の整理券を貰う必要がある。
この日は韓国の団体ツアーも入っており賑やかだった。
アイヌ古式舞踊やムックリの演奏等を鑑賞する。
特にサロルンリムセという鶴の親子の踊りは臨場感があり素晴らしかった。
毎回5演目を紹介しているが写真・動画撮影共に禁止だ。
■ミュージアムショップ・飲食ブース
博物館オリジナルグッズや木彫り民芸品、織物工芸品等が販売されている。
テーブルと椅子がある休憩スペースではポロト湖を望みながら珈琲等も楽しめる。
天気が良かった為ポロト湖の向こう側に噴煙上げる樽前山や恵庭岳が綺麗だった。
昼食はエントランス棟から出た歓迎の広場にあるカフェリムセでチェプオハウセットを食べた。
食事をするにはエントランス棟にある券売所で再入場のチケットを貰い一度退場しなければならない。
チェプオハウとは魚が入った汁物の意味だが地元で冬によく食べていた三平汁に内容も味もそのままだった。
野菜がゴロゴロと入っており塩味の効いた鮭が美味しかった。
また今回新しくウポポイ園内を循環するバスが運行していた。
園内が広い為移動が大変だという来園者からの意見から利便性向上のため導入されたらしい。
■新千歳空港 大空ミュージアム
白老を出発して新千歳空港へ向かう。
少し時間があったので空港内を散策。
大空ミュージアムとロイズチョコレートワールドへ。
大空ミュージアムは普段は近くで見る事の出来ない旅客機のタイヤの実物と、実物大のジェットエンジンの写真パネルが展示されていて改めて飛行機の大きさを実感した。
また子供達がキャビンアテンダントや整備士等、空港の仕事を体験出来るゾーンもあり実際に使われている道具を映像や音声を使用して紹介されている。
他には航空機のモデルや航空ファン必見のアイテムやグッズの販売コーナーもあり個人的に欲しいグッズが幾つかあった。
空港内には子供も大人も楽しめる施設が沢山あるので早めに空港へ行ってフライトの時間まで施設の見学をするのもお勧めだ。
他にはよく問い合わせを受けるアイヌ民芸店や手荷物一時預かり所・宅配サービス等時も確認してきた。
宿泊は空港内のエアターミナルホテル。
滑走路側の部屋を予約したが、飛行機が間近に見えて感動した。
部屋はスカイマークやJAL側だったが夜の滑走路も綺麗で離発着を眺めて
いると時間はあっというまに過ぎた。
テレビでは離発着便がリアルタイムで確認出来る。
宿泊者は空港内の温泉施設を無料で利用出来るがフロントで温泉のチケットを貰い4階にある空港温泉まで移動する。
何度か温泉を利用する場合はその都度フロントでチケットを貰わなければならない。ちょうど夕ご飯の時間帯だったので空いていた。
夕ご飯は空港内で食べようと思ったがどこも大抵20時30分~21時位までだ。
温泉施設に長く滞在した為ゆっくり食事をする時間が無くなってしまったのでイートインコーナーで松尾ジンギスカンのテイクアウトを購入した。
2日目
■ウトナイ湖へ
新千歳空港2番のりばから道南バス苫小牧駅行きで約20分。
登別や室蘭・洞爺湖方面のバスのりばと同じだ。
バス停のすぐ傍には団体客待合室があるので天候が悪い日等はここで待つことが可能だ。
路線バスは空いており自分以外は年配の女性と途中から乗って来た地元の人達数人のみだった。
ウトナイ湖バス停で下車。降りるとすぐ道の駅が見える。湖までは歩いてすぐだ。
湖はまだ凍結している部分が多かった。
ウトナイ湖は周囲9キロ 面積275ヘクタール 水深0.6メートル。
ウトナイとはアイヌ語で小さな川の集まる所の意味だ。
この語源を持つウトナイ湖は周辺を美々川やオタルマップ川等の清流が注ぎ込んでおり周囲は広大な勇払原野や湿原など、豊かな自然環境で形成。
動植物や野鳥の宝庫と言われているように、四季を通じて野生動物とのふれあいを楽しむことが出来る。
特に野鳥類は260種類を超え、マガンやカモ、ハクチョウ等渡り鳥にとっては重要な中継地点で越冬の地だ。
平成3年にはラムサール条約に登録されている。
■自然観察路 ウトナイ湖展望台
ウトナイ湖に到着し早速自然観察路を歩いてみた。
木道があり至る所から野鳥の鳴き声が聞こえてくる。
上空では飛行機がひっきりなしに飛んでくる光景に何度も目を奪われた。
この時期飛来する白鳥やシマエナガを見たかったが、残念ながら確認することは出来なかった。
森の散策路を歩いているとどこからか木をつつく様な音が聞こえてきたので音の方向へ近づいてみると高い木の上で一生懸命穴を掘るアカゲラを発見。
木道はまだ残雪があり所々歩きにくかったが、観察路はかなり広く短時間では周り切れなかった為(一周すると1時間半位はかかりそうだ)新緑の季節に改めて再訪したいと思った。
道の駅に隣接して展望デッキを備えた高さ17メートルの展望台があり、ここから湖と反対側に樽前山や恵庭岳が綺麗に見える。
数分おき上空を行き交う飛行機に感動して何度も写真を撮った。
■ウトナイ湖野生鳥獣保護センター
ウトナイ湖自然鳥獣保護区とその周辺(苫小牧行政区域内)で人為的な原因で保護された傷病鳥獣の救護やリハビリを行っている施設。
ボランティアガイドによるウオーキングツアーが定期的に行われている。
■道の駅ウトナイ湖
国道36号線に面しており湖からもすぐの道の駅。
