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土屋昌巳リマスターBOX「Masami Tsuchiya SOLO VOX EPIC YEARS」全曲クロスレビュー(4):4thアルバム「HORIZON」

 今回はボックスセット「Masami Tsuchiya SOLO VOX EPIC YEARS」の4枚目となります、名盤「Life in Mirrors」で踏み入れた音の桃源郷に迷い込んだ土屋昌巳がたどり着いた深遠なる孤高の世界、4thアルバム「HORIZON」がテーマとなります。今回も思い入れの深いアルバムということで、どうしても饒舌になってしまうクロストークとなりますが、そんな見方もあるんだなあという軽い気持ちでお楽しみいただければと思います(今回は各曲のリンクがないものが多いのですが、そもそも配信されていないアルバムですのでその点はご容赦ください。どうでも良い脱線は多いのですけど・・w)。

◆4th「HORIZON」(1988)

〜オープニング〜

@tpopsreryo:
土屋昌巳のリマスターBOX「Masami Tsuchiya SOLO VOX EPIC YEARS」全曲クロスレビュー企画、本日は4thアルバム「HORIZON」です。前回と同様といいますかいつも通りなんですが、@junnoviさんとのとりとめのない対話式レビューとなります。よろしくお願いします。

@junnovi:
第4回になりましたね、センセ。どうぞよろしくお願いします。3部作の「HORIZON」やね。

@tpopsreryo:
前作「Life in Mirrors」の完成度が非常に高かったことから期待されたこの1988年リリースの4thアルバム「HORIZON」でしたが、前作に至るまでは土屋自身がプロデューサー業に多忙で、小泉今日子の「ファンタァジェン」、小比類巻かほるの「I'm Here」等の名盤を生み出した時期でもありました。

しかし87年10月の前作リリースから「HORIZON」リリースの88年6月までは1年も経っていない短いスパンというリリースの中で、ロンドン録音を敢行、想像以上に過密なスケジュールで集中して作り上げた感のあるアルバムです。そしてその制作面での相棒として白羽の矢が立ったのが清水靖晃でした。
マライアプロジェクトでの前衛的な作風からジャズ的なアプローチ、CM音楽シーンへの進出、80年代後半からは欧州へと拠点を移して「SUBLIMINAL」「DEMENTOS」「ADUNA」と無国籍ダンスポップな3部作をリリースする新境地を見せていた清水を迎えて、兎にも角にも緻密な音作りに励んだ作品というわけです。

稀代の音楽家兼プレイヤーがタッグを組んで、黎明期であったコンピューターミュージックに正面から向き合いながら、前作から本格的に息づいているアラビックポップな世界観にエレクトリックなサウンドスケープを懇切丁寧に作り上げるストイックな制作過程を考えると、やや内省的なイメージを感じます。
しかしながら、作り上げてきたクオリティは本物に疑いはなく、ますます自身の作風を深めることに成功した作品となったのではないかというのが、個人的な印象です。そして本作にはさらに外してはならないポイントがあるのですが、それは@junnoviさんにお任せしましょうw

@junnovi:
センセ、あえてある重要なポイントを残してくれてますねw 伝わってますよ、そのお気遣いw
土屋昌巳のアルバムではあるんだけど、私には何と言っても全曲の詞が杉林恭雄であることが重要なポイントになるこのアルバム。前作「Life in mirrors」では3曲、そのうち2曲(「Stay in heaven」「水の中のホテル」)を書いていたわけだけど、今作では全曲。何があったんだろう。
センセが前回紹介した福岡智彦の存在がここでも大きく影響しているんやろね。ここはQujilaの活動と重ねたいところ。
1986年10月1日に「たまご」、
1988年4月1日に「MIX」、
1988年6月22日にこの「HORIZON」、
1989年6月21日に「島の娘」が発売されている時期。そっかぁ~そうなんだぁ~って思ってしまう。

実際、ソニーのオーダーメイドファクトリーで実現された「MIX花カラスNEON」という素晴らしい企画では、事前申込者だけに特別に配布された「MIX花カラスNEON手帳」に福岡智彦が登場している。80年代後半の真ん中あたりで、福岡智彦を中心とした人的交流があったことは明らかやんね。

あと、「SOLO VOX」のブックレットでも触れていることで、世間的には一番最初に指摘すべきことなんだけど、清水靖晃との共同プロデュースとアレンジも特筆すべき点。グッとアラビャに歩を進めて孤高な独自路線を走っていく。そしてセンセが書いているのと重複するけど、
1986年10月1日にQujila「たまご」を小野誠彦と、
1987年7月1日に自身の1st「SUBLIMINAL」を、
1988年8月31日に自身の2nd「DEMENTOS」を発売する流れからすると、「うむ~渦中での制作やったんやなぁ。」と気づきます。清水靖晃ってこのアルバムでもサックスを吹いてばかりでなくて、インスト以外の楽曲はすべてプログラミングしてたりで、マルチぶりを発揮してる。サックス吹かずにプログラミングだけしてる曲まである。「たまご」といい「HORIZON」といい独特な雰囲気を持った作品に仕上がっているけど、そこはやはり清水靖晃の個性が反映されているんだろうなぁと思う。特にポップじゃないところ、安易にポップさに逃げないところ、音楽が全体で「ギジュ!ギジュ!」っていってるところが清水靖晃の音の特色なんだと思う。何か「ギジュギジュ」って言ってない、清水靖晃の当時の音楽って?
そしてさらにはCDの盤面の星座図を散りばめたデザイン。1988年当時、CDの盤面にもアルバム毎に異なるデザインを施すようになり、それまでのCBSソニーやEpicソニーや周辺レーベルは赤(洋楽)、黄色(邦楽)、緑(雅楽・ニューエイジ)、青(クラシック)という決まったデザインと色を頑なに守り続けてきたのだけど、それを丁度この頃から解放。そしていきなり秀逸な盤面が登場したという感じ。CDジャーナルという音楽雑誌が、当時このアルバムについてこのCDデザインについて褒めていたのを今でも覚えている。ああ、今は当時の記事をインターネットで検索したら無料で見られるんやね。「・・・(中略)・・・天球図をデザインしたレーベルが美しい。」ってある。そうそうこのレビュー覚えてる。すべてをここに貼り付けたら権利問題などに関係しそうだから、大切な部分だけ貼り付けてみたけど、このレビュー何度も読んだのを覚えてる。
だってCDジャーナルのレビュー部分は冊子をバラしてすべてファイルに残してたから。

このアルバムの位置づけについては、上記のCDジャーナルでも触れているんだけど、環境変化を行っている過程にあるということ。そういった中での1つの試みが清水靖晃との共同プロデュースと、杉林恭雄の詞の起用なんだろうと思う。なので新境地の楽想や実験的な取り組みも随所に感じられるアルバムだと思うのです。

@tpopsreryo:
そう、あえて杉林恭雄とCD盤面の星座盤の話題はお任せいたしましたw おっしゃることはその通りで、やはり福岡智彦がキーパーソンなんですね。Qujilaをデビュー当時よりディレクションしていたのが福岡で、杉林の才能を買って太田裕美に「ランドリー」を提供させたりとか、前作への起用もそうですね。

そしてQujila2ndアルバムへの清水靖晃の起用と土屋の本作への起用がリンクしているというのも確かに偶然ではないでしょうね。図らずもここで杉林・清水・土屋が「MIX」されているという。88年は「MIX」の時代だった(うまいこと言ったつもりw)ということで、本日はすぐに各曲レビューに入りましょう。

@junnovi:
そういうインタラクティブな人的交流に陰の立役者がいたなんて、当時は想像もできなかった。OMF(オーダーメイドファクトリー)の「MIX」での特別付録小冊子「MIX花カラスNEON手帳」で福岡智彦本人が写真付きで出て来て、キリングタイムの企画BOX、そしてセンセからのコメントを受けて、ようやく私は立体的に理解できるようになったのでした。


1.「仮面の夜」

 作詞:杉林恭雄 作曲:土屋昌巳 編曲:土屋昌巳・清水靖晃

@tpopsreryo:
1曲目「仮面の夜」。前作の完成度もあり前のめりになった心を鎮めるかのようなゆったりした含蓄のあるビートのオープニングナンバーですが、前作と同様に各曲の最初の解説は@junnoviさんに任せたいと思います。それではどうぞ!

