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【特別企画】EPIC 45th Anniversary PLAYLIST企画に便乗してみました

はじめに

 皆様、大変ご無沙汰しております。TECHNOLOGY POPS π3.14というブログを書いている者です。普段はFC2でアルバムレビューを10年以上も書き続けていまして、こちらnote(別邸)ではアルバムレビューだけではない特集記事を思い出したように記録している場として活用しています。
 さて、なぜ改めて自己紹介のような書き出しをしているかといいますと、このnoteで記事を書くのがほぼ2年ぶりになるわけですね。前回は80年代ベスト企画でしたでしょうか、あれ以来というわけですが、今回は久しぶりにモチベーションを掻き立てる企画が耳に入ってまいりました。そうEPIC45周年企画です。今年がEPIC SONYレーベル創設45周年ということで、特設サイトがオープン、さまざまな記念企画やイベントが予定されているそうで、やはりEPIC SONY全盛期を過ごしてきた世代としては避けては通れません。


 そして、その特設サイト内では非常に興味をそそられる企画が始まっていました。その名も「EPIC 45th Anniversary PLAYLIST」!"これまでEPICに在籍してきたアーティストをはじめ、その歴史を見てきたさまざまな方々が選曲したプレイリストを公開!"ということで、さまざまなアーティストの方達がEPICからのリリース楽曲を選曲してベストトラックを公開しています。

 そこでこの企画にただただ単純に便乗してしまおうというのが、今回の企画の趣旨でございます。そして、今回はEPICといえば黙っておれない方をゲストとして召喚いたしました。このnoteでの記事をよく読んでいただいている方にとってはおなじみ?かもしれませんが、これまでも小川美潮、松岡英明、くじら、大江千里、土屋昌巳といった数々のEPIC所属アーティストの作品を私と共にクロスレビューしていただきました相棒、@junnoviさんです。まさに青春時代をEPICと共に過ごしてきた私、@tpopsreryoと@junnoviさんの2人がそれぞれ自分なりのプレイリストを各曲コメントと共に公開してしまうという、これぞ本当の自己満足企画・・・というわけで、早速ではございますが始めたいと思います。

 なお、上記プレイリスト企画にのっとって、ご挨拶・プレイリスト・プロフィールという体裁を真似てしまいました。ただし、それだけで満足できない私達でございますので、それに各曲のコメント(解説?)も追記した拡大版でございます。なお、選曲被りは1曲もありません(!)
 ゆえに、今回は記事が非常に長くなると思います(^^;;
 というわけで、記事の目次で飛んでいただきながらお目当ての曲を探していただければと思いますので、何卒ご容赦ください。
 発表順はゲストの@junnoviさん→私@tpopsreryoの順となります。それではどうぞお楽しみくださいませ。


@junnovi:
EPIC 45th Anniversary PLAYLIST

 EPIC45周年、本当におめでとうございます!
 若かりし日、音楽的に最も大きな影響を受け、日々を彩り、その後視聴する音楽にも多大な恩恵を受けた者として、この日を迎えられたことを心からお祝い申し上げます。
 45周年に向けて、私が心から愛してやまない30曲を選びました。時代やアーティストに偏りがありますけれど、それはまさに私自身の骨であり肉であり血ですので、もう変えようのないところです。「乾いた雑巾をまだ絞るのか?!」というような思いで選んだ30曲を、「殿、おやめください!この者は既に亡くなっております。」と言われても「ええい!ええい!こやつめっ!」と狂気の沙汰でなお鞭を打つ手を止められずにしばき倒して残った30曲を、ぜひご紹介したいと思います。曲順も実際に曲を聴いて並べてみました。5曲で1セット。なので5の倍数に位置する曲はすべてそれぞれに締めくくり感のある曲になっています。
 これからも沢山の感動と思い出を沢山の人に届けてくださいね。だいすき!♪赤~いワインより。

第1部
01「ドイツク(remix)」詩人の血
02「冬のバラ」土屋昌巳
03「Dog Days」岡村靖幸
04「泣いた日 笑った日」安藤秀樹
05「恋」小川美潮
第2部
06「Digitalian~SHOUT」小室哲哉
07「Don’t Look Back」松岡英明
08「Individualists(Live)」佐野元春
09「カラス」くじら
10「Bedtime Stories~Bedtime Stories(Instrumental)」大江千里
第3部
11「風の街に生まれ」The Street Sliders
12「19」岡村靖幸
13「ナイトトリッパー、イェー!!」Bo Gumbos
14「Together」小比類巻かほる
15「ピクルス」遊佐未森
第4部
16「やるじゃん女の子」渡辺美里
17「Stay In Heaven」土屋昌巳
18「あたらしいシンパシー」松岡英明
19「Rain」大江千里
20「野の花」遊佐未森
第5部
21「聖書-BIBLE-」岡村靖幸
22「見返り不美人」Bo Gumbos
23「ありったけのコイン」The Street Sliders
24「見果てぬ夢」エレファントカシマシ
25「賛美歌」くじら
第6部
26「ふたつのドア」小川美潮
27「あの空に帰ろう」鈴木祥子
28「青い空の音符」鈴木祥子
29「かもめ」鈴木祥子
30「フレンド」大江千里

@junnoviによるプレイリスト各曲コメント

<第1部>

01 「ドイツク(remix)」 詩人の血 (1990)

 30曲の1つ目のグループである第1部。
 そのトップを飾る曲は詩人の血の「ドイツク(remix)」です。初めて聴いた時の衝撃が忘れられません。この頃からCD化による明確な「音痩せ」がなくなってむしろ重厚さが出たよね。

02 「冬のバラ」 土屋昌巳 (1988)

 「冬のバラ」は他にも印象的な曲はあるんだけど、余りに聴きすぎてきた曲でどうしても削れなかった。コロコロ転がるような音、趣向が独特なオケヒット、著しく乾燥した打楽器の音、音のあいだを縫うようにニュルニュルとしたベースライン、そしてあやしげな杉林恭雄の詩。好きなんですよねぇ。アルバム全体では『Horizon』よりも『Life in mirrors』の方が良く聴くんですが、単独の曲となると様相が変わるのが土屋昌巳です。

03 「Dog Days」 岡村靖幸 (1987)

 「Dog Days」は明確に靖幸を意識するようになった曲。夏まっさかり、視界すべてがブルー。まだまだ不器用で自分の律し方も分からないけどカラ元気で乗り切ろうとする汗臭い青春。PHY・SのCHAKAの合いの手もすごく新鮮でしたね。
 CHAKAに取りつく島なく却下されるだなんて!ということで8センチシングルの音源(だけ)が良い。『早熟』にも入っていたけど、あれはちょっと違う。松岡英明と同じく西平彰アレンジが好きなんやろうなぁ。どうして『早熟』は作ったんだろう。当時『PatiPati』やら『GB』やら『FMfan』やら片っ端から本人のインタビュー記事を読んだ記憶があるんだけど、分かったような分からないような。そういう意味でEpicが出すベスト盤って、大江千里『Sloppy Joe』『Sloppy Joe Ⅱ』とかくじら『Straight to Heaven』とかもそうで、単に寄せ集めるだけでなく何かを施して付加価値をつけて提供することをやっているんだけれど、『Sloppy Joe』以外はむしろ私には合わなかった。余計な感じがしてならなかった。あと、くじら『MIX』は例外的によかったかも。

04 「泣いた日 笑った日」 安藤秀樹 (1987)

 安藤秀樹も大切な曲が数曲ある中で1曲まで断腸の思いで絞って残った曲。サビの展開は真正面からのごまかしゼロ。その愚直なまでの正攻法が大好きです。当時から時々は聴いてきたアーティストの一人ではあるんだけれど、彼につけられた「ROCK界の吟遊詩人」という評価は今以ってしても全然分からない私・・・。でもまぁ作詞提供の数の多さとヒット曲の数からしてやっぱりすごいんだろうなぁとは思うものの、分からないw。作詞よりも時々見せる、聴いている側が恥ずかしくなるくらいに直球なメロディを作る才能の方が私には稀有で魅力的に思える。その部分がいかんなく発揮されたのがこの「泣いた日 笑った日」だと思う。このメロディがあってこそ、「突然の悲しみや喜びにはいつまでたってもなれることはない 君を知るには結末などない 泣いた日笑った日 君にKiss」が際立って意味が伝わってくるんだと思うのです。

05 「恋」 小川美潮 (1992)

