長期インターンシップの最大の効用とは?

「超青田買い、学生の長期インターン広がる」 

この見出しからは、長期インターンシップを批判しているのではないか、というニュアンスも伝わってきますが、惹句を使って気を引こうというよくある仕掛けで、文中には、長期インターンシップ、有給インターンシップがエンジニア市場を中心に広がりを見せている、ということが書かれています。

長期有給インターンシップが増えるのは、とてもいいことだと思います。学生にとっても企業にとっても。仮にそれが、採用を目的としたもので、学生にも下心があったとしても。

ワンデイはいうに及ばず、一二週間程度のインターンシップでは、学生は所詮お客様です。実際の職場で、普通に仕事をしている社員と普通に交わるという経験はできません。しかし、数か月という期間を通して、実際の仕事に携わる、となった瞬間に、学生はお客さんではなく、「製品・サービスを生み出す生産者の一員」になります。この立場に立って、はじめて、見えてくるものがあるのです。人はどのような面持ちで、どんなふうに働いているのか、ということを、その立場に立つことで初めて目の前で見ることができるのです。そして、長期インターンに参加した学生は、往々にしてこんなことを口にします。

「思っていたより、みんな楽しそうに仕事をしていました」

今、大学生たちは、働くということについて、総じて悲観的です。働くということに、あまり期待を持てないばかりか、「働くのが怖い」という声まで聞きます。ブラック企業、過労自殺など、さまざまな情報が、学生の心をどんどんと冷却していきます。しかし、そんな大学生も、生き生きと働いているビジネスパーソンと接して、生の話を聞いたりすると、「あれ、意外と働くのって楽しいのかも?」と、印象を大きく変えたりもします。長期インターンシップは、そのような「心理的誤解」を解くことができる大きなチャンスです。同様の効果をあげられる場は、ほかにありません。大学生の多くが、働くことに前向きになるだけで、社会的に絶大な効果があるのです。

青田買いだ、採用の早期化だなんだと、インターンシップには、いろいろと難癖がついていますが、実際の職場で、実際の仕事をするという本来のインターンシップ(必然的に長期になります)には、大学生の心象風景を大きく変える可能性が秘められているのです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33016600U8A710C1MM8000/

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