@junnovi:
明かりのない砂漠の夜に砂嵐が吹き荒れるさまを表現しているような幕開けのあと、曲の随所に登場する短いギターリフとシンセフレーズによって一気に国境を越えてアラビャに辿り着きます。このシンセフレーズ、当時のCDではとてもか細く頼りない音だったんだけど、今回のリマスターでしっかり聞こえるようになりましたね。そして杉林恭雄の謎めいた暗号のような歌詞が絡みついてくる。一層妖艶で不思議な気持ちになる。この曲どこか「Time Passenger」の1曲目「Mind Friction」と似ている気がするんだけど「Mind Friction」の方がスネアプレイがタイトでストイックで好き。
ベースが土屋昌巳自身のフレットレスベース。ベースフレーズは2つのパターンの繰り返しが多いのだけど、最後の音が上がるのと下がるのとがあって、下がる方ではグゥ~~ンとさらに下降するのがカッコイイ。で、やっぱり2周目のAメロのあとの割り込みがここでも使われてるね。しかも結構長め。
それにしても英語部分はサビっていうのかな? 大サビ? そこを女性だけに歌わせるという独特の曲構成。しかもわざわざ英訳までするという・・・。時代やわ〜。日本語を何でも英語にすればサマになるというこの時代の空気感。
最後にギターソロがでてくるけど、どこか野生動物が遠くで吠えているような感じがして、益々夜の荒涼とした雰囲気を醸し出してるね。それにしてもリマスターして、とても聴きやすくなったねぇ。

@tpopsreryo:
個人的にはこの曲、スタートしてはスゴく地味に始まったな〜と思ったのです当時は。前作が「STAY IN HEAVEN」だったじゃないですか。ああいうゴージャズなスタートじゃなくて、ズッシリと重たいスロースターターだなと。PINK「PSYCHO-DELICIOUS」の「Body & Soul」を彷彿させるという。
2周目Aメロのソロパートはもういつものことだから微笑にとどめるにしてw、この楽曲は土屋自身がベースを気持ちよく弾いているんですよね。まあPercyやMickを見てきているから、あそこまででなくてもそんな雰囲気は出てますが。4:37あたりのチョンワチョンワなフレーズはギターでもやってましたw
あとはやっぱり爆音スネア好きなんで、そこにやっぱり耳が行きますね。David Palmerですよ。YMO散開LIVEでおなじみの。元ABC、Person To Personの。おそらくハイハットとスネアだけだからPARTSというクレジットなんだけど、Nigel Walkerのおかげもあって、良い音してると思います。

@junnovi:
そういう裏方の人たちの功績にもちゃんと目を向けてるところが、センセの聴き方の細やかさだよね。そうそう。そのPARTSってあるから、どこまでのことなんだろうって思ってたんだけど、ハイハットとスネアだけなんだね。でも、やっぱり、どっか苦手やねんなぁ~この曲。

@tpopsreryo:
あと、コーラスですね。ロンドン録音なんで外国人コーラスはやっぱり英語が上手いから下世話にならないというか洋楽っぽいんだよね。そこがEVEとかAMAZONSとかと違うところでw

@junnovi:
あ~確かにコーラスはお上品w 洗練されてるというか落ち着いてる。まっとうな響き。時代のあだ花であることを良しとするコーラスグループとは違うよねw でも「サティスファクショーーーン!!!」とか、私は大好きやけど!www

@tpopsreryo:
まあそれやっちゃうと「せっせっせっ」になっちゃうからw この頃の含蓄さを考えるともうあの時代には戻れないよね・・と思っちゃう。

@junnovi:
♪ハ〜リアップ!って歌ってたよねw 「せっせっせっ」って今日も聴いてたんだけど、本当にどたばたせわしないよね~。大好きなんだけどw

@tpopsreryo:
あの曲は土屋もPercy Jonesも大概だけど、EVEの存在感がスゴいから。彼女らのコーラスで一気に下世話感が溢れ出すというw

@junnovi:
ゲラゲラ。おしりを横に振ってタンバリンをパンパン叩いてるようなしぐさを思い出すのは私だけではないと思うんですけど、アカン?www それってバービー杏子かな??

@tpopsreryo:
抑揚が激しいんですよ。ハァ〜リ↓アッ↑プ♪とか、ジャスタモ〜↑メント↓♪とかw 感情の浮き沈みが激しい躁鬱ですよ。早瀬優香子じゃないですよw

@junnovi:
躁鬱。早瀬優香子。ポリエステル。
狂気乱舞でお下劣コーラスの品のなさではAMAZONSって勝手に思ってたけど、EVEも全然負けてないことを今回の土屋昌巳の振り返りで思い知ったよ。だって私の中でEVEってなんでかホワイティーなイメージがあって、渡辺貞夫でもおほほなコーラスしてたから。てっきりお上品なお方々だと思い込んでおりましたが、いえいえどうしてw ま~「せっせっせっ」は今日は聴こうと思って聞いたんじゃなくて、操作を誤って聴いたのが本当なんだけど、余りのせわしなさに驚いたよ。聴くのに心の準備がいるって一体w

@tpopsreryo:
まああの曲はEVEもそうだけど、やっぱりパーシー(Percy Jones)のあのベースの入り方で時空が歪むのよw 音感が狂っちゃう。最初にずっこけるからね。態勢を最後まで立て直せないんですよ。で、嵐に巻き込まれながら洪水に溺れながら河口まで流されてしまって東シナ海へ放り出されて、沖縄で変態呪術師に出会うのw

@junnovi:
センセ、変態って、そこかしこに居るんですね!w それにしてもパーシーは桁違いの変態だったんですねw 時空が歪んで、最後は変態呪術師。そんなんアリ?w つまりEVEが踊り狂ってるけど、それもパーシーの掌の上で狂気乱舞なわけね。いやはや、怖いわ、パーシーw

@tpopsreryo:
沖縄の変態呪術師はミック(Mick Karn)だけどねw だってプウ〜ンとか言ってる呪術師。パーシーは魔術師、ミックは呪術師。これでどうでしょ?w

