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私の姉

私の姉は一言でいうと、とてもわがままな女だ。
ついでに見栄を張った嘘を平気で付く。

小学生の頃、思い込みショッピング事件が度々起きた。
貧乏だった我が家では、新品の洋服を買ってもらったことがなかった。フリーマーケットで洋服買ったり、近所のお姉さんからお下がりをもらうたび、
交換ノートに
「新しい洋服買ってもらったよ〜今回はミキハウスのブラウスとエンジェルブルーのTシャツ!かわいいよ!明日学校に来ていくね!!」
と綴っていた。
そして、少し色の褪せた姉にとっては“新しい服”を堂々と着て登校していた。

中学生の頃は、父のケータイ乗っ取り事件が起きた。
我が家では「ケータイは高校生になってからではないと持たせない」という教育方針のため、友達とメールのやりとりができないことに姉はブウ垂れていた。
ある時、止まらない姉の文句に耐えかねた父が、ついに自分のケータイの使用許可を下した。その途端、姉はメールメールアドレスを勝手に“minnie-hime”みたいなドキュンに変え、クラスメイトとメールのやりとりをし始めた。
もちろん友達には、
「ケータイ買ってもらったよぉ!!これからはメールでもよろしくね〜!アドレス登録お願いします(o^^o)」
とメールしていた。
当時、40代だった父を考えるといたたまれない。

高校生の頃、子ども部屋占領事件が起きた。
ある日、個人部屋のない我が家で子ども部屋と称され兄弟5人で共有していた6畳の部屋に、姉が突然ピンクドッド柄のラグを敷き詰め、ショッキングピンクのカーテンで仕切り、姉の許可を得ないと立ち入ることが禁じられた。
それからというもの、姉は1人で悠々自適な睡眠、隣の8畳の居間で残りの親子6人で雑魚寝という日々が訪れた。
姉が友達の家に泊まりに行った日だけは、その部屋を勝手に使うことが許された。そんな日は年功序列で私がその部屋を使うことになった。しかし、2度目の1人部屋体験の日、なぜか大ムカデに刺された。それがトラウマとなって、私はいよいよ姉の部屋への立ち入りをこちらから拒否するようになった。

今振り返ってもなぜ、姉にだけあんな家族の社会性を乱す行為が許されたのだろうかと不思議に思う。

そんな姉は、今では少ないお給料でも中目黒に住み、無理してお高くとまっている女になった。
もちろん貯金はない。
男性との食事では絶対に財布を出さない。
その代わり、後輩や私を連れて食事に行く時は、どんなに値を張っても平然とした顔でごちそうしてくれる。
結婚したらお相手のことはパートナーと呼ぶと言ってくる。
あやしい痩せる薬を飲んでいる。
ジムに登録したきり、一切通えていないのに虚無に月謝を払い続けている。
靴と鞄にはお金をかけるけど、洋服はいつもSHINE。
物持ちがやたらいい。
定期的に神社にお祓いに行っている。
私との約束を平気でドタキャンしてくる。
映画も観ないし、本も読まないけど、ドラマを観てよく泣いている。
私が終電を逃して急遽姉の家に泊まりに行く日は快く受け入れてくれて、酔いを冷ますためのサラダをサッと作ってくれる。
どんなことがあっても受け入れてくれる中学時代からの友人がいる。
姉にとって大切な友人の結婚前に沖縄旅行をプレゼントしていた。


そんなどうしようもない、でも、なぜか憎めない姉が、私は好きなのだ。
そして、姉は我が家の家族全員からちゃんと愛されている。

もし、自分の友達に姉がいたら、絶対に関わりたくないタイプであるのに。
姉の友達は、私が仲良くしたいと思えない苦手なタイプばかりなのに。

そんな姉に彼氏ができた。
高学歴の起業家、バツイチ子持ちの男。
いかにも姉らしい。

3週間前まで、姉がよく行くらしい中目黒のバーのバーテンダーと関係を持ってしまったとかなんとか言ってこの不毛な恋愛から抜けたいと泣きながら私に電話してきたのに。
そのメンヘラの電話に比べたら、惚気のLINEはいくらか気が楽だけれど。
急に調子のいい姉。
わざとか、無意識か、マウントを取っていい気になっている姿に正直腹が立つ。

そして、こんな自由奔放に生きている姉には大好きと思える彼がいるのに、こんなに結婚を熱望しているのに未だ彼氏ができない私にも腹が立つ。

きっと私は、自分勝手に自由に生きる姉が羨ましいのだろうな。
私には到底できないから憧れるのだろうな。

我慢しないで、思いっきり好きなことだけして生きる力強さが人間を魅力的にするのかな。

真面目に生きてきたつもりだけど、いよいよ生き方が分からなくなってきたなあ。

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