 リマスター限定再発とセンセとのクロスレビューで急速に好きになった曲。サビ部分の熱感を排した絶唱が唯一無二で何度聴いても素晴らしいのです。今となっては、小川美潮の中では一番聴いている曲かも。

<第2部>
 
第2部は季節感や昼間感のない曲でほぼ固めました。

06 「Digitalian~SHOUT」 小室哲哉 (1989)

 これはセット曲その1。ズルいねw 
 内容のほぼない「Digitalian」があってこそ「SHOUT」が映えるというもの。ギラギラした音の洪水、バシバシ叩くスネア、鼓膜にへばりつく小室哲哉の歌唱。これもEpicの歴史における決定的な場面となったよね。この曲についてはかなり前にTwitterで詳細な解説を施したことがありますがすべてを書き切ったと思っており、この曲をどれだけ愛しているかが分かってくれるか伝わるかもとは思いますが、もう見つからないだろうなぁと思って探したら私のタイムラインには表示されなくなっているんだけれど、何とか拾い上げることができましたw ↓

 で小室哲哉の「SHOUT」。昨日から3回連続して聴き直しました。
 思い出すわ~あの頃。この曲を収録しているアルバム「Digitalian is eating breakfast」のこと。ホンマ見た目も寒いジャケットやブックレットに青っ白い亡霊のような小室が浮かび上がってて見た目の寒々しさを更に増長させてた。黒のコートも羽織っていても、服を着ていると言うより服が着てるような貧弱なラインが、果たしてこれは聴いても良いのかと手を引っ込めたくなる程。近寄り難い寒冷な空気がどこか病弱なニオイのする小室に似合ってるって勝手に思う。サナトリウム文学ならぬサナトリウム・ミュージック?とにかく彼はビジュアル的にはちょっと奥の間で待っていた方が良い様に思うんだけれど、自意識過剰なのか、自分を認めて欲しいのか、すぐに表に出てくる。特に呼んでもないのに。でもまぁ聴こうかと。
 で仰々しいプロローグの「Digitalian」が待ち受けてる。結局、この曲、何が表現してるのか分からない。何を伝えたいのか分からない。朝食の準備け?でもちっとも朝のニオイがしない。冷たく凍えた冬の夜の空気しか伝わらない。汽車の轟音?も聞こえるけれど、何だろう。出勤?ビープ音が和音となって押し寄せてくる感じ。そんなの聞きたくないわ!イライラを連想させるし。でもこの無機質で雑音と同然な導入をくぐり抜けないと、その後で展開する「SHOUT」に辿り着けない。「SHOUT」のへんちくりんさや解放感を存分に感じることができなくなる。だから「Digitalian」は「SHOUT」とセットであり、二個一なんです。実際音が繋がってるし。単独で曲を聴こうとしても「Digitalian」の終わりがかぶさってるし。めんどくさい。
 で「SHOUT」。期待感たっぷりの始まりの音。シンセの分散和音。このトーンが凄く知的な響きとあの時代の持つ生々しい響きとが混ざってて何とも言えない気持ちになります。そして采女ウネウネな実体を明らかにしない低音。ヒステリックにサイコ度を増してくシンセ音の微妙な変化に期待が高まっちゃう。そのちょいと前にギターが何でか知らんけど黄昏たそぶりで、えらく長くメルトダウンした調子で流れ込んでくるし。なんか平成時代のオトナ~って感じ。でもやっぱり小室のフェイク「シャウ!」が炸裂。現実にゆり戻し。めまい確実w ガンダム1年戦争版でCMからアニメ本編に戻ってくる時にかかる「シュゥ!」に近い妄想狂なトーンを帯びたフェイク。気になる。
 そして本気の前奏へ。しつこくてジリジリ来る様な、センセの言うところのギラギラした執拗なフレーズが始まるんですよね~。それがこの曲のモチーフになって、全体の基本的な構成をなすんですね。その意識した作り方も結構感心します。で、そのモチーフを4回繰り返すと、あの舌足らずなのか、噛み倒してるのか、判断が付きかねる、他では中々耳にしないラップが始まります。受け口のような甘えた発音のラップはどうも冗談でもなさそうで、バックの音楽は至って真面目なんで、そういうもんとして聴くことを知ります。いやー手強い!田舎者なので環状線か感情線か分からなかった私w BOSCHとかもこれで知ったし。あ~かなりこの歌詞の世界はマテリアルな価値に重きを置いた世界やねということをもう少し後になって知ることになります。
 「♪SHOUT い~らないのさ~、ほしいのは見えない明日~」でまたしても脳天に響くフェイクが再来。もうここら辺になると「SHOUT」の世界に慣れ始めてて、特にめまいは起こさなくなります。むしろ「ほぅここで使うんやね」と冷静に見てしまいます。そしてそのあとに「ぅ~シャウ! シャウ! シャウ!」の「ぅ~」のところで私たちの覚悟を試されるわけですが、この「ぅ~」は、モノマネをしたくて仕方ないところです。うずうずする。顔とか作ってやってしまいそうw ここまで来ると楽しくて仕方ないです。イ行の音がダダモレでも、ア行が今にもヨダレを垂らしそうなほどだらしなく響いても、構わないのです。むしろ追従したくなるんです。真似たくなるんです。「アイツが気がついて欲しいかぁン~欲しいカン」という終わり方もシュール。この宙ぶらりんな、予定調和にはしない終わり方がすごくクール。しかも「欲しいから」を2回も繰り返しておきながら「欲しいから」とは聞こえず、「欲しいカァン」という良く分からない語尾も注意を喚起します。1番が終わると後はギターが強くなってきたり、音量が増す感じになってきたりしますが、やっぱりセンセの指摘どおり「既聴感のあるフレーズ」がもうええってって突っ込みを入れたくなるほど繰り返して、我慢の限界に達しそうになったころに、またしても「シャウ!!」www 今度はどうも音も大きいぞ! フォルティシモってやつやで、これは。ここではちょっと既聴感のあるフレーズに飽き飽きしてるところへの突然の襲撃なので、目が覚めるというか本当に脳天に響くというかw そして直ぐにやっぱり「い~らないのさぁ~」に入るうえに、シンセの和音も微妙に音の幅が3度ほど広がっていますし、どんどんと盛り上がりというか混沌度というかエスカレーションしてくるので、「うわ~すごいな~!絢爛やな~」と思わずにいられなくなります。センセの言うギラギラ度が最高潮に達する瞬間ですよね。実に素晴らしいところです。カタルシスを感じます。やっぱりこの曲好きやし、小室作品の中でも最高傑作やわと聴くたびに再確認するんです。ここの圧倒的なパワーの洪水は中々ないですもん。
 そしてそれが過ぎると曲は収束へ。曲の構成要素としては歌詞1番の終わりで殆ど出揃っており音楽的な広がりもないまま終わる訳なんですが、そんなの関係ないほどに強い余韻を残して曲が終わるので、満足なんですよね。そんなのに比べてシングル3曲とか、次曲のオペラ・・・も、格段の差を感じずにはいられないのです。当時の小室哲哉というミュージシャンに私が求めることの全てを、この曲は盛り込んでいるので、満足なんです。そして1回聴き終わると、結構疲れるんですけど、もう1回聴き直したくなるんですよね。そう。私はしつこいんですw もっと多面的に彼の音楽性を期待すべきなんでしょうが、私は彼に対して無機質で即物的で物質的なものでデコレイトされつつも、どこか冬の冷たさを湛えたというか、人との距離を取っていると思わずにいられないような印象や、けれども欲望でギラギラした前のめりなスピード感を求めることで十分なんですね。あ~まだ書き切った感はないけれど、コレくらいにしますわ。結構言葉汚く書いてますけど「SHOUT」は本当に好きな曲なんですわ~。あとこの「SHOUT」については、センセと偶然街の図書館で会ったことがあって、キーボード系の雑誌にこの「SHOUT」の楽譜が載っているのを見せてもらったのを、今でも鮮明に覚えてます。あの楽譜、欲しいわ~。あのとき、センセともこの「SHOUT」について結構熱く話した記憶があります。恐らくこの曲だけで30分は話したんではないでしょうか。まあ~そういうことで、小室哲哉の「SHOUT」については、思い入れたっぷりなんです。あとはこの曲を実演しながら、シンセの鍵盤にヨダレを垂らして弾くのがこの曲をこよなく愛する者が究極的に求めるスタイルなんだと私は思うんですよね、本気で。なんか彼自身も鍵盤に体をこすり付けてたりしてなかったっけ?www