@junnovi:
イヤーッ!! どっちにも関わりたくな~い!!w 遠くで見とくくらいにしとく!! でもクセになるよねw 今日は魔術で自分を鍛え、明日は呪術であいつを陥れたんねん。
あと歌詞について。「仮面」ってある。もうこの単語ひとつ取ってみても、怪しくて、妖しくて、屈折した性的交渉の匂いを想起させる。杉林恭雄はなぜ「仮面」という語を使ったのだろう。何を表現しようとしていたのだろう。このアルバム全体が、爽やかさや若さなどが皆無、蒙昧さと夜の闇のような奥行きを喪失したような行き詰まり感や広がりのなさをあちこちで感じさせるのは、土屋の楽曲もあるし音色もあるだろうけど、杉林がここで作ろうとした世界の性格そのものだと思うのです。想像の羽根を広げて跳躍したり、言葉が表す「意味の世界」の遥か上の方を高く飛翔するそんな部分がないので、どこか閉塞感を押し付けられるように思えてならないのです。それが土屋昌巳が清水靖晃と杉林恭雄を起用した一番の理由であってそれは功を奏していると思っているのかも知れない。
私は今作の杉林恭雄の起用は喜ばしく、くじらの時とは違って、ぐっとアダルトで時間帯も夜遅くで、彼の表現の幅を知る好例だと思う。土屋昌巳の音楽とマッチしているのは上述のとおりで、大変貴重な作品群なのだけど、どこか風通しが悪くて息苦しい圧迫感があって気になるところです。夜の海で妖艶さは群を抜いており、芸術的な高みに至っていると思うのだけれど・・・。


2.「Forbidden Flowers」

 作詞:杉林恭雄 作曲:土屋昌巳 編曲:土屋昌巳・清水靖晃

@tpopsreryo:
2曲目「Forbidden Flowers」。うねるフレットレスベースと細かく刻むサックスを技巧的なギターが包むアラビックなこの楽曲。それでは解説を@junnoviさんお願いします!

@junnovi:
来たよ来たよこの曲、センセ! いきますけど宜しいですか?っていうか既に私に振ってるね。では参ります!
フレットレスベースが活躍する楽曲。さすがMick Karn。ここでも中音域まで力強く上ってくる力強さにワクワクせずにいられない。まるで一風堂のPercy Jonesのプレイが再現されたのかと思うほど。生き物のように何がしかの意図を持って動き回る。そこに、ひどく乾燥した部屋の中でコショウ粒を勢いよくつぶして粉々にしたようなスカーン!スパーン!と鳴るスネアの音が何とも心地よい。コショウ粒じゃなかったら、減らず口の小憎らしいガキの横っ面を引っぱたくような音にも聞こえる。知らんけど。歌のない前奏や間奏では特にその個性は際立ってて、スネアだけでなく、ギターもベースもシンセも短いスタッカートの音ばかりで、レガートなんてない。乾燥しすぎて何もかもがチリのように粉々になってるみたい。ガチャガチャうるさいくらい。清水靖晃のサックスの音もやはり短くて、水虫みたいにギジュギジュとした音色が何ともいやらしくて、曲をいよいよ妖しくさせている。この前奏のセッション、からくり人形を極限まで早く動かしてみたような感じがする。カタカタカタカタ・・・w あと、すべてがリズムを刻んでる。カッコイイですなぁ。そこに杉林恭雄の歌詞が来る。
そうでなくても彼の書く詞は短くて不可思議な字句が多いのに、この曲では一層短く区切られ、あーしないでこーしないでとストレートにたたみかけてくる。
Bメロの「♪光が~瞬き~大きな~男が~」の前あたりからようやく多少長めのパッセージが出てくる。でもそこは自分にとっては、次への助走部分。このあとまさに独創的な個所が登場する。「♪あなたを愛してゆくだろう」のあたり。マッサージに行ってツボを押さえられて思わず体がのけ反る時の感覚を想起させるほどのベースフレーズが登場する。書道で言えば筆の裏側で向こう側の線を書く時の感覚。山登りなら稜線沿いに峻険な岩場を渡るような感じ。なんとも気持ちよく、実力を試される修羅場のようなところ。なので不安定な傾きを感じる響きもあって、それもまた厳しい稜線をトラバースするようなベースラインを際立たせる役割を果たしてる気がします。
曲の終わりの鋭い刃物のようなギターソロは中々の切れ味。乱暴というか凶暴さすら感じるほど。
この曲は、曲の本丸部分に見せ場を持ってきているので、楽曲の規模が小さいかも知れないけれど、もったいぶったソロなどがない分私はコンパクトで無駄がなくて良いと思う。私の大変重要でお気に入りな楽曲です。

@tpopsreryo:
そう、この乾いた感じ。これはスネアの音1つからも感じますね。スカーンッというアレ。前曲が爆音だっただけにその軽さ目立っているんだけど、極力短い音を散りばめたAパートと、のっぺりとしたサックスフレーズで塗り固められたBパートのコントラストで成り立っているような楽曲です。
短いブブブブッっていうサックスはオケに馴染んでいるから清水だと思うんだけど、Bパートののっぺりサックスは本田雅人か。なぜかこの楽曲だけ本田雅人が参加しているのですが、これは秋本奈緒美のサポートでデビューしたきっかけで清水が連れてきたのかな。清水と秋本は同じビーイング出身なので。


そして当然ながらMick Karnのベースは言わずもがなで、このいつも不安になるようなゾワゾワしたベースフレーズが、思いの外アラビックフレーズにハマっていて、相性の良さを見せつけてくれます。そしてサビのコーラスでは福岡ユタカ登場。外人女性コーラスとは違いますね。上品さは、ないw
それとやっぱり言わずにはいられない2周目Aパート後のソロ、もう全曲あるんじゃないかっていうくらい定型化しているのですが、そのソロフレーズがどうにもこうにもカッコ良いので許せてしまいます。この曲のフレージングも美味。サビの裏で入るピキーンッというギターハーモニクスも美しいです。

@junnovi:
そう。そこね!2周目のAパートの後のやつ。もうね、定番やねw なんかさ、益々部屋の中の乾燥度が高まってない?スパーン!! スカーン!!

@tpopsreryo:
音がね、チャラーン!とかピキーン!とか多いよねw

@junnovi:
センセは短いブブブブって表現してるけど、何かさこの曲のそこのサックス、牛乳パックに思いっきり切り落としの肉をギュウギュウ押し込んでるような感じがするの私だけ? そうそうなんでかサックス奏者プロデュース&アレンジしてるのに、別の人を呼んでるんよね。不思議やんね。

@tpopsreryo:
そうなのよ、唐突に本田雅人。まだ若きし頃の本田なので客演が多かった頃ね、T-スクエア加入前の。推測だけどBパートののっぺりサックスで重厚な壁を作るために呼んだんかなあと思うね。

@junnovi:
秋本奈緒美、好きやったわ~。会いたいわ~。睨まれたいわ~。
そうそう結構このアルバム、福岡ユタカが出てるんよね。野趣性はPINKのそれよりはかなり低いと思うんだけど、1曲目の洗練された英語のコーラスに比べたら、そりゃもうやっぱりもうw


3.「Horizon」

 作詞:杉林恭雄 作曲:土屋昌巳 編曲:土屋昌巳・清水靖晃

@tpopsreryo:
3曲目「Horizon」。どっしりしたリズムをしっかりしたメロディで歌い上げるタイトルチューンです。これはどのような解説をされますでしょうか?@junnoviさんお願いします。

@junnovi:
前曲がとても趣向を凝らした楽曲だっただけに、どうしてもおとなしく聞こえてしまう曲。おとなしめのドラムのフィルインに始まって、曲全体で終始流れている行ったり来たりする4音から成るシンセフレーズが私にはどうも薄味で、余り魅力を感じなくて余り好きになれないんです。
広大な砂漠の中を歩けども歩けども一向に景色が変わらない遠い道のりを歩き続ける様を表しているようで、切なくなるんです。
2番に入る前のサックスソロがゆったりと時にか細くアラビャ風な夜の雰囲気を見事に湛えていたりする。弱々しく枯れた音色を響かせるヴィオラにしても、ギターの3度和音のフレーズも独特でこだわりを感じるのだけれど、どこかいささか唐突さを拭えない。どうしてこの曲がアルバムタイトルになっているのかが分かりかねていて、私は制作者の意図を汲み取り切れていないのかも知れない。
でも、うん~、何て言うか、どこか曲の性格がハッキリしてなくて、あんましやなぁ。

