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なんちゃって因習村 #1.ただの田舎

我が地元は因習村の成れ果てか?

因習村。
何世代も引き継がれてきた異様な文化を持つ、外界から閉ざされた村。
ホラー作品として、これを題材とした創作物が無数に生み出されてきた。

そして、私はそういった作品が大好きな人間である。
するとどうしても「地元も昔は因習村だったのではないか」という安易な厨二的発想を考えてしまう。

しかし、思い返すと私の地元には奇妙な点があったと思う。

数年前、近所に住んでたご老人が認知症を患った。
そして、そのご老人は散歩に出た後、2日ほど行方不明になった。
警察による捜索の結果、彼はすぐに発見され保護された。

奇妙なのは、発見された場所が奇妙なことに神社だったことだ。
その神社は私の住んでいる地域から約4kmくらいの距離に位置する。
自転車でも行ける距離なので、私もよくその神社の前を通っていた。
ただ、あの神社はとても自分で入ろうと思えるような雰囲気ではない。

昔、カブトムシを捕まえにあの神社を訪れたことがある。
しかし、怖くて入ることができなかった。
当時は小学生だったこともあるだろうが、今でも入りたいとは思わない。
いくら生物好きで、採集を趣味としていても。

あまりにも怖かったので今もはっきりとあの景色を覚えている。
真夏の昼だというのに、鳥居の奥は暗く、先が見えなかった。
視線を下すと、2匹もカナブンが死んでいるのが目に入り、古びた木の匂いが鼻に入った。
一緒に来ていた父親も入るのは止めにしようと言った。

日が落ちた後も何度かその神社の目の前を通ったことがある。
そのうちの何回かは、黒塗り車が停車しているのを見かけた。
だからこそ、なおさら、あの神社には入ろうとは思わない。

さて、ご老人が見つかったときの話に戻ろうと思う。
見つかった当時、さらに奇妙だったことは、その神社には「藁人形」が刺さっていたことだった。
「藁人形」。
ネットが普及し、昭和生まれの迷信や都市伝説が衰退し始めていた時代に。

私の地元は、一応、神社葬が中心である。
このことから、地元には元々何かしらの信仰があり、時代が進むことでそれが薄れてきた、「因習村の成れ果て」なのではないかと思った。









結論:違う。

結論から言ってしまえば、タイトルからも予想できる通り、私の村は因習村でもその成れ果てでも無い。

そもそも私の地元は田舎といっても別に秘境のような場所でもなく、30分程車を走らせればイオンに行けるくらいの田舎なのだ。
(電車は1時間に1本くらいしか入らない)

普通に宿場町だった記録が残っているし、何なら芭蕉も俳句を詠んでいる。
だから、別に因習村でもない。結局のところ、多くの空想がそうであるように、ただの思い上がりである。

きっとご老人が神社に入ったのも偶然で、黒塗り車もヤクザか何かで、藁人形も少し信心深い人がたまたま行ったのだろう。
怪談話の多くが、「たまたま」によるものであるように。

私は人生の中で何度かこういった「怪談モドキ」を体験してきた。
「怪談」として語るほど「怪談」ではないし、「雑談」とするには人を選びすぎる話。
何処にもお出しすることができないので、愚痴を交えながら「なんちゃって因習村」で起こった出来事としてこれから少しずつまとめていこうと思う。

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