@junnovi 旧Twitterより

07 「Don’t Look Back」 松岡英明 (1987)

 この曲はセンセとのクロスレビューによる再評価の結果。以前だったら「Virgins(12inch)」とか「T-R-Y」とか「KissKiss」とかを選んでたのだろうけど。もうなんせ、ベースが命。ンベイ~~~~~ン!のカンピョウのようなチョッパーの一撃でノックアウト。

08 「Individualists(Live)」 佐野元春

 この曲は彼のバンドThe Heartlandとのライブ音源。原曲の原形をとどめない、遥かにスリリングな展開にゾクゾクした。古田たかしのドラムスは本当に上手で、大好きな音を出す人だった。

09 「カラス」 くじら (1988)

 くじらは音楽番組「ミュージックトマトJapan」でプロモーションビデオを観て初めてくじらを意識した曲。「何だろうか、この違和感・・・」というのが第一印象。その後まさかライブに3度も行くようになるとは思わなかった。これもセンセとのクロスレビューで『MIX花カラスNEON』での比較バトルでやっぱり『MIX』アレンジで軍配の上がった曲。ストリングスが奏でるカウンターメロディーが余りに美しくて豊かなんだもん。

10 「Bedtime Stories」 大江千里 (1986)

 これもセット曲その2。でもこれもセットじゃないと評価できない体に私はなってしまっていて、切り離すのはどだいムリ。どちらか片方だと申し訳ないけれど30曲には残せなかった。この曲は、12インチシングルの発売当時から一貫して好きであり続けた曲。12インチなのに誰かさんみたくエクステンディッドダブ何たらみたいなことはしないのが新鮮だった。上品で平和で静かなクリスマスを過ごしたい時に。センセの言う大江千里の本質である「闇」はここにはないw


<第3部>
 
第3部は前半折り返し前として、色とりどりの曲を集めました。

11 「風の街に生まれ」 The Street Sliders (1989)

 この曲はドライで枯れ感のある音と、どこか捨て鉢なハリーの歌が当時突き刺さりました。投げやりにも思えますが綺麗なメロディで好きです。そう、オマエ次第なんだよね、何でも。

12 「19」 岡村靖幸 (1988)

 この曲を初めて聴いた時は、このゴモゴモ感が衝撃でした。あと「eZ」で観た、曲後半の靖幸の踊りに圧倒され何度も再生してモノマネして、センセとかクラスメイトとかからリクエストなくても勝手に教室で踊ってました。思い出すだけで楽しくなる!リマスターで音が良くなったけど、どこか不安定なんだよなぁ。そっくりそのまま再録して欲しい曲のひとつ。

13 「ナイトトリッパー、イェー!!」 BO GUMBOS (1990)

 ライブバンドな彼らだとは思うのだけれど、この曲については録音版が良かった。上手いんです演奏が。スピード感、安定感、グルーブ感、濡れ感、ごった煮感など、矛盾するのにシッカリ高度に共存してて秀逸でした。録音メンバーによる音処理も優れていたんだと思います。

14 「Together」 小比類巻かほる (1988)

 これはホントにまっとうな曲。この曲、大内義昭作曲なんやねというか当時の小比類巻は大内義昭楽曲で有名なのが多いよね。その中でも私はコレ。サビで転調する開放感、上向いて頑張ってこうぜって感じがたまらなくいいんです。OPのどこかニューヨーク的な喧騒を醸し出てるのは「時代」を感じるね。

15 「ピクルス」 遊佐未森 (1996)

 この曲は、センセとの『momoism』のクロスレビュー(注:後日公開予定です)で追加曲として挙げた曲。3拍子、3連符、長調、コーラスワーク、豊饒な余裕と余白、繰り返し聴くに堪えうる秀逸さがそこかしこに。出会ったのはほんのこの数年前。けれども一番好きな曲になり、この数年でも一番の曲になりました。


<第4部>
 
後半の1つ目のグループ。折り返し点を越えました。前半とはまた気持ちを切り替えたような楽曲展開をしてみましたが・・・。

16 「やるじゃん女の子」 渡辺美里 (1989)

 繰り返し「eZ」で登場した渡辺美里ですが、あの堂々とした太い声で、うわ~っと歌い上げる歌い方が苦手でしたが、この曲のOPの白い朝もやのかかった情景描写のその一点で。清水信之のおかげ。これもEpicの大切な情景のひとつ。歌詞の世界はどこか白々しくウソっぽいけど、陽気になるし元気になる。とにかくこのOPの秀逸さがわたしにはたまらなくて、後半の1曲目にはこの曲と決めていました。

17 「Stay In Heaven」 土屋昌巳 (1986)

 この曲は、やっぱり土屋昌巳の最高傑作『Life in mirrors』から選ばない訳にはいかないという思いから。当時このアルバムのハイファイな音にどれだけたまげたか。そして終始うしろで鳴っていた「シューッ!シューッ!」という大量の電気を消費する音がどれだけワクワクさせたか。リマスターではそれが聴こえなくなってしまったけれど、あの原体験をした身としては選ばない訳にはいかないのです。そしてとてもかっこよく仕上がっているこの曲自体も素晴らしく、タイトでエネルギッシュでどれだけ元気を貰ったか分かりません。すごく優等生で均整の取れたロック。絶品。

18 「あたらしいシンパシー」 松岡英明 (1986)

 前曲の疾走感を引き継ぎたくてここに持ってきました。同じ疾走感でも均整の取れたスピード感が良いと思い「Dual Personality」を諦め、この曲を選びました。ギターがドライで本当にいい曲です。こんな曲を1stに入れることのできた松岡英明って良かったなぁとつくづく思います。

19 「Rain」 大江千里 (1988)

 ここでも均整の取れた楽曲をということでこの曲を選びました。転調を用いた情景描写の転向の巧みさ、「行かないで、行かないで」と言葉もメロディーも繰り返すことをするその「覚悟」、実に素晴らしいと思います。多くの人がカバーする理由も分かります。

20 「野の花」 遊佐未森 (1990)

 この曲は、外間隆史と遊佐未森との世界の完成形と終焉という位置づけです。私の中での答えの曲がこの曲でした。「僕の森」も素晴らしいのですが、規模感が違うので大団円としてはこの曲が一番かと。この曲をもって遊佐未森の楽曲は聴かなくなってしまうのですが、何十年後に『momoism』を聴き、野見祐二というクリエイターとの仕事を知り、「ピクルス」というたぐいまれな名品に巡り合うのです。なので「野の花」と「ピクルス」は私にとって遊佐未森の代表的な2曲なのです。


<第5部>
 
後半の中核部分。個性がぶつかり合っていてこれらを最初や最後のグループに持って来てはまとまらないくらいのものを集めました。却って気に入った組み合わせになったと思います。

21 「聖書-BIBLE-」 岡村靖幸 (1988)

 「聖書」はね、もう8センチCDのA面のバージョン一択で。吉川晃司の「サイケデリックヒップ」までではないにせよ、こんなにチョッパーの嵐な曲は他に知らない。「eZ」で放送された「聖書」は、画面がブルーグレーでほの暗くて、狂気を感じさせる蠱惑的なものになっていて、ますます靖幸にのめり込んだのでした。

学校で家で道で公園で交差点でスーパーやコンビニの入口で、頭ブンブン振って狂ったように踊ってましたw 異常w 『家庭教師』を待たずして、アレンジとスネイクダンスとが最高に絡み合った1つの完成形だと思います。発売当時、悩みに悩んで8センチCDを買ったんですが、アルバムには別テイクが収録され、心から買っておいて良かったと思った1枚です。

22 「見返り不美人」 BO GUMBOS (1989)

 この曲はね、「eZ」で放送されたニューオーリンズのジャズフェスティバルの時の演奏で。アルバム収録のはチョット・・・。ライブバンドであることをいかんなく発揮した疾走感とごった煮感抜群の演奏だった。どんとが「♪振り向かないで~、きれいなお尻が台無しだ・か・ら!」と言いながら自分のお尻を叩く仕草が忘れられない。早くに亡くなったよね。。。あと、KYONのホンキートンクなピアノ演奏、どうやったらあんなふうに弾けるのかと何度も何度も画面を食い入るように見ていたのを思い出す。あと中島みゆきの名作『36.5℃』(1986)の中に「見返り美人」という曲があるんだけど、1989年でどんとからのアンサーソングだと私は勝手に位置付けているねん。どっちも大好き。