@tpopsreryo:
タイトルチューンなのに煮え切らないというか地味なんですよね。しかしながらメロディはしっかりしていて普通に歌モノになっているんですよね。しかしどうしても土屋サウンドはどこかキテレツでないとという先入観があるものだから、質は高くてもこういう楽曲では満足できなくなっているのかも。
2周目に入る前のサックスに聴こえるフレーズはGavin Wrightのヴィオラですね。この曲サックスパートないんですよ。3曲連続の2周目Aパート後のソロでも弾いていますけど、音色変えながらここでは彼は大活躍しています。清水はプログラミングに徹しているんですよね・・・不気味ですw
サウンドイメージとして比較的アナログチックに感じさせるのは清水一登の存在ですね。前作に引き続き影の相棒となっている彼のパートもなんとなくわかってきました。ここではアコーディオン。このプレイが砂漠を彷徨うこの楽曲のイメージを増幅させています。ただ、やはりまあ地味ですよねw

@junnovi:
言ってくださいました、センセ。そうやねん。この人は、どういう立ち位置でこの曲に臨んだのだろうって。まぁ何が何でもすべての曲に自分のサックスを入れなくても良いとは思うんだけど、サックスって楽器はギター・ベース・シンセ・ドラムスのその次に来るくらいの存在だから、是非しゃしゃり出てほしいんだけど。もっとギジュギジュして身もだえるような音が聴きたいのですw 黙々とプログラミングしてるって、なんか、不気味w

@tpopsreryo:
まあ、彼はサックスプレイヤーであると共にサウンドメイカーでもあるわけなので、特にサックスは自身の得意な楽器の一部という捉え方しかしていないのではないかと。だから本作ではプログラミングで貢献していると思うんですよね。特にマッキントッシュの画面とにらめっこしてw


4.「風と砂と水と」

 作曲:土屋昌巳 編曲:土屋昌巳・清水靖晃

@tpopsreryo:
4曲目「風と砂と水と」。もはやお馴染みとなりつつあるアンビエントなインストゥルメンタルの小品ですね。幻想的な響きを備えたこの楽曲の解説もまずは@junnoviにお任せしましょう。

@junnovi:
雅楽の要素を取り入れたような曲。そこはやっぱり仙波清彦が活躍してるんだろうね。楽譜に落とし込めないようなリズムで色んな音を鳴らしている。野趣感に満ちた音のギターが何とも茫洋で不毛な大地を思わせるうえに、シンセの不穏な響きがあちこちに響いて、さすが得意とする引き出しを今回ここで開きましたかという印象。即興的要素が強く感じられるので、初めて聴く人はたいそう驚くと思う。1:05ぐらいから、土屋のギターが3度の和音を同じ音程とリズムで鳴らてるんだけど、晩夏の木立の陰の奥から聞こえてくるひぐらしのようで、自然に同化していくように聞こえてしまう。ただね、曲自体は「Life in Mirrors」の「Lapis」の方が私は旋律がハッキリしていて好き。
1:50あたり(他にも何か所か怪しいところがあるんだけど)、1/4拍くらいリズムが飛んでいるのが昔から気になるんだけど、あれは何でしょうね。

@tpopsreryo:
仙波清彦の参加によって、全体として中近東ワールドな本作にあって唯一和の心を感じさせる楽曲ですよね。やはりね、シンセの入り方が絶品ですよ。こういう和音、白玉のパッドを味わい深く入れてくるサウンドデザインは好きなんですよ。と思いきやシンセはBANANA。やはり貴方でしたかw
ギターもどこか琵琶みたいなイメージで聴いていたのですが、リズムが飛んでいるというのは余り気にならなかったですね。ソロパートがかなり生々しいのでそのように聴こえてしまう部分があるのかも。個人的にはやはり吸い込まれそうなシンセパッドに尽きますね。幻想的な演出にも一役買っています。

@junnovi:
またやっぱり今回もBANANA出てきましたね!w しゅわ~~~と一気に霧がかるっていうか、どういう動機でこういう不穏な響きを持ってこようとするんでしょうね。才能としか言いようがないね。その一気に霧がかるところ、すごく電気を使ってるって思うのは私だけ? 大量電気消費の音楽、大好き!w

@tpopsreryo:
スゴくトリッキーなサウンドを得意としていながら、井上陽水や安全地帯で見せてくるような気持ちの良いシンセパッドのセンスも併せ持っているのが彼の天賦の才能たる所以ですよね。やはり80年代を代表する最重要のシンセプレイヤーの1人ですよ。

@junnovi:
そういう意味では土屋昌巳のアルバムでBANANAが随所に登場してるってことによって評価が上がってしまうというのはあると言えるのでしょうね。えっ、なにこの音、この演奏、と思ったら結構な頻度でBANANAだったりすんです。センセもそういうことが言いたいのでしょ?

@tpopsreryo:
そうそう、その通り。土屋に限らず、80'sの変なシンセと言ったら彼。美しいシンセも実は彼。でも弾いている姿は人間味があるのかないのかわからないw というつかみどころのなさが彼らしいのです。

@junnovi:
あと、この曲を聴くと思い出すのが、鈴木トオル「砂漠の熱帯魚」に収録されている「ひぐらし」まるでというインスト曲。日向大介によるシンクラヴィアで、臨場感たっぷりの長いトーンや振動する音が、まるで音の表面張力の限界を試しているような曲でした。あの膨張感を強く感じる音と、この曲とでは全く個性が異なるのに、どうしてか連想してしまう。たぶん、0:33から始まる白く霞んだ音のシャワーが、夏の盛りの蝉しぐれの、あの、何もかもが蝉の鳴き声に溶けていき、辺りが狂気の白一色の世界になっていくような、そんなところに放り込まれたのに似ているからかも知れないけど・・・。


5.「ハチドリの夢」

 作詞:杉林恭雄 作曲:土屋昌巳 編曲:土屋昌巳・清水靖晃

@tpopsreryo:
5曲目「ハチドリの夢」。マイナー調のアラビックポップが続いた後での清涼感を感じるミディアムナンバー。比較的ポップで聴きやすい印象のあるこの楽曲の解説もまず@junnoviさんから。お願いします!

@junnovi:
オープニングのピアノによる独特のコードのアルペジオ、そこにフクロウの鳴き声みたいな、「フゥッ」「フゥ」というフグみたいな音が入り込んだ、アコーディオンとサックスの合奏で始まる、何ともまろみのある曲。何か今から紙芝居が始まるみたい。Aメロもメロディにうま味があって、思わず一緒に歌ってしまう曲。歌謡曲寄りとも言えるけど、私はこんなメロディアスな曲が好き。こういうタイプの曲も極めて安定して書けるのがさすがだと思います。また、Bメロでの広がりも情緒的で、サビになるといよいよ馨しくて哀しい香華に満ち満ちています。2番への間奏はサックスとギターによる小規模なものではあるけれど、この組み合わせこそ土屋昌巳と清水靖晃の二人が「HORIZON」を通じて表現したいスタイルなんだろうなと思います。
あとやっぱり2周目のBメロ前の挿入が登場。ここはドラムスのたった3つの音で「改ページ」が行われ、それまでのいささかメランコリックなトーンから、アコースティック・ギターのソロに導かれて、急に曲に動きが出てくるのが何とも美しく素晴らしい。
あと、この曲でどうしても触れたいのは、スネアの打つタイミング。アルバムを通じて登場する1.5拍のスネアは、ここでもその魅力を存分に発揮してる。少しだけ前のめりになるのが、曲に“動き”が加わって、どこかワルツのようでもあり、リズミカルでオリエンタルな踊りも連想させるので、大変重要なファクターだと思う。
あともうひとつ。エンディングは「一日千夜」とは逆で、ギターソロからサックスのソロにバトンタッチ。そこに終わらず女性のヴォーカリーズ、サックスが加わっての共演、最後はシンセの哀しい響きで締めくくられるあたり、とても長いソロの連続で、このアルバムでは珍しいと思うのだけど、独特の展開で美しく儚い夢であるんだという気持ちを抱かせます。