苫小牧はホッキが有名だがホッキカレーを食べられるイートインコーナーやホッキ寿司のテイクアウトコーナー、地元農産物の販売、湖で見られる白鳥やシマエナガをモチーフにしたグッズも沢山販売されていた。
苫小牧は道内でも屈指の臨海・臨空工業都市でフェリーターミナルも隣接している関係で駐車場にはトラックやトレーラーが多く停車しており、イートインコーナーで食事をしている人達も多く見受けられた。
■カルビー北海道工場
ウトナイ湖から路線バスに乗車し新千歳空港を経由して千歳駅からカルビー工場へ向かう。
ここではポテトチップスの製造工程を見学。
見学は基本一週間前までの予約制で料金は無料。
2名からの予約だが申し込みの際に伝えると1人でも対応可能だ。
スタッフが分かりやすく丁寧に案内してくれたので終始楽しめた。
ポテトチップスに主に使用されているじゃがいもは道東で採れるスノーデン・キタヒメ等の品種が多く使われている。
ちなみに1袋(60g)に使用されるじゃがいもはだいたい約2~3個で工場ではおおよそ20分で完成するそうだ。
見学途中で試食の時間やお土産も頂けた。
この日も家族連れや本州からのグループ参加が多く見受けられ賑やかだった。
千歳駅から路線バスで行く事も可能だが帰りのバスの時間が合わなかった為(見学終了後1時間は待たなければならなかった)駅から往復タクシーを利用した。
千歳交通の運転手さんは親切でカルビーの工場見学は人気が高いことや千歳の航空祭の時は全国から沢山の人が訪れて賑やかな事等を教えてくれたのも楽しい時間だった。
工場見学終了後はさけのふるさと千歳水族館へ。
■さけのふるさと千歳水族館
車椅子も完備されているので足の不自由な方でもゆっくり見学が可能だ。
日本初の水中観察窓や世界最大の淡水大水槽があり、サーモンゾーンでは鮭の仲間が稚魚から幼魚、成魚へと成長する姿を見ることが可能だ。
また支笏湖ゾーンでは過去に何度か水質日本一になった支笏湖ブルーと称される碧い水中空間を再現した水槽があり、実際に支笏湖の水中に潜って撮影した映像を投影し出来るだけ本物の支笏湖に近づけているらしくとても綺麗で目を引いた。
体験ゾーンではドクターフィッシュの水槽もあり子供達で賑わっていた。
気になっていたエイも確認。
ドット柄がトレードマークのエイは学名「ポルカドットスティングレイ」という淡水のエイだ。
施設の裏手には千歳川に設けられたインディアン水車がある。
秋になると沢山の鮭が遡上するが、道庁初代水産課長の伊藤一隆が明治19年に水産調査の為アメリカへ行った際に、インディアンが水車を回して鮭の捕獲をしていた事からヒントを受けて、日本に紹介したのが始まりだ。
千歳川には明治29年11月に水車が使用されているのでかなり古い歴史がある。
ちなみに鮭は雨の日や特に台風翌日等はかなりの数が遡上するようである。川の水が濁るため川底が見えづらくなるというのを鮭は分かっているのだろうか。
また夜中に上ってくる事も多いそうだ。
逆に天気の良い日は川の中がクリアになる為遡上してくる数は少ないのだとか。
やはり捕らえられるというのを鮭は把握しているのかもしれないと感じた。
研修を終えて
新千歳空港までのJR沿線で何処か見れる所、時間の潰せる所はないか?札幌市内は殆ど見てしまったのでという問い合わせをよく受ける。
フライトの関係であまり時間が無いという人も多い。
支笏湖は行きやすいがバスの本数が少ない為他に近場で行けそうな所を探し、交通公共機関を利用して初めてウトナイ湖へ行ってみた。
支笏湖に比べると認知度には欠けるかもしれないが今回足を運んでみて新千歳空港から道南バスの路線バスで20分で到着し、支笏湖よりも本数が多く行きやすいことが分かったので、あまり時間の無い人にも今後は積極的にお勧めして行きたいと思う。
散策路を歩いたり道の駅もあるのでお土産を購入したり食事をしたり充分楽しめると感じた。
ウポポイはオープン当時は予約制だったが現在は直接行っても入場券を購入することが出来る。
敷地内を走る園内循環バスの運行はご年配の方や足の不自由な方にもお勧めが出来て良いと感じた。
時間の関係で様々な体験が出来なかったので機会があれば刺繍や調理体験等をしてみたい。
カルビー北海道工場の見学は基本予約制だが、先々の旅行の相談を電話で受けた場合に、家族連れ等にはお勧めしたいスポットだ。
スタッフが楽しくわかりやすく案内してくれるので70分はあっという間だった。
◎カルビー工場見学:月~木 所要時間70分 無料
現在はポテトチップスの見学のみ。
じゃがポックルの製造工程は現在改修工事を行っている為見学は不可。
千歳駅から中央バスも運行しているが本数が少ない為タクシー(5分位で到着。片道1200円位)を利用した方が便利だと思った。
サーモンパーク千歳(道の駅)がリニューアルしていたので行ってみたが地元野菜の販売やお土産も豊富に取り揃えており、レストランやイートインコーナーもあり地元食材を使った料理も食べられる。
今回の様に少し視野を広げると近場の千歳周辺でも気軽に行けそうなスポットがまだまだある事を実感した2日間だった。
今回足を運び目で見て感じたことを今後の案内業務に生かしていきたいと思う。 (reported by YY)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?