23 「ありったけのコイン」 The Street Sliders (1988)

 蘭丸もハリーももちろん仲が良いんだろうけど、ムダなことをしないあたりのクールな距離感がどこか曲にも投影されていて、息の合ったスリリングな掛け合いもあれば、突き放したような素っ気ない捨て鉢なところもあったりと、魅力的だった。「Boys Jump The Midnight」でも「Hyena」でもいいんだけど異常なほど汗をかきながら歌うのを観るのがしんどいので、醒めていてどこか一歩引いていて突き放した曲が良いなぁと。

24 「見果てぬ夢」 エレファントカシマシ (1989)

 こんな絶唱をする人いるんだというのを1stで知ったんだけど、意外とアルバム通して気持ち良く聴けたエレファントカシマシ。2ndは本当によく聴いた。けれども1曲選べとなったら、3rdからのこの曲。出だしは「♪ひとの~おもいは~十人十色~」と訥々と。なのにサビになったら、体のどこかの血管が切れてもおかしくないような気張り具合。すばらしい。バンドメンバーもよくまぁ。すばらしい。ハチャメチャな歌に思うんだけれど、全然キーが狂わない。久保田利伸みたい。

25 「賛美歌」 くじら (1986)

 この曲について言いたいことは、センセとのクロスレビューとベスト20曲で書いたけれども、あらゆる事物が熟れていくさまをこんな音で表現したんだということに圧倒された。爛熟。杉林恭雄の妖艶な詞の世界、コムデギャルソンな人と変態的奇才サックスな人とが絡むとこうなるんやね。この曲では熟れ果てるさまを描くからリズム隊は鳴りを潜めてるけど、実は意外とくじらは楠均が重要だったり。この曲は杉林恭雄の言葉の力に圧倒された経験だけで選択しました。「裸の男たちに愛を告げる花たち。肌の香りが君を狂わす。」スゴイ。そこにコーラスワークで「シャクヤク、シャクナゲ、シャボテン、アア。」スゴイ。そこに有象無象のサックス群の音の波。スゴイ。すごすぎる。これもEpicなんだよね。くじらについては他にも大切な曲があって取捨選択は本当にツラかった。


<第6部>
 
最後のグループ。美麗で純度の高い楽曲のみにしました。そういう点で言えばこれ以外に選べる楽曲は、ちょっと思いつかないですし、考えを変えないとできそうにないものです。これらもすべてEpicなんですよね。

26 「ふたつのドア」 小川美潮 (1993)

 この曲は、かつて私は「ニューミュージックの最良の部分が表現されている」と評したほどに当時から愛した楽曲。愛しただけでなく口ずさみ歌った歌。センセと小川美潮1st~3rdのリマスター企画を受けての全曲クロスレビューを経るまでは圧倒的にこの曲一択だったのでした。こんなに純度の高いポップスって中々ないという思いは、今も変わりません。って「純度」って何だろ?w

27 「あの空に帰ろう」 鈴木祥子 (1991)

28「青い空の音符」鈴木祥子 (1991)

29「かもめ」鈴木祥子 (1991)

 これら3曲は鈴木祥子からですが、彼女を選ばないわけにはいかない。なぜか「eZ」には出てなかった気がするけど大切なアーティスト。ミニアルバムを続けて出したり、ピンと来なったアルバムがあったりして、4枚目にして大傑作。A面は鉄壁。けれども私が好きなのはB面。そしてそれは・・・、「青い空の音符」、「かもめ」というように3曲セットとして捉えることに繋がります。けれどもこれらは独立した曲としてちゃんと1曲としてカウントしました。曲を追うとともに段々とトーンダウンしていき、寂しさが全体を覆ってくるわけですが、大好きなんです。もうどうしようもないんです。もうこの3曲だけでミニミニアルバム作ってくださいというレベルです。
 「あの空に帰ろう」はメロディーの美しさ滋味深さが実に素晴らしく知らず知らずに一緒に歌ってしまう。♪on the way back homeやで。アルバムテーマの核心やで。
 「青い空の音符」は大好きな3拍子。ここで3拍子の曲ですか~ッ!クーッ!!たまらん。オシッコもらしそう。同じ地図を使って旅をするのは「Destination」でも「地図をください」でも「山行きバス」でも「夏草の線路」でもなく私は「青い空の音符」でバスで行きますw 窓に広がる夏の色も「青い空の音符」でまいりますw
 「かもめ」ではバスから列車に乗り換えて、とうとうアナタ、北の町の海辺にひとりで来て、飛べないカモメさんしか相手してくれないほどに寂しいのね、ってなってもいいんです。井上靖の詩集『北国』が、自伝的小説『北の海』が、向井潤吉の古民家や旧街道の絵画にある北国の姿が、この曲に溶け込んでいる気がします。物悲しさがこの上なく積もり積もっていても、祥子と一緒にその景色を見ますよ、私は。小石拾いも付き合うよ、私は。

30 「フレンド」 大江千里 (1985)

 この曲は、私にとってのEpicソニーのすべて。100%Epic。純度100%w 大げさな!いえそんなことはないです。ここではとても書き切れないほどの想いや記憶が、このたった5分にも満たない曲に込められていることか。長い年月の中で聴き続けてきて、薄くやわらかい布でずっと磨き続けてきたような営為を繰り返して制作者とともに私も育ててきた曲。私の夢であり、私の道標であり、私の願いであり、私そのものであるそんな曲。大江千里と清水信之に心から感謝してやまないです。

@junnovi Profile

 クラシックと昭和時代のアルフィーとに没入していた日々から、センセ(@tpopsreryo)による指導の下、つまり、Epicソニー、CBSソニー、Fitzbeat、ALFA MOONなどの音楽をシャワーのように浴びる「英才教育」を受ける中で主なる骨組みを作ったのがEpicソニーであり「eZ」であるという、まさに“あの世代”のアホの子。時折Twitterでセンセとお気に入りのアーティストの楽曲のクロスレビューをして登場しては、タイムラインをひどく汚す、悪いクセがある。


@tpopsreryo:
EPIC 45th Anniversary PLAYLIST

 Epic45周年、おめでとうございます。
 テクノポップとその残骸を追いかけていたまだまだ何者でもなかった頃に、とにかくシンセサイザーの音が入った歌謡曲やPOPSを追いかけていて出会ったのが、SONYのアーティストでした。
 特にEpic SONYのアーティストは非常に聴きやすいのにもかかわらず、常に音に対してチャレンジ精神を忘れず、変な方向に出来上がったテクノロジーポップスな耳を楽しませてくれる存在でした。現在私がTECHNOLOGY POPS π3.14というレビューブログを書き続けていられるのも、Epic SONYアーティストのおかげでもあるわけです。
 今回は数々の若き才能を生み出し、数々の名曲を生み出し続けているEPICの楽曲を、Epic45周年ということで45曲45アーティスト(!)という縛りを設けて、時系列を意識しながら選曲し、プレイリストにしてみました。
 EPICの象徴と言えるアーティストから、これもEPIC? あれもEPIC?と思い出していただけたら幸いです。
 さらなる新しい才能を発掘し続けていくことをこれからも期待しています。

第1部
 01「REAL」大江千里
 02「せっせっせっ」土屋昌巳
 03「舞踏会の絵(デカダンスは私と・・・)」 河合夕子
 04「Can't Touch, Even Watch」見岳アキラ
 05「リアルな現実 本気の現実」佐野元春
 06「砂の雫」PINK
 07「メランコリーな欲望」鈴木雅之
 08「死んでるみたいに生きたくない」渡辺美里
 09「Magic Vox」一風堂
 10「星空のパナシスト」パナシスト
 11「serious night -everlasting harmony-」真田広之
 12「サマルカンド大通り」スーザン
 13「LOVE,かくし色」森山達也
 14「Your Song ("D"Mix)」TM NETWORK
 15「Cab Driver」大沢誉志幸
第2部
 16「虹のマジック」渡辺満里奈
 17「PARTY」小比類巻かほる
 18「風の吹く丘」 遊佐未森
 19「いじわる」岡村靖幸
 20「NUDE」くじら
 21「街にあきた僕」鈴木トオル
 22「Round at the night」LOOK
 23「タキティナ」 詩人の血
 24「MIDNIGHT FLOWERS」FENCE OF DEFENSE
 25「Laugh-Gas」細野晴臣
 26「HEAVEN LINE」BANANA[UPLM]
 27「惑いのWicked Woman」大橋純子
 28「夢の子供」時任三郎
 29「Visions of Boys」松岡英明
 30「ムーンダンスダイナーで」鈴木祥子
第3部
 31「にちよう陽」AZUMA HITOMI
 32「「夢」 ~ムゲンノカナタ~」ViViD
 33「真冬の夜の夢」 渡辺信平
 34「マダム・バタフライ」The Eccentric Opera
 35「Quiet Words」bambi synapse
 36「are」School Food Punishment
 37「BAKABON」矢野顕子
 38「RHYTHM RED BEAT BLACK [Version 300000000000]」電気GROOVE
 39「24th to 25th」杏子
 40「In The Schoolyard」ゴンザレス三上
 41「LOST COMPLEX ~COMPRESSED MIX」Iceman
 42「大天使」オナペッツ
 43「Chat Show」小川美潮
 44「背徳の瞳~Eyes of Venus~」V2
 45「秘密の時間」さよならポニーテール

