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生地の厚さ

縫製工場では生地の厚さに気を使います。布の厚さなんて大したことないと思うかもしれませんが、場合によっては非常に重要になってきます。

厚みのあるコート、例えばキルティングのコートを作るとします。そうした場合、制作にあたって同じ色柄の生地を3種類は用意します。同じ色柄の普通の厚み、それよりも半分の厚み、もっと薄い生地の3つです。

服は、その部分によって、重なる生地の枚数が違います。もしも、1種類の厚さの生地でキルティングのコートを作ったとすると、ポケットのような何枚も重なる部分はゴワゴワに、逆に本体部分は重なりが少ないので薄くなってしまいます。そこで、前もって厚みが異なる生地を数種類用意して、たくさん重なる部分には薄めの生地を、そうでない部分には厚い生地を使うことで、完成した時の厚みが全て統一され、スッキリとまとまるのです。前面ポケットの縁や、重ねた所、背中、フードなどどの部分もみんな同じ厚さになります。こうした工夫の結果、嵩張らずに違和感なく楽に着られますし、見た目も体に添ってすっきり洗練されたコートが出来上がるのです。

生地を買うときには3種類の生地を少しずつ注文するという訳にはいきませんので、1着あたりたくさんの生地が使われることになります。その分値段は高くなってしまいますが、真っ当な服を作るためには必要なことなのです。

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