@tpopsreryo:
この楽曲は長年大好きですね。「まろみのある曲」とはものすごくしっくりする例えで、本作では前半(A面)と後半(B面)の最後にこうした「まろみ」曲を持ってきてるんだけど、その仕上がりが実に美しいのです。AメロからBメロ、サビにかけて流麗なメロディラインは隙がなく、非の打ち所がありません。
個人的には2周目のAメロのバックで小さく聴こえる短い音のタッタッタというシンセが人間ぽくなくて、かつ控えめな感じが雅で好きですね。そして、場面転換の2周目Aメロ後のアコギなギターソロ。これは名フレーズですね。一瞬の嵐を思わせるシリアスな場面から、カラッと晴れ間が差す転調のBメロ。
そして大団円のラストへと向かっていくわけですが、きらびやかなシンセ大活躍で嬉しいです。ただし「まろみ」を生み出す影の立役者としてはこの楽曲のベースプレイヤーAndy Brown。玉置浩二の初ソロアルバム「All I Do」に参加していますから、BANANA人脈ですね。味のあるグリスダウンを聴かせますね。
そして本作では随所で登場するパーカッションDanny Cummingsはペンギンカフェオーケストラ。Gevin Wrightと共に参加ですね。リマスターでは本当にパーカッションが良く聴こえるんですよ。やはりパーカッションは楽曲に動きを与えてくれます。こうした海外ゲスト陣の貢献もやはり思い知らされますね。

まあ何にしても流石にここでは清水靖晃もプログラミングでは飽き足らず、サックスでしっかり活躍しています。後半のNaomi Osborneのボイスを入れてくる部分も大団円の盛り上げという点ではグッドアイデアだと思いますし、まさに隙がない。名曲ですね。間違いありません。

@junnovi:
今回、この曲のコメントをするにあたって、「STAY IN HEAVEN」「一日千夜」と同等の心を込めて言葉を紡いだのですが、今回のセンセのコメントは本当に微に入り細に入りの丁寧な説明が施されていて、頭が下がります。曲の素晴らしさを知るに十分なコメントだと思います。ありがと。
哀切感というものは、土屋昌巳の楽曲の中では珍しいものではないでしょうか。それを表現するにあたってこれだけの人たちが有機的に結びついて作り出した楽曲。A面の最後、まろみのある余韻を残して終わることに、心打たれます。

@tpopsreryo:
「まろみ」は今回のキーワードかもしれませんね。哀切感も言い得て妙で、特に最後の大団円はこれでもかと盛り上げてきて、もう土屋何があったの?キュンキュン!って感じですよねw そんな情感豊かに歌い上げる土屋の後ろで、仏頂面で演奏したりマックとにらめっこなW清水(注:清水靖晃&清水一登)という構図w

@junnovi:
仏頂面のW清水って! ゲラゲラ。
「SUBLIMINAL」のジャケットの、どっかのエリートサラリーマンかと思うくらいの真面目で地味な顔立ちやのに背中に羽生えてるよね。どうせなら志村けんとか加藤茶のコントみたくチュチュ着たら良いのにw 清水靖晃って良く分からない。1字目と3字目の漢字が似てる。
一筋縄ではいかない雰囲気を出しているけど、それって何のため? 素直な表現が幼稚であるとか安直であるとか、恥ずかしいというのって違うと思うし。決して批判しているのではないんです。単に一筋縄ではいかないことが自分のしたいことだとか、性に合っているということなんやろうか? 屈折した音楽表現、屈折した文学作品、屈折した絵画表現、屈折した会話と曲解、屈折した愛情表現、屈折した政治思想、屈折した・・・。それ相応にそういった領域は、どのジャンルにおいてもあるのだろうけど。昔はそういった難しい展開を私は好んで求めていたし、だから彼の名前とかも知っていた。年を取って、色んなことに「飽き」が出てきたりめんどくさくなったり(そうでなくても人生はめんどくさいことが山積している!)、老化で目が見えにくくなったりで、「もうどうでもいいや」ってなってる自分を擁護する訳ではないんだけどね。


6.「Silhouette」

 作詞:杉林恭雄 作曲:土屋昌巳 編曲:土屋昌巳・清水靖晃

@tpopsreryo:
6曲目「Silhouette」。アルバム後半のスタートを飾るファンタジー感覚溢れるゴージャスなサウンドデザインが施されたバラード。ギラギラしたシンセがフィーチャーされたこのナンバーは@junnoviにしっかり語っていただきましょう。

@junnovi:
はい、しっかり振って下さったので、ここは比喩につぐ比喩で何言ってるか分からないくらい内容のないコメントをしたいと思いますw
いよいよB面。このアルバムはどちらかと言うとB面の方が重要。その1曲目にあたるのがこの曲。一気に本丸を出してくる。
ここは、18世紀のヴェルサイユ宮殿なのか、秦の阿房宮なのか、オスマントルコのイスタンブールなのか、東西交易の要衝地イスファハーンなのかサマルカンドなのか、カスティリオーネの円明園なのか、随所に仙波清彦の和風パーカッションと、黄金の輝きを表現した様なシンセリフが延々と響いて、今自分はどこにいるのか分からなくなる。

まぁとにかく、すごく高貴な大物が夜の宴会のために、付き人を何人も使って絢爛豪華に着飾って、いよいよ会場に向かって歩くさまを音で表現しているよう。黄金とダイヤを星屑のように体中にちりばめて、至上の富と権力の象徴を表しているよう。金属的なシンセ音は、歩くたびに、振り返るたびに、ジャカジャカと黄金同士が当たってこすれて豪奢な音を立てるのを表現しているみたい。あと「●●さまのおな~りぃ~」みたいな登場ソングみたく、しつこく太く鳴る5音から成るシンセフレーズは、通路の左右にひれ伏す平民が高貴な人物を崇め奉るために繰り返し発せられる本当は一切気持がこもっていない賛辞のよう。まさにこのしつこく存在感のある5つの音こそが清水靖晃が表現したかったことなんでしょうねぇ。あと中低音の「ア〜〜〜〜」というコーラスもマントラのようで雰囲気たっぷり。
とにかく、ここまで表象的な至上の絢爛さをまざまざと一度聴いたら中々体から抜けてくれず、感心するしかない。見せつけるだけ見せつけられたら、やがてその大人物は全身にまとった黄金の装飾物の音をジャカジャカと立てながら私を通り過ぎて遠のいて行き、あたりの空気は平静を取り戻し、私の好きな次の曲に繋がっていく。
とまあ、こんな感じです。楽曲と同様、デコラティブになりました。内容は希薄ですけどね!w