@tpopsreryoによるプレイリスト各曲コメント

<第1部>
80年代前半〜中盤にかけてのリリースを中心に。
EPICの礎を・・・というには程遠い選曲ですが。

01 「REAL」 大江千里 (1985)

 これはもう言うまでもないですね。テクノロジーポップスの最高峰。アタックの強いシンセから始まり、8連打のハンドクラップ、Aメロのふわっとした幻想的パッド、そして間奏のゴムのように弾むシンセリードとポルタメントを含むアタックシンセとの掛け合い・・素晴らしいEPICサウンドでした。何度も言いますが私、大江千里の編曲は断然清水信之派です。

02 「せっせっせっ」 土屋昌巳 (1982)

 結局現在までこの楽曲のような素っ頓狂なベースパターンを聴くことができるPOPSは他にありませんでした。Percy Jonesのようなフレットレスの弾き方をPOPSに持ち込んだ功績は偉大でしかありません。一風堂「Night Mirage」で彼とのアンサンブルが花開くのですが、EVEのコーラスもあって弾け方が半端ないのがこの楽曲。こういうサウンドを許容できたのもEPICならでは?(すみれSeptember Loveのヒットのおかげかも)

03 「舞踏会の絵(デカダンスは私と・・・)」 河合夕子 (1983)

 この方がEPICということを認識しない方も多いと思いますが、当時はカーリーヘアの眼鏡っ子というビジュアルのシンガーソングライターとして活躍していました。この曲は83年リリースの「不眠症候群」収録で、編曲は水谷公生ですが、カッティングの分離の良さとドンダンリズムのボトムの深さが魅力。ソロシンガー引退後はスタジオコーラスとしても活動していたほどの歌唱力でパワフルに歌い上げます。

04 「Can't Touch, Even Watch」 見岳アキラ (1983)

 美空ひばりやとんねるず、おニャン子クラブへの楽曲提供はもう少し先ですが、一風堂在籍時に1枚ソロアルバムを残しています。プロデューサーはなんとJAPANのRichard Barbieri。しかし音楽性は寺尾聰大ヒットの余波を借りた大人のAORシティポップ。しかしながら流石にシンセワークはProphet5の匂いがそこはかとなく香るニューウェーブ仕様。この楽曲はアルバム「Out Of Reach」収録ですが、サイン波のような音色のソロと、サビ裏のボコーダーボイスが美味しい渋めの仕上がりです。

05 「リアルな現実 本気の現実」 佐野元春 (1985)

 あの「Young Bloods」の大ヒットの次にシングルカットされたのが、このポエトリーリーディング曲。Willが、Willがって一体何を伝えようとしているのかわからない異色の楽曲。佐野元春なりのテクノポップだったらしいです。この淡々としたリズムマシンの響きだけで持っているような印象を考えると、彼なりのヒップホップでもあったのかもしれません。

06 「砂の雫」 PINK (1984)

 PINKも最初はEPIC SONYのデビュー。このデビュー曲は持ち前の疾走感も備えていて福岡ユタカのヴォーカルも良い具合にうわずっていてテンションとしては悪くなかったと思います。次のシングル「Private Story」が映画のタイアップと共に「チ・ン・ピ・ラ」というタイトルに変えられそうになって激しく抵抗した挙句、レコード会社を移籍となったのでした。

07 「メランコリーな欲望」 鈴木雅之 (1986)

 シャネルズ時代からの大御所・鈴木雅之のソロシンガーデビューは何を間違えたのか、ギャップを生み出したかったのか、大沢誉志幸にプロデュースを依頼したのですが、シングルのバラード「ガラス越しに消えた夏」は上手くハマったのですが、当然1stアルバム「mother of soul」ではやりたい放題になりますよねっていう・・・アレンジにホッピー神山を迎えて、大デジタルファンク大会になってしまいました。ホッピープロデュースの大沢誉志幸楽曲を鈴木が歌っているだけという。暴れ回るフィルインに次ぐフィルインによる爆音の嵐。なお、以降このような冒険はなくなりました。

08 「死んでるみたいに生きたくない」 渡辺美里 (1985)

 EPIC SONYの象徴であり、現在もまだ所属しているレジェンド。「My Revolution」で大ブレイクを果たすまではまだ何者でもなかった彼女が85年末にリリースしたこの3rdシングルは、いまだ芽が出ていなかった小室哲哉が作曲、後藤次利がいつものゴリゴリチョッパーと共に疾走感のある近未来アレンジで持ち前の歌唱力を支えた好楽曲です。この頃はいまだヒットせず産みの苦しみを味わっていましたが、きっかけというものはすぐそこに転がっていたのでした。

09 「Magic Vox」 一風堂 (1981)

 EPICというレーベルを最初に意識したのは一風堂でした。こちらは「すみれSeptember Love」でのブレイク直前の3rdアルバム「RADIO FANTASY」収録曲。一皮剥けて鼻から抜けるようなコミカルボイスだった土屋昌巳が、ニューロマスタイルの湿り気低音ボイスを多用するようになった時期ですが、岳章との共作ということもあって、ボコーダーあり、バイオリンソロもあり、シンセソロあり、何かスイッチが入るような不思議ギターワークもありで、ストレンジな音響と共に見せ場満載です。

10 「星空のパナシスト」 パナシスト (1980)

 西脇睦宏&西脇葉子の夫婦ユニット・パナシストは長らく全く振り返られることのなく、テクノポップ愛好家が発掘しなければそのまま闇に葬られてしまうところでした。1980年代というテクノポップ全盛期に夫婦で宅録にチャレンジし、仕上がったのは何ともチープなエレクトロサウンド。不安定なメロディが微妙な気持ちにさせられますが、個人的な印象ですが、かなり不思議なユニット名で得をしていると思います。

11 「serious night -everlasting harmony-」 真田広之 (1985)

 今をときめくハリウッド俳優もJAC在籍時はEPICでした。これはEPIC在籍時のラストシングル。滲むようなシンセワークで彩ったアレンジは笹路正徳。中盤で駆け上がるようなフレーズからのプログレスタイルのシンセサイザーソロが堪能できます。やはり85年というのは誰もが冒険したがる時代だったんですね。それにしても本当にこの楽曲のシンセプレイは熱いです。笹路正徳の本領発揮といったところでしょうか。

12 「サマルカンド大通り」 スーザン (1982)

 フルネームはスーザン野崎。テクノポップ界隈では有名なスーザンも実はEPICの出身。高橋幸宏プロデュースで2枚のアルバムをリリースした後のアルバム未収録シングル。あの高橋幸宏独特のドラミングが叩き出す前ノリリズムが極上の疾走感が味わえます。等間隔で刻まれるヴォーカルにかけられたディレイはスーザンの十八番でしょうか。しかしここまでハイハットが目立つ楽曲も珍しいですね。

13 「LOVE,かくし色」 森山達也 (1985)

 硬派なロックバンドTHE MODSのヴォーカリストソロワークスを土屋昌巳がプロデュース。土屋が「東京バレエ」でCMタイアップしていた同時期のレコーディングなので、サウンド面では典型的な姉妹作品となっています。ドラムが強調され、奥行きのあるエフェクトが施されたサウンドデザイン。「あ~」という発音に遠慮がないのが硬派たる所以だと思います。アウトロにおける(音色の違う)スネアでパーーーーンッ!というワンショットが素晴らしいです。

14 「Your Song ("D"Mix)」 TM NETWORK (1985)

