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【詩】暗い月夜

光が届かない月夜

”怖れ” がやって来るのはこんな夜

誰も入れない 闇に包まれた私の部屋
秘密を放り込んだままの部屋

勝手に扉を開けて忍び寄る

静かに闇と向き合う 真っ黒な鏡のよう
闇も私を覗き返す

次第に姿を現す 薄笑いの私が
私をあざけり おびやかす

くずおれてしまいそうになる

それでもなお

”怖れ” と向き合う
己と向き合う 

時間が凍る

鼓動が早まり汗が滲んでも
静かに向き合い続ける

抜け出すことはできる
過去が教えてくれた 私を支えてくれる

きざしを見落とさないように


サラサラと何かが流れる音
部屋の中から

何かが去る音?
それとも来る音? 

サラサラと流れて行く
砂漠の風に乗って飛ぶ砂のよう
覆われていたものが姿を現し始める

砂が微かに人の形になっていく
秘密の部屋で眠っていた あれも私
わずかに手が見え始める

手を伸ばせ
掴めるはず

サラサラと流れて行く

のしかかっていた砂がもうほとんど無い

お互いが手を伸ばした

隠れていた月の光が雲間から差すように
掴んだ手の中から光が飛び散って辺りを照らす

ようやく起き上がった私が
ゆっくりと目を開ける
私に微笑む

ゆらゆらと霧のようになった私が
私の中に入ってきた


いつの間にか 風が雲を運び
柔らかい光に包まれていた

秘密の部屋の扉が閉まっていた
薄笑いの私もいない

そして感じた 新しい明日が来ると

新しい私が始まると








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