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【AGEs】を防ぐにはビタミンB6が必須



今回のnoteで学べること
・ビタミンB6の役割
・ビタミンB6と糖尿病の関係性
・糖化を抑制する方法


ビタミンB6の働きというとアミノ酸代謝が真っ先に出てきます。
しかし、ビタミンBは糖尿病を防ぐのに非常な働きがあります。
糖尿病を防ぐということは糖化を防ぐことにもつながりますので、予防栄養学的な側面でも非常に重要になります。

①ビタミンB6の役割

ビタミンB6は、ブドウ糖、脂質、アミノ酸、DNA、神経伝達物質の代謝を調節する約150の反応の補因子です。さらに、活性酸素種(ROS)および糖化最終産物(AGE)の形成を中和する働きがあります。(※1)(※2)

ビタミンB6の分類と活性

ビタミンB6という用語は、6つの一般的な形態はピリドキシン(PN)、ピリドキサール(PL)、ピリドキサミン(PM)、およびそれらに関連する5'-リン酸誘導体(PNP、PLP、PMP)を指します。

生物学的に活性な形態であるピリドキサール5'-リン酸(PLP)は、アミンやアミノ酸の合成、変換、分解、1つの炭素単位の供給などの重要な代謝反応を触媒する、約150の異なる酵素活性の補酵素として機能します。

このピリドキサール5'リン酸(PLP)はタンパク質が代謝される時にでてきてご存知の方も多いと思います。

PLP濃度はアルコール依存(※3)、肥満(※4)、妊娠(※5)、セリアック病(※6)、経口避妊薬(※7)、ストレス(※8)などによって低下するため、これらに該当する人はPLP欠乏に注意が必要になります。

②ビタミンB6と糖尿病

糖尿病(DM)は、4億人以上が罹患している世界的な健康問題であり、インスリン分泌障害、インスリン作用、またはその両方から生じる持続性高血糖を特徴とする代謝障害のグループで構成されています。(※9)
糖尿病は、遺伝的要因と環境要因の協調作用によって引き起こされる多因子性疾患であり、その病因に基づいて、1型、2型、および妊娠糖尿病の3つの主要なタイプに分類できます。

糖尿病とVB6

DM患者は平均PLP濃度が健康的な人に比べて有意に低いことが報告されています。(※10)つまり、DM患者はVB6の摂取量が低いか利用率が低いことが考えられます。

妊娠糖尿患者に対しても血中PLPレベルが関連してそうです。
妊娠糖尿病の影響を受けた女性のグループで行われた研究で、14人中13人がPLPレベルの低下を示したことが報告されています。(※11)
この研究ではVB6100mgを14日間経口投与し、耐糖能が大幅に改善してるため、糖尿病治療のVB6の摂取量の基準になりそうです。

(※12)の研究でも、妊娠糖尿患者がVB6を補給したことによって、血漿インスリン感受性を改善する可能性があることが示されています。

他の介入研究では、ピリドキシンの補給がストレプトゾトシン治療ラットの血糖値を下げることができ(※13)、2型糖尿病の糖化ヘモグロビン値を下げることができることが報告されています。(※14)

VB6が小腸のα-グルコシダーゼの活性を阻害することにより、炭水化物摂取後の食後血糖値を下げることができることも示されています。(※15)
つまり、VB6を多めに摂取することによってGI値が下げれるかもしれませんね。

糖尿病はVB6レベル低下させる

糖尿病がPLPレベルを低下させる可能性があることは、健康な被験者によるブドウ糖の摂取がPLPレベルの低下を引き起こしたことからも十分考えられます。(※16)

また、炭水化物が少なくタンパク質が豊富な食事が原因で、糖尿病がタンパク質代謝率の増加の結果としてビタミンB6欠乏症につながる可能性があることも考えられています。(※17)
PLPはタンパク質代謝に関与する多くの酵素の補因子であるため、PLPの需要が増えると、他の組織のPLPが減少します。この仮説は、PLPの量が、非糖尿病対照と比較して、糖尿病ラットの肝臓で増加したが、血漿、腎臓、および筋肉では減少したという発見に基づいています。

つまり、炭水化物の摂取だけではなく、VB6を補給しないで高タンパク食を摂取し続けるとPLPレベルが低下し、糖尿病につながる可能性もあるかもしれません。

なので高炭水化物・高タンパク質食を取り入れているアスリートなどは確実にVB6の追加摂取が必要でしょう。

ビタミンB6低下が糖尿病を引き起こす

ピリドキシン欠乏がラットのインスリン分泌を損なう可能性があることが保報告されています。(※18)
さらに、研究者らは、膵臓灌流のin vitro実験を行うことにより、ピリドキシン欠乏症でインスリンとグルカゴンの分泌が損なわれることも発見しました。実はこのグルカゴンについて近年様々なことがわかっており、それはまた今度noteで解説していこうと思います。

さらに、妊娠中にピリドキシンの胎児への移動によりPLPレベルが低下する傾向があることと、ピリドキシン治療がGDM女性の耐糖能を改善するという発見に基づいて、ビタミンB6レベルが低いとGDMが引き起こされると考えられています。(※12)

