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時の香り、蝉時雨

    • ちょっとした感傷

      夜の電車に乗っていると、高3のお正月を思い出す。 元日に祖父母宅に挨拶して、その夜一人で自宅に帰る電車。 第一志望の大学に受かったら、程近い祖父母宅に居候させてもらうことになっていた。 ああ、私は、受かったらこの電車に乗って行くのだな。結果次第で来られないかもしれないのだな。 と、暗い窓の向こうを眺めていた。 明かりが横に流れて綺麗だった。 まだ見ぬ未来の生活に思いを馳せたこと。 少しの不安を抱いたこと。 明日からの勉強、頑張ろう、と心の中で小さく自分を奮い立たせたこ

      • "帰る場所"が変わった話

        久々に実家で何日か過ごした。 「久々」と言っても、夏に一泊したから、感覚は何も変わらない。ぐうたらの極みである。 寒いからホットミルクでも飲もうと思って、カップに牛乳を注ぎ、レンジに入れて、スイッチオン。 ……したところで、はっとした。 お砂糖、どこにあるんだ? 食器棚の下? 台所の戸棚? それとも、ダイニングテーブル…… どこにもなかった。 変な目で見られるのを覚悟で父親に聞いた。 (案の定)お砂糖は、数年前と少しも変わらない場所にしまってあった。 要するに、帰

        時の香り、蝉時雨