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ボタンにスポットライトを

洋服についているボタン。この部品は私達にとても身近なものです。洋服を洋服として成立させている、この小さいバイプレイヤーに今日はスポットライトを当ててみたいと思います。

ボタンの歴史は紀元前まで遡ります。布と布を留めたり外したりできて、より着やすく動きやすい衣服にするため、動物の骨で留め具を作ったのが始まりと言われています。ボタンは単なる留め具の機能だけでなく、豪華な作りのものは―古代エジプトから近世ヨーロッパまで―歴史上の権力者の権威を表す装飾品とされたりしました。このような歴史の中でボタンを作る技術は向上していったのですが、庶民にまで一般的になったのは産業革命後の話で、機械でボタンの大量生産ができるようになってからのことです。

日本は長くボタンの必要がない着物の文化でしたから、使うようになったのは洋服が伝来してからです。広く使われるようになるのは明治維新後、陸軍と海軍の制服にボタンが取り入れられてからになります。ボタンの国内生産もこの頃から始まります。このように、ボタンの世界では日本は後発組と言えるのですが、現在は世界第三位の生産量を誇りボタン大国になっています。

現在のボタンの大半はプラスチックでできていますが、高級品はなんと言っても昔ながらの貝ボタンになります。南の島で採れる厚手の貝殻をくり抜いて、たくさんの手間をかけて作られる貝ボタンの輝きはブラウスやシャツに気品を与えます。木でできたボタンは素朴な温かみがありますし、布をかぶせたくるみボタンはもうそれだけでかわいい感じがします。変わった素材では牛乳のタンパク質を凝固させて作るカゼインボタンというのもメジャーではありませんが使われています。いずれにせよ、ボタンは洋服のイメージに大きく影響を与えているのです。

ボタンは形も様々ですが、普通に見かけるボタンは大別して3種類くらいです。まずは平ボタン。これは2穴と4穴のものがほとんどです。次にシャンクボタン。これは裏にループ状の金具がついているボタンのことで、先程出てきたくるみボタンもこれの仲間です。トグルボタンは水牛の角とか木でできた円柱状のボタンで2つ大きな穴が空いています。ダッフルコートの前を閉じるアレのことです。

ボタンの付け方も形状に合わせて色々ありますが、ボタン付け専用ミシンで付けるのか手縫いで付けるのかでまず大別されます。平ボタンは昔から機械化がなされていましたので多くが機械付けです。最新の専用ミシンでは一見難しそうなシャンクボタンも付けられるようになっています。

一方で、コート用の厚手のものやシャンクボタンなどは手縫いで一つずつ付けることが多いです。手縫いで付けることによってボタンの形状に合わせた微調整ができ、仕上がりに無理がありません。これだけ機械が発達した世の中で不思議なようですが、やっぱり手縫いの仕上がりがデザインを引き立たせることも多いのです。


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