また、VB6欠乏がVB6代謝に関与する遺伝子の突然変異を引き起こし、糖尿病の原因になることも示されています。(※19)(※20)

③VB6と糖尿病の関係性メカニズム

VB6とトリプトファン代謝

PLPが糖尿病に影響を与える1つの要因は、セロトニン、N-アセチルセロトニン、メラトニンなどのメントキシインドールの生合成の基質である必須アミノ酸であるトリプトファン(TRP)の代謝に関するためです。

TRPの約95%がキヌレニン(KYN)経路を介して代謝され、NADを生成します。(※21)

Mascolo E, Vernì F. Vitamin B6 and Diabetes: Relationship and Molecular Mechanisms. Int J Mol Sci. 2020 May 23;21(10):3669. doi: 10.3390/ijms21103669. PMID: 32456137; PMCID: PMC7279184.

TRP-またはインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(TDOまたはIDO)はTRPをKYNに変換し、これらの酵素の活性は、ストレスホルモンまたは炎症性因子(IFNGやLPSなど)によって増加します。(※22)
つまり、ストレスや炎症が起こっているとキヌレニン経路が活性化するということです。

キヌレニン経路が活性化すると、KYNは、KYN-モノオキシゲナーゼ(KMO)の作用により、3-ヒドロキシキヌレニン(3-HKYN)に変換されます。KYNと3-HKYNは、PLP依存性酵素であるアミノトランスフェラーゼ(KAT)の活性により、それぞれキヌレン酸(KYNA)とキサンツレン酸(XA)に変換されます。
3-HKYNの3-ヒドロキシアントラニル酸(3-HAA)への変換は、キヌレニナーゼ(KYNU)によって触媒されます。
キヌレニナーゼは、その活性をPLPに依存しているため、PLPが不足すると3-HKYN代謝を3-HHA形成からKYNAおよびXAの蓄積に繋がります。

実際に糖尿病患者はトリプトファン代謝に異変が生じ、XAが蓄積することが分かっています。(※23)

まとめると、VB6が不足するとトリプトファン代謝がうまくいかなくなることで、キヌレニン酸(KYNA)キサンツレン酸(XA)が蓄積して糖尿病を誘発するのではないのかということです。


