見出し画像

【エッセイ】甘えと優しさが世代を超えて連鎖する話

2歳の娘が、産まれて初めて4日間続けて熱を出した。
娘は1歳を過ぎて保育園に入ったが、身体が丈夫でほとんど休んだことが無かった。
一度だけ流行りの胃腸炎をもらい保育園をお休みした日には、担任の先生に「ついに○○ちゃん(娘の名前)まで‥!なんてこと‥!」と驚かれるくらいだった。
「すみません、子どもの風邪で‥」という決まり文句で仕事を早退する日々を恐れていた親の予想を盛大に裏切ってくれ、本当に親孝行な娘だと思った。

そんな娘の体調不良。
娘自身にとっても、熱でぼーっとする感覚や、頭が痛いという感覚は産まれて初めてだったからかもしれない。
4日間、ひたすらに機嫌が悪かった。

「ご飯食べよう?」 「いや!」
「お茶飲む?」 「いや!ぎゅうにゅう!」
「牛乳はおやつのときだけ!」 「いや!」
「ご飯が終わったらトイレいこう?」 「いや!いかない!」

いままで好きだった食事は、フルーツしか食べなくなった。
頑張っていたトイトレはストップしてしまい、ゴールまであと1枚だったトイレの列車のシール帳は5日前からずっと足踏みをしていた。

そんな娘に付き合い続けて4日目の朝、私はいよいよ気力が限界に差し掛かり、スマホでLINEの画面を開いた。

「もうむり。○○(娘の名前)がワガママすぎる。」 「大変やねえ」
「食べムラやばい。」 「珍しいねえ。」
「このままやと虐待するかも。」 「それはやめてあげてね。」
「しんどい。」 「いつでも連れておいでね。」

宛先は、実家の母である。
何ターンかやりとりして、はたと気づいた。
私も娘と同じことをしているな、と。

もうむり、なんて言いながら、実際はまあなんとかなっている。
虐待しそう、なんて言いながら、実際はそんなことできるわけがない。
分かってながらも矢継ぎ早にそんなことを言ってしまうのは、ただ母から優しい言葉で気にかけて欲しいだけなのだ。

「今日はなんとかお熱が下がって保育園に行けそうだから、実家には行かなくて大丈夫。」
と最後のLINEを打って、思った。

夕方、娘が帰ってきたら、彼女のワガママにとにかく頷いてあげよう。
いや!と言われたら、嫌なんだねえ、と言って少しは笑ってあげよう。

世代を超えて甘えが連鎖したあとに、また世代を超えて、今度は優しい気持ちを返してあげよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?