@tpopsreryo:
デコラティブ!まさにそうですね。豪華絢爛なシンセの装飾ぶりはまさにイメージ通りで、そのイメージは(だいぶ誇張はあるけどw)解説にあったそのものだと思う。でも歌詞はそんなことは一切説明していないというw
そんなゴージャスなサウンドなんですが、メタリックなシンセと仙波の金物がブレンドされていますよね。まあこのシンセの分厚さは何なんだと思ったら、シンセサイザー:BA・NA・NAの文字。またか!どの曲でも何かしらの爪痕を残していくBANANA。恐るべしセンスです。
そして主役の土屋ときたら、あのお得意の2周目(略 はどこへ行ったのかというくらい、ここではどちらかというとボーカリストに専念していますね。最初の「新しい〜♪」の「あ」の低音からグッときます。ただ惜しむらくは楽曲が単調なので物足らなさを残して次へ行ってしまうのです。

@junnovi:
BANANAって今回の4曲目でもコメントをお互いに残してるけど、その表現の幅が本当に広いよね。立って叩くドラムな「キ・ツ・イ」玉置浩二でむち打ちから始めてみたり、こんなメタリックなのもあれば、小川美潮Epic三部作でも変幻自在な演奏をしてたし、スゴイよねホントに。
確かにセンセの言う通り、この曲、ぺったらいわ。だから1回聴いたら10日くらいはもう聴かんでもええわって感じになるw ま~なんしか、そんなに大奥の主みたいなのが、ガッシャガッシャ言わせて何べんも歩かれたら「こっちはたまったもんじゃないわ、そんな暇ちゃうねんから!」って感じです。

@tpopsreryo:
だから歌詞はそんな世界観違うってw もっとこう、エロい感じのアレみたいだから。でも聴き手のイメージってそんなもんだよね。だから音楽って面白いんだと思うよw

@junnovi:
なんかね、ホンマに杉林恭雄の詞が好きなんやけど、この曲については、今気が付いたんだけど、全く詞が入ってきてなかったわ、今日の今日まで! ビックリしたわ!!なんや。杉林恭雄 vs 清水・BANANA・仙波。清水勢の圧勝やわ。驚いたわ。
改めて聴いてみると、かなり至近距離にいる恋する二人の、衝動に揺さぶられるように四肢が動く性的営みを前にして戸惑い、恐れてしまう心の震えや痛みを、包み込むような吐息でなぐさめ癒す静かな姿。頭の3倍くらいある高さの豪奢な冠を頭の上にのせて、わざと音を立てながら通り過ぎる様とは、大きくかけ離れているわw 言葉を何ひとつ発さなくても、傲岸さが全身から放たれまくる勘違いの性悪成金貴族の歌とは違いましたw ふたつの真面目な愛情が向かい合い、お互いを試すように様子を窺い、そこで導き出された答えに従うまでの道のりを描いているようですね。


7.「冬のバラ」

 作詞:杉林恭雄 作曲:土屋昌巳 編曲:土屋昌巳・清水靖晃

@tpopsreryo:
7曲目「冬のバラ」。細かいテクニックが堪能できるギターワークと相変わらずのMick Karnのブヨブヨベースとの絡みが熟練の域に達したアラビアンロック。それでは@junnovi解説をどうぞ。

@junnovi:
はい、きました「冬のバラ」。参りましょう!
私にとってはこの曲が一番のハイライト。これは2005年に友達に配布した『Sound Junpo vol.1』(注:@junnoviさん監修のオムニバスCD-R)にも取り上げました。土屋昌巳のEpic三部作から1曲選べと言われてこの曲を選ぶ人は中々少ないと思うのだけど、発売当時からこの曲は大変好きなのです。
軽くなったドラムスも「Forbidden Flowers」と同じく胡椒の粒を勢いよく叩き潰して粉々になった時のような音で好きなんですよね。あと曲全体で何べんもしつこいくらいに登場する比較的高い音程の面倒臭そうに周囲の人を払いのけるオケヒットも、安直に「ジャン!」と鳴らすだけでなく、複数の音を織り交ぜた工夫がみられて自分のお気に入りの音。他にも、右寄りに「コロロ!」とオケヒットと交互に出てくる木琴みたいな音も堪らないし、オープニングでもオケヒットの後ろでも、合間を縫ってしっかり鳴っているパーカッションも好き。ベースもブィブィ鳴っていて、清水靖晃のサックスがなくてもやっぱりものすごく曲全体が水虫みたいに「ギジュギジュ」いってて、胸の奥辺りがぐっと締め付けられる感じがする。それと曲の始まりからAメロにかけて延々へんてこなフレーズを延々奏でる土屋昌巳のギターがなんとも異国ムード全開で、「レッドスネーク、カモーン!」を見ているよう。ってこれは東京コミックショーやねw

そして杉林恭雄の歌詞もいつになく艶めかしく、女体への過剰な視線の落とし込みが、いよいよ妖しく香華に満ちています。
あと、どうしても触れたいのが、ジャン!なオケヒットと木琴コロロ!との登場するタイミングが規則的なようで、結構不規則なこと。はじめの方はやはり節度をもって規則的に登場するのだけど、後半になって曲が盛り上がってくると、どんどんと乱発してくるのがたまらない。この増殖度合いは、角松敏生の「Lost my heart in the dark」のシンセベースの「ブーンブーン!」ってブーメランのように左右に振れながらクレッシェンドするのととても似てるw 角松のも最後になるとブーンブーン言いまくってて「うるさいっ!w」ってツッコミを入れたくなるほど。でもそこが大好きなんだけどね!wあと多分センセからはコメント入ると思うんだけど、エンディングのギター。
ということで何をとっても好きなとこしかないこの曲、残念なのが前曲「Silhouette」と繋がっているところ。ソロ演奏がないところはこの曲については全く気になりません。ソロで見せ場を設けるという手法を余り用いないところが、「HORIZON」というアルバムの特性だと思うのです。
それにしてもこの曲、コンピュータープログラミングやシンセサイザープログラミングでは3人、それとは別にBANANAがシンセサイザー。どんだけ機材を投入してるんだろって思います。ワクワクします。

@tpopsreryo:
そう、シンセサイザー結構大量投入しているんですよ。まあまたBANANAなんですがね。彼の白玉は結構多彩で、今回はサビ「やがて凍りつく〜♪」のシャキーンとしたものから、Aメロ最後「細くて白い道♪」のシャーッていうものまで、突き刺すようなパッドを演奏してますね。
木琴「コロロ・・」は松武秀樹のプログラミングと記憶しているのですが、オケヒットとのタイミングがDavid PalmerのドラミングとMick Karnのフレットレスベースと絡み合って、この楽曲特有のグルーヴを醸し出しています。この楽曲の強みはそこにあると思いますね。
で、お待ちかねの2周目Aメロ後のソロパートはヴィオラのソロでした。そしてラストでは今までリズムギターでキテレツフレーズを連発してきた土屋がここぞとばかりで首をもたげてきて、サスティナーで減衰音を長くしたギターフレーズを繰り出してきます。そして逆回転効果が出てくるわけですが・・・。
長年ずっとこの逆回転はギターにかかっていると思っていたのですが、どうやらヴィオラに聴こえてきました。ひょっとしたらGavin Wrightのヴィオラを逆回転にしたものかもしれません。推測ですけど。余り推測ばかり言うとMa*Toさんに突っ込まれますけどw 何にせよこの部分が個人的には好きなんですよ。

@junnovi:
バイオリンじゃなく、ヴィオラなんやねぇ。音の太さが確かなものとなり、人の声により近づいたような懐古的な音。逆回転ギターではなく、逆回転ヴィオラと。
ま~なんしか、何べん聴いたか分からん曲ですわ。こういうタイプって珍しいから余計に聴いてた。で最後の方になったら、ジャンジャン!を連発するもんやから「もうええって!」って突っ込んでたw

