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「愛と法」上映会@江原河畔劇場

ドキュメンタリー映画「愛と法」上映後、青年団・俳優の和田華子さんをお招きし、トークイベントが開催された。

和田華子(わだ・はなこ)さん
俳優。青年団俳優部所属。 1988年生まれ、青森県十和田市出身。 京都造形芸術大学舞台芸術学科にて演技の基礎を学ぶ。 2019年より『俳優・劇作家・演出家・制作者に向けたLGBTQ勉強会』を企画・開催。
<あらすじ>
カズとフミは大阪の下町で法律事務所を営む弁護士夫夫(ふうふ)。仕事も生活も二人三脚のふたりのもとには、全国から"困っている人たち"が相談にやってくる。セクシュアル・マイノリティ、養護が必要な子どもたち、戸籍を持てずにいる人、「君が代不起立」で処分された先生、作品が罪に問われたアーティスト…。それぞれの生き方と社会のしくみとの間で葛藤を抱える人たちだ。ふたり自身も法律上は他人同士のまま。そんなある日、ふたりの家に居候がやってくる。突然居場所を失った少年・カズマくん。三人の新しい生活がはじまった…
レポート作成:石原七海
2002生まれ、東京出身。芸術文化観光専門職大学在学中。豊岡映画センターのメンバーとして活動。

1)(いま大人である)私たちの世代では学ぶ機会がなかった

和田さんは、自身が性的マイノリティーであることをオープンにして過ごされている方で、これまで様々な活動を行ってきた。二年前からはじめた『俳優・劇作家・演出家・制作者に向けたLGBTQ勉強会』では、まずLGBTQに関する基礎知識について説明し、その後日本の現状について話しているという。詳しくは、下記リンクから。

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和田さん:
今の子どもたちは、教育現場で性的マイノリティーについて学ぶ機会が増えてきたけれど、(いま大人である)私たちの世代は学ぶ機会がなかった。なので、勉強会では、まず基本知識から説明します。この勉強会は“演劇や映像を作る表現者”に向けた会です。

演劇や映像などの作品は、世界や人々に与える影響がとても大きいと思うんです。だから、表現する側の人たちが、どういうことに気をつけたらいいのか、もっときちんと考えてから創作して欲しいんです。性的マイノリティーに対する正しい知識がないまま作られた作品が、偏った先入観や誤った知識を社会に植えつけてしまうことも少なくないから。

あとは、作品には性的マイノリティが登場するけれど、稽古場には全く反映されていないということも多くある。当事者が現場にいる想定がされていない、いるはずがないとされている現場が多く、それではとても働きづらく、それ原因で俳優をやめてしまう人も多くいる。そうした現状を変えていきたいと思ってます。

2)会場でのQ&A、私が感じたこと

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今回も会場からはたくさんの質問があって、それらに答える和田さんの言葉が印象的だった。

「英語は三人称でつまずいてしまった。本当はHeと言われたいのに、Sheと名指しされてしまう。actorと書けばactressに直される。」
「知り合って間もない人と話していて『彼氏いるの?』と聞かれると、私はシスジェンダーの異性愛者だなんて一言も言っていないのになんでだろうと思うこともある。」
「海外に言ったほうが生活しやすいのではという人もいるけれど、今ここ(日本)が快適じゃないから、快適にする手伝いをしてほしい。」

一つひとつの言葉が私にはとても響いて、今まで自分が知っていた知識がどれだけ断片的で表面的なものだったのかを思い知った。私は彼らのことについて、知った気になっているだけなのではないか。ドラマや映画を見ても、それこそ恋愛の問題だけにしか目が向いていないのではないか。

映画「愛と法」の冒頭で、様々な人にインタビューをするも断られるという描写があった。「カミングアウトしてないんで」と言って去っていく人々。そういった日本社会の現状を、私は本当に理解できていたのだろうか。

映画を振り返って、和田さんはこう話す。

「法律が今の人間と合わなくなってきている。時代が変わるにつれて人の有り様は変わっていくのに、法律は変わらない。性的マイノリティーの問題だけでなく、ずれてきているところがたくさんある。」

『愛と法』という作品では、LGBTQの問題だけでなく、無戸籍の問題など、社会の中で見えづらい問題が扱われていた。

自分の立ち位置から見えずらい問題と向き合うことは中々難しい。映画やアートがこれらの問題と向き合う機会を与えてくれているように感じる。

(レポート作成:石原七海 /  サポート:歌川達人  / 写真:堀内遥友・友金彩佳)

豊岡映画センター定期上映会 vol.02・とよおか月イチ映画祭
ドキュメンタリー映画「愛と法」上映会
■上映日|2021年7月24日(土)
■上映開始時間|14:00~、17:30~〔各回30分前開場〕
■14:00の回上映後:俳優・和田華子さん(青年団)によるトークイベント開催
■17:30の回上映後:戸田ひかる監督、俳優・和田華子さん(青年団)によるトークイベント開催
■会場|江原河畔劇場
■料金:大人1500円 / 大学生以下無料
■主催:豊岡劇場(豊岡映画センター)

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