【ご意見募集】就活ルール廃止。その時企業は?

経団連中西会長が、3日の記者会見において言及した「就活ルールの廃止」発言が、波紋を呼んでいます。

就活ルールとは、経団連が定めている「採用選考に関する指針」に掲げられている採用選考時期に関するガイドラインを指しています。

現行ルールは、「3月採用広報スタート、6月採用選考活動スタート、10月採用内定告知スタート」というもの。中西会長の発言は、2020年春入社までの適応が定められているこのガイドラインを、それ以降は取りやめようと考えている、という趣旨のものでした。

大学側は、混乱をきたすのではないか、学業に影響が出るのではないか、と懸念を表明。安倍首相は、ガイドラインを守って欲しいというコメントをしましたが、菅官房長官は、「それは2020年までのことであり、それ以降のことは、いろんな選択肢がある」と首相のコメントの意図を補足。麻生大臣は「日本のように国全体で時期を決めている国を知らない。検討に値する考え方だ」との意向を表明しています。

このような就活ルール、過去に二回、廃止されたことがあります。

1回目は、1962年。日経連(現経団連)が、1953ねんより産官学で定めていた就職協定からの撤退を表明。当時、大学側は、推薦状の発行時期を四年生の10月と定めていました。当時は、文系理系にかかわらず、大学生の採用には大学の推薦状が必要。そして、企業は、いい学生を推薦して欲しい、と企業に出向きました。その解禁日が4年生の10月。それが採用選考活動のスタートでした。しかし、高度成長により企業の人材需要は急速に高まり、大学生の争奪戦は加熱する一方。そして、産業サイドは、産官学で定めた協定からの撤退を宣言するに至りました。

協定が廃止された後も、ガイドラインとなる日程は残りました。大学側は、解禁日を少し前倒して、産業側を牽制しました。しかし、産業側の採用活動の前倒しは、年を追うごとに加熱。大学三年生のうちに学生と接触する早苗買い、種もみ買いが横行したと、きろくには残っています。

そして、1970年代に入り、再び就職協定は復活するに至ります。再び産官学が歩み寄り、アグリーメントが生まれました。

しかし、あいも変わらず、企業側のフライングは収まりません。そして、今度は、官学サイドが、この守られない協定から離脱。80年代には、産業サイドが自主的にガイドラインを設定し、それを守るという紳士協定へと推移しました。

二度目の、そして最後の就職協定廃止は、1996年末。日経連会長の根本二郎氏が、「守らないような協定は、廃止すべし」と英断。就職協定は、40余年の歴史に幕を閉じたのです。1960年代は、企業サイドが撤退したものの、大学サイドの時期ガイドラインが残っていましたが、この時に、はじめて、なんの規制もガイドラインもがなくなったのです。就職活動は、晴れて自由化したのです。

その後には、何が起きたのか。

一部の会社の採用活動は、やはり早期化しました。廃止前は、7月訪問解禁、8月選考活動開始でしたが、やはり三年生のうちに内定を出す企業が現れました。

ですが、多くの企業は、廃止前の夏の時期に選考活動をし続けていました。四年生の春と秋、二回に分けて選考活動を行う企業も出てきました。

つまり、企業の採用活動は、分散化しました。

採用活動の中身も変わりました。エントリーシートやグループディスカッションなど、いまやどの企業もやっている採用手法は、この時期に広がり始めました。職種別採用、事業部別採用など、それまて日本企業が行なっていなかった採用方法も広がりました。企業が、それぞれに知恵を絞り、学生との質の高い出会いを求め始めました。

しかし、その時期も長くは続きません。一部の企業の早期からの採用活動を戒めるべく、日本経団連は、自らが掲げていた倫理憲章の中に、以下の一文を付け加えました。

「卒業、修了学年に達しない学生に対して、面接など実質的な選考活動を行うことは、厳に慎む」

その結果、何が起きたでしょうか。三年生のうちから採用活動をする企業は、確かに減りました。しかしです。代わって多くの企業が、四年生の春に採用活動を始めるようになりました。一文が付け加えられる前の2003年には、四年生の春までに内定をもらっていた学生は2割にすぎませんでしたが、2008年には、5割を超えました。早期化が加速したのです。

さて。前振りが長くなりましたが、このような歴史があったことを踏まえて、皆様のご意見を募集したいと思います。

仮に、2021年に、就活ルールが撤廃され、自由化したならば、企業の採用活動時期は、どのようになると思いますか、という質問です。

回答は、以下の三点よりお選びください。

1    大企業の多くの採用活動はますます早期化し、大学三年生対象に行なっているインターンシップが、実質的な選考活動となるなど、優秀な学生の争奪戦はさらに過熱化する。

2    大企業の採用活動時期は、分散化する。三年生夏、春、四年生の夏、など、いくつかの時期に分散して採用活動する企業が増える。

3    多くの企業が、三年生から四年生になる春に採用活動を集中させる。

第四の意見も、お待ちしています。

ご意見をお寄せいただくうえでは、そうなると考える根拠もお聞かせください。現実はこうなるけど、こういうのが理想、というようなビジョナリーなご意見も、お待ちしています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34946460U8A900C1000000/

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