@tpopsreryo:
繰り返し嫌いだもんねw

@junnovi:
うん、大キライ。だから松岡(英明)の「CATCH」なんて怒り心頭に達するくらいw


あと2点。サビにあたる「♪やがて、凍りつくくちびる」からのベースプレイ。ここも「Forbidden Flower」の所でも触れたように、毛筆の裏側で向こう側の線を書く、峻険な山の稜線をなぞる、そんな峙つ感覚を再現してるのが、何とも好きなんです。また「♪やがて」の嘆息交じりのボーカルの重ね方もエモーショナルな不安定さがあって、儚い脆さを醸し出しているように思えるんです。
もう1点。杉林恭雄の歌詞について。この曲は前曲と違って、しっかり彼の言葉が私にも伝わってきていました。やはりこの曲も至近距離の夜の営みが表現されているのだけど、性行為を示唆しつつ、粘膜的なベチャベチャしたいやらしさが全くないところが、杉林恭雄の才能であり芸術的な高さだと思う。また土屋昌巳の楽曲にもとてもマッチしていると思います。


8.「Bird's Eye」

 作詞:杉林恭雄 作曲:土屋昌巳 編曲:土屋昌巳・清水靖晃

@tpopsreryo:
8曲目「Bird's Eye」。鳥の視点で歌う杉林恭雄の独特の世界観が楽しめるロックチューン。David Palmerのパワフルドラムも爽快なこの名曲を@junnoviに解説していただきましょう。

@junnovi:
名曲が続きます。オープニングの響きの強いギター、主張するベース、キレのいいドラム、そしてこの曲全体に登場するちょっと引きつった4つの音から成るシンセのテーマ(リフ?)。良い曲を予感させるものがあります。その勢いはAメロが始まっても維持され、自然な形にBメロに引き継がれます。
Aメロの終わりのフレーズ「♪空から~」の下がるところがギターの前奏のリフとリンクしてて好きですねぇ。やっぱり2周目のBメロ前にギターのちょっとしたプレイが入ってきます。Cメロと言っても良いんだろうけど「♪ゆるされぬ涙とぉ~」では、小休止の展開があって緩急をつけるあたりに、土屋昌巳の作曲作法に余裕を感じさせます。
ここでは福岡ユタカがコーラスで歌ってるんだけど、そんなに野趣性が感じられないね。曲の終わりのギターソロは中々熱い演奏。速弾きもあって盛り上がる。
あとは杉林恭雄の歌詞だけど、やはりサビの「だ~れも愛さなさいッ!だ~れも憎まないッ!」という表現は中々強烈。このアルバムの中で最も耳に入ってくるフレーズじゃないだろうかと思います。

@tpopsreryo:
この楽曲は本作の中では異色ですよね。異常なライブ感というか生々しさが伝わってきます。鳥の視線で滅びゆく街を見据えるディストピア感なんだけど、鳥の視線は比喩で、本当は爆撃機に乗っている飛行士の視線なんじゃないかと思ったり。空襲の歌なんじゃないかと。また推測ですが。
サウンド面ですが、これまで大活躍していたシンセは控えめにギター大活躍ですね。イントロのジャラ〜ンから不穏な雰囲気が炸裂していますし、ジャカジャカなリズムギターといいこれまでにないロックテイスト。確かに福岡ユタカのコーラスも大人しいはずですわ。土屋がロックやりたいんだから。
お得意の2周目Aメロ後のギターソロもここでは深みのある熟れ尽くした音色で印象的なフレーズを披露しています。個人的に気に入っているのはBメロのピアノとギターとシンセが交互に出てくるフレーズ。計算尽くされたフレーズの構築ぶりはもはや職人芸以外の何物でもないですね。
そしてこの楽曲のベースですよ。土屋本人が弾いているこのベース、スケジュールさえ合えばMick Karnに弾いてもらいたかったんじゃないかな。時代が許せばPercy Jonesに。フレージングが影響受けまくりで微笑ましいくらい。うねりまくり、漏らしまくりで実はこの楽曲のベース、本作では最も好きな部類です。

@junnovi:
ちゃんとした分析です。ありがとうございます。この曲は「ハチドリの夢」と対をなす曲と思ってるところがあって、静と動のような対。鳥を用いての静止飛行、空からの急降下・上昇。シンセとギター。動的なこの曲の良さはB面の別の意味でのハイライト。「冬のバラ」は好きな期間が長すぎて客観視できないw
センセが指摘するベースのフレージングは、リマスターによってより鮮明に伝わってきますね。曲の最初でも間奏でも、上下に動き、滲み、天に祈り、救いを求めるような演奏がここにはあるね。MickやPercyが演奏してたら、どうだったろうか。彼らに来て欲しかったんじゃなかったろうか。何という楽しくて優しい想像でしょう。
私は、この曲には音質がかなり固いし、セッションもカチッカチッとしていて甘ったるさのない力強さを感じるし、杉林恭雄の歌詞の「〜ない」という否定する言葉がその強さを強化していて、決然とした曲として受け止めてきました。前曲までのどこかファンタジックな甘美さとは別世界に思えて、発売当初からこの曲以降の3曲は一括りで余り好きではなかったんです。20年以上前、センセがこの曲を評価するのを触れた時も戸惑ったのを今でも覚えてるほど。けれど改めて聴いてみたら、ちゃんとしたいい曲で、好んで聴くようになった経緯のある曲です。それにしてもこの曲の杉林恭雄の歌詞は、いつにも増して象徴的で、一体何のことを指しているのか掴み損ねるね。センセの言うディストピアなんやろうか。

@tpopsreryo:
まあこのテイストの違いは理由がありまして、それはまた次の曲で。


9.「Too Many Tears」

 作詞:杉林恭雄 作曲:土屋昌巳 編曲:土屋昌巳・清水靖晃

@tpopsreryo:
9曲目「Too Many Tears」。タムでリズムパートを支配する一風変わった入り方をしながら後半にはグイグイと攻め込んでくる実はパワフルなロックナンバーのこの楽曲も@junnoviさんの解説で始まります。どうぞ!

@junnovi:
これは、ダメなんです。センセは分かるやんね、私がこの曲が苦手でアカンの。Tears for Fearsのあのヒットソングと同じです。繰り返しが多いんです。それも短いリズムパターンが延々と…。ツライんです。

とはいっても、しつこいリズムアンサンブルの後ろでは、ハーモニクスとかストリングス系の音とか色んなのが鳴っているし、Bメロの早口言葉の練習みたいなのの後に、キレのあるドラムが呼応するように入ってサビに突入するところは、このアルバムにしては珍しくストレートなロック的な表現で「オッ!?」と思ってしまう。
あと福岡ユタカのサビの部分でのコーラスは、言外で「ホンマに」♪崩れてゆけぇ~~~って聞こえてきたり、一筋縄ではいかない曲。あと、この曲も一部を英訳までしている箇所があるんだけど、そこからは急にロック調になって、生のドラムの音が冴える。これは「Life in Mirrors」では望めない展開。
エンディングのギターソロも長くはないけれど独特の内容で存在感あるよね。今回リマスターを聴き直すと、他の曲についても言えることなんだけど、違ったバランスに聞こえてくるので不思議。最初に書いた繰り返すリズムパターンもアクセントでありメリハリであるようにも思えてくるのです。