 実はワタシとTMの出会いはこの曲をFMラジオ番組で聴いてからなのです。メジャーとマイナーをこれだけ頻繁に行き来する楽曲というのも面白いし、牧歌的な様子を見せて、随所でドモリングサンプリングを挿入してくるし、スネアの音も独特、この"D"Mixでは派手なオケヒット連発に続いて第九をそのままサンプリングする暴挙に出ているので(多分Emulator IIで)、テクノな耳には楽しくて仕方がなかったのです。アウトロでは北島健二のギターソロも追加されているお得感。断然12inchのこのバージョンが好きでしたね。これを気に入ってしばらく追っかけるのですが、翌年急にFANKSを標榜して「Come on let’s Dance」のMVを見た時に、初めて彼らの姿を見たのです。髪の短いのが宇都宮?髪の長いのが小室?時々出てくるキリッとした顔が木根?と勘違いしていました。サングラス野郎を当時見つけることができなかったほど(完全にエキストラだと思ってました)、誰が誰だかわからなかったのも良い思い出です。

15 「Cab Driver」 大沢誉志幸 (1983)

 大沢誉志幸はたくさんデジタルファンクな楽曲があるのですが、あえて稀代のバラードメイカーに敬意を表して「そして僕は・・・」ではなく、ブレイク前のこのバラードソングを。丁寧に作り込まれたシンセ音色と空間的なサウンドメイクは大村雅朗&松武秀樹コンビの隠れた良い仕事と言えるでしょう。サビでの転調も美しいし、寂寥感に溢れながら実に幻想的。ここで第1部を締めます。


<第2部>
80年代中盤〜後半、80年代の終わりにかけてのリリースを中心に。
まさにEPIC SONYの全盛期をここに詰め込みました、ワタシなりに。

16 「虹のマジック」 渡辺満里奈 (1987)

 おニャン子関係の中では抜群の音楽性の高さを感じさせるのは、何といっても山川恵津子のエレガントなアレンジ力と、プログラマー森達彦の硬派なリズム&多彩できらびやかなシンセ音色の賜物と言えます。2ndアルバム「EVERGREEN」は全曲山川編曲の名盤で、この楽曲はオープニングナンバー。シングルカットしてもよいクオリティを備えたキャッチーなメロディライン。スネアの響きがとても、とても良いです。

17 「PARTY」 小比類巻かほる (1987)

 青森県三沢市周辺によく存在するレアな苗字のシンガーは「Hold On Me」でブレイクします。それまでは渡辺美里と共に歌の上手なお嬢さん的立ち位置でしたが、プロデューサーに土屋昌巳を起用してから運が開かれていきます。当時土屋は間違いなく売れっ子プロデューサーでした。しかし彼がプロデュースすると、高い確率でベースラインがMic KarnやPercy Jonesみたいになるので要注意ですw 例えば大内義昭の曲をアレンジする分には大人しいのですが、この楽曲のように自身の作曲となると途端に土屋色に染めてきます。唸るギター、変に浮きまくるベース、バキバキの質感・・・そう、土屋もオーバープロデュースの住人なのです。

18 「風の吹く丘」 遊佐未森 (1988)

 遊佐未森もEPICで一時代を築いたシンガーの1人ですが、数ある名曲の中でこの楽曲を選曲したのはひとえに不世出のドラマー・故青山純のキレ抜群のドラミングを残したい一心にあります。隙間にロールを入れながらの複雑なリズムパターンを叩き出すテクニックもさることながら、開放的なスネアの音処理が抜群で、ドラムにばかり耳が入ってしまうのが玉にきずです。2ndアルバム「空耳の丘」は実に音の仕上がりが良いアルバムですが、この楽曲はその収録曲の中でも抜群の出来だと思います。

19 「いじわる」 岡村靖幸 (1988)

 これもまさにEPICを象徴する楽曲の1つ。というより岡村靖幸という稀有なアーティストの立ち位置を確立した記念すべき名曲です。何がスゴイって言葉というか発声のリズム感が桁外れの良いですよね。特に後半のフェイクの入れ方のタイミングはもはや天性のモノというか・・。なので岡村靖幸といえば当然この楽曲を入れないと収まりがつかないわけです。

20 「NUDE」 くじら (1986)

 ノンPAライブが話題を呼んだトリオバンド・QUJILA(くじら)は、リーダーの杉林恭雄がもともと電子音楽からキャリアをスタートしただけあり、基本的にアコースティックで成立するタイプでありながら、そこはかとなくニューウェーブの香りを残した楽曲を残しています。この楽曲は2ndアルバム「たまご」の先行シングルで、そのアルバムバージョン。サウンドプロデュースが清水靖晃に小野誠彦(オノセイゲン)なので、凝りに凝った音響で楽しませてくれます。牧歌的な印象の強い彼らの楽曲の中でも、エッジの効いたシャープなサウンドに仕上がっています。

21 「街にあきた僕」 鈴木トオル (1989)

 LOOKを脱退したメインヴォーカリスト鈴木トオルは早速ソロ活動を開始して、1stアルバム「砂漠の熱帯魚」をリリースしますが、本作のプロデュースはシンクラヴィアを操る日向大介。しかしいくつかの楽曲は実は成田忍と当時高橋幸宏事務所のプログラマーにして後に鈴木祥子と結婚する(離婚しますが)菅原弘明のアレンジャーユニットDAHLIAがプロデュースしていました。この楽曲は構成といいメロディの曲といい成田色がかなり強いので、成田忍が歌っても違和感がありません。乾いたサウンドメイクは遊佐未森「瞳水晶」で鍛えられた感もあります。

22 「Round at the night」 LOOK (1986)

 LOOKといえば世間では「シャイニンオン」の鈴木トオルのしゃがれ甲高いヴォーカルなんだけど、アルバムでは多彩なポップテイストが満載で想像以上に幅広い音楽性のグループだったのです。特に作曲者の山本はるきちは楽曲提供は少ないのですが、KENSOのドラムを務めるほどのプログレ野郎ですし、この「Round at the night」は山本自身のソロとして確かデモテープコンテストの最優秀賞を受賞した楽曲だったと記憶しています。劇場アニメ「GALLFORCE ETERNALSTORY」にも使われましたよね。山本自身が爽やかにヴォーカルをとるめちゃくちゃ甘酸っぱいバラードで、この空気感がTHE 80’sなわけです。LOOKの一般的なイメージとはまた別の側面を見せる名曲です。

23 「タキティナ」 詩人の血 (1989)

 詩人の血は1枚ごとに音楽性がまるで変わるのでどの楽曲を選ぶか非常に迷いましたが、結局初心に帰って1st「What if…」からの変態曲です。聴けば聴くほどストレンジな感覚に襲われるのですが、やはりタイトルの謎が解けた時は嬉しかったですね。タイトルの由来は、インド音楽の拍子の数え方なのです。1拍「タ」 、2拍「タキ」 、3拍「タキテ」 ときて、4拍「タキティナ」なんです。ちなみに5拍では「タキティナク」、9拍では「タキテタキテタキテ」、11拍では「タキティナクタキティナクタ」・・・だからこれはインドテクノなんですよ。

24 「MIDNIGHT FLOWERS」 FENCE OF DEFENSE (1987)

 FODはどれにしようか迷いましたが、やはり定番のコレですね。ハードエッジなギターとシーケンスとの融合を試みたこのバンドの典型的なサウンド。FOD特に西村麻聡は初期ビーイングでかなり変態的にサウンドメイクを鍛えられていて、マライアや細野晴臣とかの薫陶を受けているはずなので只者であるはずがないのです。ハードロックスタイルのヴォーカルは好き嫌いが分かれると思いますが、ワタシは結構好きな部類で、この声質もEPICの時代を感じさせます。

25 「Laugh-Gas」 細野晴臣 (1989)

 大御所・細野晴臣はテイチクからEPICに移籍して、アニメ「源氏物語」のサントラをリリース後、自身のアルバム「omni sightseeing」をリリースしたのでした。世界一周旅行的なこの名盤の中で最も異質かつアシッドテクノまっしぐらの11分超えの長尺楽曲がコレです。アシッドといってもTB-303ではなくて、EMS Synthi AKSあたりではないかと思いますが、303とは違ったアシッド感覚でずっと聴いていられるのですよね。そして時折アラビックな要素とYMOファンが泣いて喜ぶ布井智子のナレーションが入るという、サービス精神も旺盛なホソノイド楽曲です。

26 「HEAVEN LINE」 BANANA[UPLM] (1986)