まとめ

  • 血漿VB6レベルはアルコール依存、肥満、妊娠、セリアック病、経口避妊薬、ストレスなどによって低下する

  • 糖尿病患者はPLP濃度が健常者比べて低い傾向にある

  • VB6の補給はインスリン感受性を改善する

  • 高タンパク、高炭水化物食はPLPを消費する

  • VB6が不足するとキヌレニン酸やキサンツレン酸が蓄積し糖尿病を引き起こすことが考えられる

今回は少々マニアックな内容でしたが、一般的な糖尿病に対するアプローチをしても改善しない時の参考にしていただければ幸いです。


参考文献

(※1)Bilski P, Li MY, Ehrenshaft M, Daub ME, Chignell CF. Vitamin B6 (pyridoxine) and its derivatives are efficient singlet oxygen quenchers and potential fungal antioxidants. Photochem Photobiol. 2000 Feb;71(2):129-34. doi: 10.1562/0031-8655(2000)071<0129:sipvbp>2.0.co;2. PMID: 10687384.
(※2)Booth AA, Khalifah RG, Todd P, Hudson BG. In vitro kinetic studies of formation of antigenic advanced glycation end products (AGEs). Novel inhibition of post-Amadori glycation pathways. J Biol Chem. 1997 Feb 28;272(9):5430-7. doi: 10.1074/jbc.272.9.5430. PMID: 9038143.
(※3)Cravo ML, Camilo ME. Hyperhomocysteinemia in chronic alcoholism: relations to folic acid and vitamins B(6) and B(12) status. Nutrition. 2000 Apr;16(4):296-302. doi: 10.1016/s0899-9007(99)00297-x. PMID: 10758367.
(※4)Ferro Y, Carè I, Mazza E, Provenzano F, Colica C, Torti C, Romeo S, Pujia A, Montalcini T. Protein and vitamin B6 intake are associated with liver steatosis assessed by transient elastography, especially in obese individuals. Clin Mol Hepatol. 2017 Sep;23(3):249-259. doi: 10.3350/cmh.2017.0019. Epub 2017 Jul 28. PMID: 28750503; PMCID: PMC5628006.
(※5)Merrill AH Jr, Henderson JM. Diseases associated with defects in vitamin B6 metabolism or utilization. Annu Rev Nutr. 1987;7:137-56. doi: 10.1146/annurev.nu.07.070187.001033. PMID: 3300730.
(※6)KOWLESSAR OD, HAEFFNER LJ, BENSON GD. ABNORMAL TRYPTOPHAN METABOLISM IN PATIENTS WITH ADULT CELIAC DISEASE, WITH EVIDENCE FOR DEFICIENCY OF VITAMIN B6. J Clin Invest. 1964 May;43(5):894-903. doi: 10.1172/JCI104975. PMID: 14169518; PMCID: PMC289568.
(※7)BIEHL JP, VILTER RW. Effect of isoniazid on vitamin B6 metabolism; its possible significance in producing isoniazid neuritis. Proc Soc Exp Biol Med. 1954 Mar;85(3):389-92. doi: 10.3181/00379727-85-20891. PMID: 13167078.
(※8)Midttun O, Ulvik A, Ringdal Pedersen E, Ebbing M, Bleie O, Schartum-Hansen H, Nilsen RM, Nygård O, Ueland PM. Low plasma vitamin B-6 status affects metabolism through the kynurenine pathway in cardiovascular patients with systemic inflammation. J Nutr. 2011 Apr 1;141(4):611-7. doi: 10.3945/jn.110.133082. Epub 2011 Feb 10. PMID: 21310866.
(※9)American Diabetes Association. Diagnosis and classification of diabetes mellitus. Diabetes Care. 2013 Jan;36 Suppl 1(Suppl 1):S67-74. doi: 10.2337/dc13-S067. PMID: 23264425; PMCID: PMC3537273.
(※10)Satyanarayana A, Balakrishna N, Pitla S, Reddy PY, Mudili S, Lopamudra P, Suryanarayana P, Viswanath K, Ayyagari R, Reddy GB. Status of B-vitamins and homocysteine in diabetic retinopathy: association with vitamin-B12 deficiency and hyperhomocysteinemia. PLoS One. 2011;6(11):e26747. doi: 10.1371/journal.pone.0026747. Epub 2011 Nov 1. PMID: 22069468; PMCID: PMC3206053.
(※11)Bennink HJ, Schreurs WH. Improvement of oral glucose tolerance in gestational diabetes by pyridoxine. Br Med J. 1975 Jul 5;3(5974):13-5. doi: 10.1136/bmj.3.5974.13. PMID: 1131652; PMCID: PMC1673682.
(※12)Spellacy WN, Buhi WC, Birk SA. Vitamin B6 treatment of gestational diabetes mellitus: studies of blood glucose and plasma insulin. Am J Obstet Gynecol. 1977 Mar 15;127(6):599-602. doi: 10.1016/0002-9378(77)90356-8. PMID: 842585.
(※13)Nair AR, Biju MP, Paulose CS. Effect of pyridoxine and insulin administration on brain glutamate dehydrogenase activity and blood glucose control in streptozotocin-induced diabetic rats. Biochim Biophys Acta. 1998 Aug 24;1381(3):351-4. doi: 10.1016/s0304-4165(98)00054-3. PMID: 9729446.
(※14)Solomon LR, Cohen K. Erythrocyte O2 transport and metabolism and effects of vitamin B6 therapy in type II diabetes mellitus. Diabetes. 1989 Jul;38(7):881-6. doi: 10.2337/diab.38.7.881. PMID: 2737364.
(※15)Kim HH, Kang YR, Lee JY, Chang HB, Lee KW, Apostolidis E, Kwon YI. The Postprandial Anti-Hyperglycemic Effect of Pyridoxine and Its Derivatives Using In Vitro and In Vivo Animal Models. Nutrients. 2018 Feb 28;10(3):285. doi: 10.3390/nu10030285. PMID: 29495635; PMCID: PMC5872703.
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(※18)Toyota T, Kai Y, Kakizaki M, Ohtsuka H, Shibata Y, Goto Y. The endocrine pancreas in pyridoxine deficient rats. Tohoku J Exp Med. 1981 Jul;134(3):331-6. doi: 10.1620/tjem.134.331. PMID: 7031987.
(※19)Marzio A, Merigliano C, Gatti M, Vernì F. Sugar and chromosome stability: clastogenic effects of sugars in vitamin B6-deficient cells. PLoS Genet. 2014 Mar 20;10(3):e1004199. doi: 10.1371/journal.pgen.1004199. PMID: 24651653; PMCID: PMC3961173.
(※20)Mascolo E, Amoroso N, Saggio I, Merigliano C, Vernì F. Pyridoxine/pyridoxamine 5'-phosphate oxidase (Sgll/PNPO) is important for DNA integrity and glucose homeostasis maintenance in Drosophila. J Cell Physiol. 2020 Jan;235(1):504-512. doi: 10.1002/jcp.28990. Epub 2019 Jul 10. PMID: 31506944.
(※21)Schwarcz R, Bruno JP, Muchowski PJ, Wu HQ. Kynurenines in the mammalian brain: when physiology meets pathology. Nat Rev Neurosci. 2012 Jul;13(7):465-77. doi: 10.1038/nrn3257. PMID: 22678511; PMCID: PMC3681811.
(※22)Oxenkrug GF. Genetic and hormonal regulation of tryptophan kynurenine metabolism: implications for vascular cognitive impairment, major depressive disorder, and aging. Ann N Y Acad Sci. 2007 Dec;1122:35-49. doi: 10.1196/annals.1403.003. PMID: 18077563.
(※23)Connick JH, Stone TW. The role of kynurenines in diabetes mellitus. Med Hypotheses. 1985 Dec;18(4):371-6. doi: 10.1016/0306-9877(85)90104-5. PMID: 3912651.







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