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その目に映るもの

NHK 世界ふれあい街歩き
選「スペインが残した街 ビガン〜フィリピン〜」を見た。

フィリピンは16世紀以降スペインに植民地支配されていた。スペインからの独立の立役者となったのがアギナルドだ。しかし独立は束の間、フィリピンはアメリカの植民地となる運命をたどる。

ルソン島北西部にある街ビガンはスペイン統治時代の面影が残されている街だ。

番組の途中で歴史地区のクリソロゴ通りが紹介される。

台風による洪水が多い気候を受けて、建物は1階が頑丈なヨーロッパ式の建築、2階はより通気性を重視した中国式のものが多い。

番組の途中、クリソロゴ通りの一角で2階から街並みを眺めているおばあさんが登場する。話を聞くとそこからの眺めが大好きなそうだ。だが、カメラマンが映したその眺めはお世辞にもとても良いものとは思えなかった。

女性がこの街に田舎から嫁いできて60年。当時、きれいな街に来ることができてとても嬉しかったそうだ。故郷は戦争で失われてしまったとも述べていた。

その戦争とは太平洋戦争のことだ。女性は、日本のカメラマンを前にどのような気持ちで答えてくれたのだろうか。今が幸せでそれでいいと心の底から思えたのだろうか。

番組で交わされたやりとりは短いものであったが、女性のこれまでの人生を想起させるには十分なものだったと思う。爆撃にさらされる恐怖を感じることもなく、飢えの心配もせずに穏やかな気持ちで街の通りを眺める。それは私が画面越しに見た眺めよりもはるかに素晴らしいものなのだと気づかされた。そんなことも忘れてしまっていたのかと少し恥ずかしい気持ちになった。日常にこそ人生が、そして平和がやどる。

しかし、そんな平和な日常は一瞬にして消え去ることもある。

ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ……。

現在、ウクライナでは人々が理不尽に故郷を奪われている。これ以上新たな"カタカナの地名"が生まれることがないように。そしてウクライナの人々が一日も早く平和に生活できるようになることを心の底から願う。


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