 EPIC SONYは1986年に伝説的なオムニバスアルバムをリリースしています。「別天地」というタイトルで5名のクセのある気鋭のミュージシャンが2曲ずつ提供する企画で、デビューしたてのPizzicato V小西康陽、チャクラからKilling Timeに活動拠点を移した板倉文、メジャーデビュー前のDate Of Birth重藤功、UK POPバンドSCREENのフロントマン和久井光司、そして井上陽水や安全地帯、越美晴等のサポートで名を知られ、EP-4や原マスミ関連、PINKやKilling Time界隈でその存在を轟かせていた風変わりなキーボーディスト、川島裕二・通称BANANAが参加していました。BANANAは自身のユニットUPLMとして本オムニバスに参加、「CELL」とこの「HEAVEN LINE」の2曲を提供していますが、どちらも彼らしい複雑怪奇なデジタルファンクチューンに仕上がっており、類まれなセンスの底知れなさをアピールしています。なお、作詞はPINKの渋谷ヒデヒロ。特にMeckenのブリブリしたベースラインに注目。

27 「惑いのWicked Woman」 大橋純子 (1988)

 この人も歌唱力お化けの大御所シンガーですが、一時期EPICに在籍していました。旦那の佐藤健との共同作業に清水信之がエレクトリックなサウンドを施して、80年代サウンドにも対応しています。もともと大橋もバックバンド美乃屋セントラルステイションのメンバーとして土屋昌巳を雇っていたわけで、EPICに来るのも必然といえば必然・・・あれ?なんだかEPIC=土屋昌巳みたいな流れになってきましたよ?w それにしてもよく伸びる声の壁です。吉田美奈子とタメを張る声量!

28 「夢の子供」 時任三郎 (1986)

 俳優シンガーも数名在籍していたEPICですが、人気を博していた時任三郎も本レーベルの住人。比較的落ち着いた作風が多かった彼ですが、この曲も渋みを全面に押し出したようなバラードソング。このグッとくるメロディラインのコンポーザーはLOOKの山本はるきち。LOOKの3rdアルバム「WINGS」では山本自身の歌唱によってセルフカバーされています。

29 「Visions of Boys」 松岡英明 (1986)

 これはもう言うことないでしょう。レイト80’s EPICの象徴といえばこの楽曲。デビューシングルで、しかも英語で、自身の作曲で、布袋寅泰とホッピー神山が全面バックアップしてという、何とも画期的なデビュー。仕上がったサウンドのカッコよさに圧倒されましたよ。間奏からも布袋ギターと矢口博康サックスの競演も素晴らしいし、ホッピー神山のサビ前のキーンッ!も、矢口は最後窒息するくらいに吹きまくり過ぎだろうとw デビューシングルにしていまだにベストソングの座を譲りません。

30 「ムーンダンスダイナーで」 鈴木祥子 (1989)

 そして第2部最後を締めくくるのはこの珠玉のバラードです。これで締めないと、うらぶれたクリスマス後の街を徘徊しないと終わらないわけですね。この曲に関しては何度も言及しているので今更ですが、とにかく鈴木祥子はAメロの入りに天性のものがあるのです。この楽曲もそうなんですが、それに加えてこの人工的なストリングスの冷たさ、Fairlight CMIで作られたこのストリングスの味わい深さが寂しい空気を上手く表現している部分がポイントなんですね。その一点のみで30年以上聴き続けているのです。


<第3部>
ほぼ90年代から以降、つまり平成以降のリリースを中心に。
ちょっと時期に偏りがあるのですが、10年代のものもチラホラと。

31 「にちよう陽」 AZUMA HITOMI (2013)

 いきなり年代が飛ぶのですが、彼女は当初匿名な感じでデビューしたのですが、蓋を開けてみるとバリバリのDTMシンガーソングライターでして、ライブではMac、エレキベース、アナログシンセ、ペダル鍵盤、自動キックマシーン、LED照明システムを要塞のように配置したシステムで歌うという、少しイカれた感じのアーティストでした。細海魚との共同作業で作り上げた1stアルバム「フォトン」のスタートを飾るこの曲もバリバリのテクノポップですが、比較的温かみのある楽曲をここまでエッジの強いシンセで装飾するなんて、何て罪な女だろうと思うわけです。

32 「「夢」 ~ムゲンノカナタ~」 ViViD (2011)

 当時なかなかの鳴物入りで売り出されたヴィジュアル系風味のミクスチャーロックバンドのデビューシングル。このデビューシングルだけが飛び抜けて良いと思いました。この若さに任せた勢い、これが当時欠けてきた姿勢なんだろうと。聴いてくださいよ、この粗い演奏を!でも何だか心地良いんです。メロディが良いのかな。妙に気に入ってしまったことを思い出すのです。なお、この楽曲の共同編曲者は西城秀樹の甥である宅見将典です。

33 「真冬の夜の夢」 渡辺信平 (1988)

 EPIC SONY創立10周年企画でリリースされた大沢誉志幸プロデュースのクリスマスオムニバスアルバム「Dance to Christmas」には、EPIC所属のアーティストはもちろんのこと、楽曲制作にはメジャーデビュー前の若き才能達も参加していました。渡辺信平は山下達郎スタイルの1人多重コーラス打ち込み系シンガーソングライターで、甘いヴォーカルと洒落たメロディラインによるシティポップを得意としていまして、この楽曲でも特徴的なシンセブラスのキレが素晴らしい。翌年には鈴木トオルのソロデビュー曲「夜に泳いで」を提供しデビューの準備は整ったかに見えましたが、結局彼は何故かEPICを離脱、ソロデビューはバップからとなりました。

04 「マダム・バタフライ」 The Eccentric Opera (1996)

 90年代にはエレクトリックサウンドとクラシック音楽との融合がわかりやすい形で積極的に図られ始めた時代でした。EPIC所属でいえば葉加瀬太郎率いるクライズラー&カンパニーがその代表格でしたが、90年代後半には東京藝大出身の才媛・コンポーザー書上奈朋子とソプラノ相良奈美に、テノールの川島豊を加えた3人組The Eccentric Operaがデビュー。オペラの名曲をテクノに仕上げる手法で、プロデュースはクライズラー&カンパニーの斉藤恒芳。しかし当初はサウンド面での完成度をスキンヘッドにボンデージルックという相良のインパクトが強過ぎてキワモノ扱いされかけていました。しかし、2ndアルバム「HYMN」以降に川島が脱退し路線転換してからは、その実力が正当に評価されていくことになります。

05 「Quiet Words」 bambi synapse (1996)

 陣内孝則のマネージャーであり、博多出身のロックバンド・アクシデンツのメンバーとして活躍、現在は音楽プロデューサー&MCとして活動しているスマイリー原島が、1996年にEPICよりリリースした女性ヴォーカルインディーズバンドばかりを集めたオムニバス「LADY STEADY GO!」。本作に参加していたのが京都出身のアヴァンギャルド=エレクトロポップユニットbambi synapse(バンビシナプス)です。京都のニューウェーブロックバンドCONVEX LEVELのリーダー渡辺良と奥方のmichiyoに、日本が誇るテクノユニットTANZMUZIKの佐脇興英が参加したトリオユニットで、本作には「Chrysalis」とこの「Quiet Words」の2曲を提供。切り貼りされた強力なリズムループに電子音と幻想的なヴォーカルが絡む7分超えの長尺楽曲でも、全く飽きずに聴いていられるクオリティです。この楽曲は2年後に自身の2ndアルバム「LIFE」に収録されますが、ただ単純にEPICから先にリリースされていたことに今更ながら驚きました。

06 「are」 School Food Punishment (2011)

 あの当時珍しく気に入っていた現在進行形のバンドだったんです。何よりキーボーディストの蓮尾理之の個性を気に入っていて、出てくるフレーズの全てがノイジーなのです。この楽曲なんかこんなにあっさり感のある良いメロディの楽曲なのに、どうしてもシンセを歪ませたくて仕方ないというw このプツプツ感というかチリチリ感というか、こんな繊細な音作りをするのにルックスは長髪で髭で清潔感がないところも気に入っていました。

07 「BAKABON」 矢野顕子 (1991)

 あの大御所シンガーソングライター矢野顕子がニューヨークへの移住を機に5年在籍したMIDIレコードから移籍した先がEPIC SONYでした。1991年に移籍第一弾アルバム「LOVE LIFE」の冒頭を飾る楽曲が、文字通り赤塚不二夫の不朽の名作漫画「天才バカボン」の世界観を矢野式に解釈したこの「BAKABON」です。このような企画モノとしか思えないようなテーマでも想像以上に良い曲に仕上げてくるのが、矢野顕子という不世出のアーティストの才能と言えるでしょう。大村憲司のギターソロも熟練の極み。そして鈴木祥子のコーラス参加にEPIC味を感じさせます。

