管理職は多重責務。二つの役割に分けてみませんか。

「女性の管理職『食わず嫌い』 残念な本当の理由と対策」。いい記事でした。そして、昔から主張していたことを、改めて主張したくなりました。

徐々には増えているものの、政府が掲げる2030(2020年までに女性管理職の比率を30%にする)はまず達成できなそうなのが実情。その実情の一因を、この記事の筆者であり、エグゼクティブサーチ領域では知らぬ人のいない有名人である森本千賀子さんは「女性の食わず嫌い」を上げています。「そんな大変そうな仕事をやりたいとは思わない」、目の前の管理職たちの、生き生きとしているとは決して言えない姿をみて、多くの女性たちはそう思っていると説いています。管理職に「なりたくない」と回答した女性が9割近くに達するというデータもあるそうです。

一方で、森本さんは、女性にはマネジメント適性がある、と説いています。男性管理職は、「目標達成」に重きを置くけれど、女性は、自身のメンバーの成長に重視を置く傾向か強いと指摘し、「長期的視点で組織の活性化、成長を図るためには、女性が得意なマネジメントスタイルが生きる」と主張しています。

とても共感できる内容です。森本さんの主張を踏まえつつ、私の持論を述べたいと思います。簡潔に言えば、「管理職は多重責務に陥っています。このままではうまくいかない。そこで、二つの役割に分けてみませんか」というものです。

マネジメント理論のひとつに、PM理論があります。マネジメントは、業績向上を図るPerformanceの側面と、チームのコンディションを良好に保つMaintenanceの側面があり、マネジャーは、PM(両方を達成している優秀なマネジャータイプ)、Pm(業績向上は得意だが、チームマネジメントがおろそかになるタイプ)、pM(チームの雰囲気は良好だが、業績が今一つ伸びないタイプ)、pm(いずれも不得手なマネジャー不適任タイプ)に分けられる、としています。

全員がPMマネジャーであるべきだ、という考え方のもとに、多くの企業は組織を作っています。つまり、ひとつのグループには一人の管理職が就いていて、その人間が、グループの業績に責任を持ち、一方で人材育成にも力を入れることが求められています。そして、両方を巧みに実現しているハイパーマネジャーは、どんな会社にも存在しています。ですが、その比率は決して高くありません。多くのマネジャーは、目標達成にむけての業務マネジメントがいまひとつなpMタイプが、成果は上げているけれどメンバーがメンタルになったりやめたりしているPmタイプのいずれか。そして、なんであんな人がマネジャーをやっているんだろうと陰でひそひそ言われているpmタイプも、どんな会社にもいます。

一方で。マネジャーの仕事は、昭和時代から平成に移り、今日に至るまでの間に、劇的に変わっています。その最たるものは、「プレイングマネジャー化」です。メンバーに実業務を託し、進捗を管理監督するのではなく、最も重要な業務や難易度の高い業務をマネジャー自身が担当している、という状態です。課長職の8割、部長職の6割がプレイングマネジャーであるというデータもあります。

野球に詳しい方なら、日本のプロ野球界におけるプレイングマネジャーをすぐにあげることができるでしょう。つまりは監督兼選手。有名なのは、野村克也さんですね。最近では、古田さん、谷繁さんがあげられます。いずれもチームの要であるキャッチャーという職にあり、さらに監督という役割を託された、という方です。

野村さんは結果を残しました。最下位チームの監督を託され、四番を打ち続け、チームを再生させ、リーグ優勝も遂げています。素晴らしい実績です。でも、古田さん、谷繁さんは、残念な結果になりました。

野村さんが、すごすぎたのです。古田さん、谷繁さんをもっても、プレイングマネジャーでは、結果が残せなかったのです。

企業のマネジャーに話を戻しましよう。彼らが大変なのは、プレイングマネジャーとして現場業務を抱えるばかりではありません。コンプライアンス遵守、個人情報管理、パワハラセクハラ対策、メンバーのメンタルケア、労働時間管理などなど、業績を上げるという観点とはまた別の、しかし会社としてはこれまたきわめて重要な業務の実行者は、すべてマネジャーです。彼らは、多重責務にあえいでいます。そんな中で、全員がハイパーマネジャーになれるでしょうか。私は、絶対に無理だと思うのです。

10年度前に、「上司不要論」という本を書きました。タイトルからは、「メンバーの邪魔をするようなアホな上司なんかいらない」という内容を想定しそうですが、そうではありません。上記のとおり、マネジャーは多重責務にあえいでいる。ひとりで、グループ・チームの全責任を負い、すべてのメンバーの上に君臨する「上司」というスタイルをリセットし、マネジャー業務を解体しようというものでした。

その概略は、マネジャー業務を「お父さん役」と「お母さん役」に分ける、というもの。PとMの責任の所在を分け、別の人間が受け持つというものです。Pが得意な人はP偽記念する、Mが得意な人はMに専念する。その合わせ技で、組織、チームをマネジメントしていくのです。そして、Mマネジャーに、女性をどんどん登用するのです。

森本さんが指摘しているような傾向、私もあると思います。女性には、短期志向よりも長期志向、PよりもMという傾向があると思います。そうした点を活かし、その上で管理職比率を上げていこうとするならば、この「二つの役割に分ける」案は、なかなか悪くないと、今も思ているのですが、いかがでしょうか?

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO32772720Z00C18A7000000?channel=DF180320167080

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