08 「RHYTHM RED BEAT BLACK [Version 300000000000]」 電気GROOVE (1991)

 TMNETWORKがTMNと改名して初めてリリースしたアルバム「RHYTHM RED」に収録され、シングルカットされた「RHYTHM RED BEAT BLACK」のロングバージョンとして、1991年にVer.2.0として再びリリースされたのがこの8cmシングル。これはスプリットシングルとなっていて、相方に選ばれたのが、ナゴムレコードのイカれたテクノポップグループ人生から改名し、メジャーデビューを勝ち取った当時はまだテクノラップユニットであった、砂原良徳在籍前、CMJK加入時の電気GROOVEでした。Version 300000000000と3千億なのに見栄を張って「3那由他」と読ませるこのふざけたヴァージョンでは、宇都宮隆のヴォーカルを巧みにサンプリングしながら、脱力ラップがやりたい放題繰り広げられます。いつ聴いても「ケツにはブッスリ刺さって抜けない”ハイヒ~ル~♪”(←この部分のみ宇都宮のサンプリング)」には笑いを禁じ得ません。

09 「24th to 25th」 杏子 (1988)

 こちらも大沢誉志幸プロデュースのクリスマスオムニバスアルバム「Dance to Christmas」からの1曲。バービーボーイズは誰もが認めるEPICにて一時代を築いた男女デュオスタイルバンドのシンボルでした、ソプラノサックスをぶら下げたKONTAとコンビを組んでいたハスキーヴォイスの女性ヴォーカリスト杏子は、このアルバムにソロで参加、アダルトな曲調の楽曲をムーディーに歌い上げます。作編曲はメジャーデビュー直前のマルチプレイヤーアーティスト荒木真樹彦。一聴してわかってしまう繊細なギターワークと特徴的な多重コーラスでしっかり主役を立てながら安定したサウンドで守り立てる、コンポーザーの鑑のような仕事ぶりです。

10 「In The Schoolyard」 ゴンザレス三上 (1993)

 新しいタイプのギターインストデュオとして注目を浴びたGONTITIもEPIC所属アーティストでしたが、一時期それぞれがソロ活動を行っていた時期もありまして、1993年にゴンザレス三上のソロとしてリリースされたアルバム「gate of notion」は長くGONTITIを支えてきた福岡智彦のディレクションのもと、小川美潮や遊佐未森、当時EPICに移籍してきたdip in the poolの甲田益也子ら豪華ゲストを迎えたお洒落なPOPS作品となりました。この楽曲はゲストヴォーカル陣の中でただ1人EPIC所属でなかったかの香織が歌い、屋敷豪太がアレンジした爽やかなアーバンポップチューンです。こういった作品が実現できるのもディレクター福岡智彦の人脈による部分が大きく、彼が手掛けたその他の作品(くじらや遊佐未森、小川美潮、Killing Time、土屋昌巳etc)も含めて、彼のEPIC SONY作品への質の高さに対する貢献度は非常に高いと言えるでしょう。

11 「LOST COMPLEX ~COMPRESSED MIX」 Iceman (1998)

 Icemanも2ndアルバムまではEPICに在籍していました。最終的には浅倉大介がどこまでBPMを上げるかの実験場にしてしまいヴォーカリストが辞めて空中分解したIcemanですが、その傾向が少し垣間見えているのがこの楽曲。とにかく走りたがるこのテンポ。ドラマーがいないことをいいことに高速でプログラミングされたシーケンスの忙しなさに笑ってしまいます。その後EPICからアンティノスに移籍するのですが、「Shining Collection」「Strike Back of PSYCO」など速さを追求し過ぎた結果がああなったわけですw

12 「大天使」 オナペッツ (1995)

 美大出身のドラァグクイーンデュオとしてタレントとして90年代半ばに露出していたオナペッツは、当時のその人気に乗じて1994年にEPIC SONYからメジャーデビューを果たしています。当初はイタリアンオールディーズ「月影のナポリ」を白井良明アレンジでリリースしていましたが、翌年からは浅倉大介プロデュースにより大胆に路線変更、翌年リリースの2ndシングル「大天使」ではあからさまなaccessスタイルの浅倉節が炸裂(あのムーンシャイダン!バーーーンッ!のオマージュもありw)、音楽的な軸をガッチリと確立すると、その後2枚のシングルとアルバム「Bonjour」は浅倉大介サウンド全開の好盤として好事家達の記憶に微かに残ることになったのでした。こう見えてオナペッツの2人は学生時代にバンド活動をしていたということで、それなりの素養はあったようです。

13 「Chat Show」 小川美潮 (1993)

 小川美潮も名曲が多過ぎて選曲を迷わせましたが、やはり思い出のこのギミック満載楽曲しかありません。何せクロスレビュー企画でMa*Toさんにダメ出しを食らったこの「Chat Show」のlo-curve-fxですよw まさかの当事者介入によるfacebookでの緊急座談会開催には嬉しいやら恥ずかしいやらで針の筵状態でした。その分今まで知ることができなかった貴重な情報をたくさん得ることができて、感激したことを今でも覚えていますので、まさに思い出の楽曲なのです。今更言うまでもないMa*Toさんの人力フェーダー&ボタンコントロールの逸品です。

14 「背徳の瞳~Eyes of Venus~」 V2 (1992)

 これぞEPICが生んだ小室哲哉とYOSHIKI(X JAPAN)による世紀のスペシャルユニットが唯一残したシングル。ピアノ連弾から始まってYOSHIKIがドラムに乗り換えるまでの間が何となく笑えたことを思い出します。やはりこのようなドラムを叩くと体を悪くするよね・・・とも思いますが、実は結構小室哲哉のシンセもやりたい放題でして、感想ではクラシカルな要素を見せつつ惜しげもなくオケヒットを連発、特にアウトロなんかはプログレ魂が覚醒したかのような引き攣ったようなシンセがギュイグイイギュイギュイ~~~~ヴォ~~~ンといななくわけですから、やはり面白い楽曲だと思うわけです。ネタ扱いされてしまうのは小室がヴォーカルだからという一点でしょう。

15 「秘密の時間」 さよならポニーテール (2013)

 さよならポニーテールは全くメディアには姿を現さない覆面ユニットなんですが、いつかネタバラシをしてほしいと思いながらデビューから10年以上経過しました。メインコンポーザーが4名ほどいて、女性ヴォーカリストが5名いて、その他いろいろいるわけですが、そのうち「ふっくん」というコンポーザーの作曲能力がずば抜けていて、名曲を生み出しているのはほぼ彼の力です。この楽曲も正式なリリースではなく映画「スクールガール・コンプレックス~放送部篇~」の主題歌で、同映画原作の文庫本に付録CD収録のマニアック音源でしたが、後年ベスト盤に収録されました。テクノロジーを別にしてもこういう爽やかな曲もたまに聴くとよいものです。


@tpopsreryo Profile

 知る人ぞ知る電子楽器とかそういう関係のPOPSを取り上げるブログ「TECHNOLOGY POPS π3.14」を2007年より1000を超えるアルバムレビューを延々と書き続けている管理人。最近はnoteを別邸として@junnovi氏とのクロスレビュー記事や、ベストアルバム系特集記事を思い出したようにUPするテクノロジーポップスイントロデューサー。ブログでは80’sバンドブームを彷彿とさせるバンドTHE HAKKINのアルバム「情緒」、イタリアのルネッサンステクノポップバンドVIDRAの1stアルバム「la fine delle comunicazioni」、NYブルックリンのシンセポップバンドIce Choirの2ndアルバム「Designs in Rhythm」、テクノロジーポップスを標榜するショック太郎率いる無果汁団の1stアルバム「マドロム」、2ndアルバム「うみねこゲイザー」、佐藤清喜氏ソロワークnicely niceの1stアルバム「The Adventures of Nicely Nice」の特集レビューのほか、VIDRA主宰のFrancesco Fecondoへのインタビュー記事、スノーモービルズ遠藤裕文(HIROFUMI ENDO)のソロアルバム「HIROFUMI CALENDAR」のレビューとインタビュー記事、ミレニアムに活躍したテクノポップガールズグループjellyfish TYOの特集記事などの執筆実績有り。


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