@tpopsreryo:
まずこの楽曲はリマスターで映えましたね。良くも悪くもこの楽曲の目玉は最初のタムのダンダンダダッ!ですから。その響きが生々しく聞こえるようになりました。ありがたいです。そういう意味では恩恵を被ったのはDavid Palmerのドラミング。サビ前のフィルインや中盤の疾走感のあるリズム感覚は絶品。
「夜の城よ〜♪」からの前述の疾走感と共にあるコーラスパートはまさしくこの楽曲のハイライトでもありますが、Naomi Osborneと後にSoul II Soulで活躍するR&BシンガーのCaron Wheelerの強烈な外国人コーラスに福岡ユタカが真正面から挑んでいく構図が楽しくて仕方がないです。
完成され尽くしたコーラスワークの中にいきなり柚子胡椒を打ち込まれたような異物感。身内で楽しく盛り上がっていたカラオケで、なぜか見ず知らずの他人がマイク持参で歌に加わってくるという構図に、一種の恥ずかしさを覚えるのです。でもこのコーラスパート、大好きなんですよw
そして前曲でも挙げたかった重要ポイントなんですが、前曲とこの楽曲の他曲と異なるライブ感はミキシングの影響です。本作は基本的に前作と同様にNigel Walkerがミックスしているのですが、「風と砂と水と」と、前述の2曲は土屋本人がミキシングしているのです。スマートなNigelと比べて土屋は肉感的。
そんなわけで「Bird's Eye」とこの「Too Many Tears」はサウンド的に浮いているわけですが、否定できないのはそのドライブ感も緻密な計算と技巧の上に成り立っているものだからなのです。だから楽曲自体が色褪せずにさらにリマスターでも映えてくる。これは土屋昌巳というアーティスト力の賜物ですね。

@junnovi:
これは大きく意見が分かれましたね。ここまで離れちゃうとw リマスターの結果かつてよりも落ち着きのある音だったり尖がったりした音はすべて一律にまとまりが生じたように思うんだけど、ま~何しかこの曲については入口で私はムリでその先がないという浅薄さw


10.「Diamond」

 作詞:杉林恭雄 作曲:土屋昌巳 編曲:土屋昌巳・清水靖晃

@tpopsreryo:
10曲目「Diamond」。アルバム最後を飾るのは美しくも荘厳なバラードソング。音像豊かなサウンドも魅力的なこのファンタジーワールドの終焉を飾る名曲の解説もまずは@junnoviさんにお願いしたいと思います。

@junnovi:
こういう開放的でハッピーでちょっと泣きが入ったようなポップなトーンのメロディは土屋昌巳の得意とするものなんだろうけど、「HORIZON」ではここで持ってきました。私にとっては前曲の苦行を経た先の安寧の地平の曲なので、その感覚が一層強まります。サビに数回出てくる「おまえ」という言葉も聴き手に語り掛けるようで効果的だと思う。美味しいメロディアスな曲を書けるのは、全く違うでぇ~ってセンセからは指摘を受けそうだけど、原田真二のように思うねん。メロディ自体にとても魅力のある曲が書ける人。
ただ、エンディングとしては「Life in Mirrors」と比べると澄み具合は高まっいるし、良い音楽を聴いたという満足感は決して低くはないんだけど、最後に清水靖晃のヘブンリーで瑞々しい音色のソプラノサックスが効果的に奏でられているんだけど、パラダイスなお祭りの「PLANET MIRRORS」と比べると、平和でおとなしめな終わり方に思えてしまう。

@tpopsreryo:
これは「ハチドリの夢」に続く「まろみ」曲だと思うんですよね。演奏陣がほぼ一緒なので。印象的なシンセボイスっぽいフレーズをイントロとラストに持ってくる構成は好きですね。Aメロ前の清水一登の十八番ビブラフォン入りのシンセフレーズも味わい深いです。サビの盛り上がりは本作随一でしょう。
確かにこれまでの土屋楽曲の中では珍しい涼やかなハッピーソングでありラブソングなわけですが、清水靖晃のソプラノサックスの貢献は大きいですね。これが矢口博康だともっと乾いたトリッキーな感じになるのですが、清水はこの楽器の繊細さも良く認識した上で美しい音を奏でていますね。浄化されます。
そして個人的に最も好きなポイントは、Aメロスタート直後の「映し出す面影〜♪」の直後のギターにかかる16分音符のディレイですね。非常に繊細で良いです。4回ぐらい出てきますよね。ラスト1回は例の2周目Aメロ後で、サックスソロのバックで鳴るあのディレイは絶品です。この楽曲はこれに尽きますね。

@junnovi:
どこか遠くの高みに召されるようなそんな感じがする。清澄さも加味して一層。ヘブンリー。あと、ギター。確かに余韻たっぷりやね。随所に遠くへと離れていく感じを抱かせる工夫がみられるってことやね。

@tpopsreryo:
なんか色々浄化されていった気持ちだったのね。80年代過剰サウンドからの浄化だったのかもしれない。大きな視点で言えば。そういう昭和に別れを告げるのに必要な浄化だったのかなあ。それほど美しさを感じたんですよね。

@junnovi:
サビの一気に花開く開放感溢れるメロディは、それ自体が備え持つ力をいかんなく発揮する魅力的な部分だ思います。前作に比べて個性がいささか強めになったこのアルバムも、こうやってようやく終焉を迎える。とりとめのなさもあるけれど、まだこれが最終解ではないので、当時の1つの答えなのでした。


〜エンディング〜

@tpopsreryo:
それでは「HORIZON」をまとめましょう。名盤の誉れ高いEPIC3部作の2枚目、サウンド面ではアクの強い清水靖晃、歌詞の世界観の点ではQujilaの杉林恭雄とタッグを組んで、濃厚な作品に仕上げてきました。スタートは地味ながらも後半に進むにつれて躍動感を増してくるスロースターター的な作品でした。
サックスにこだわらずプログラミングでそのセンスを発揮した清水靖晃の貢献度もさることながら、土屋の片腕として信頼度の高い清水一登のプレイも地味に本作に爪痕を残しましたね。もちろんBANANAはいつも通りしっかり印象的なサウンドを味付けしてくれましたが。
海外ゲスト陣もそれぞれ力量を発揮していましたが、結局は土屋昌巳本人の充実ぶりが最も収穫だったのかもしれません。ギタープレイには既に濃厚なテイストが加わり、歌唱には円熟味が増して貫禄が備わってきました。故にポップ性からは遠ざかりつつあり次作ではその傾向はより顕著になっていくのです。

@junnovi:
センセの簡潔なまとめの通りで、良く作られたアルバムだと思います。あとは杉林恭雄の起用。前作「Life in Mirrors」から登用されているけれど、すべての曲をとなると話が全く違ってくる。「HORIZON」の表現したかった世界観、妖艶なアラビャな不思議さは、手短な彼の詞において十分に聴き手に伝わったと思います。

@tpopsreryo:
そう、杉林恭雄の起用で、世界観は十分に伝わったのですが、余りに完成された様式美に聴き手も圧倒されてしまったのか、以降土屋昌巳のアーティスト性は孤高の存在になっていったように思います。触れ難い存在になったという印象ですね。なので作品自体は名盤なのです。

@junnovi:
CDジャーナルのコメントの通り、環境の変化を起こしつつ、こういったアルバムも残す。多忙極まりない時期のアルバム。CDの時代になったのにもかかわらず曲目が少ないままだけど、それがまた私のお気に入りになる理由だったりします。そしてセンセが指摘するように、どこか近寄りがたくなっていく姿が拘り抜いた果てに見える気がします。孤独な印象。決して嫌いなわけではないけれど、中々手を出して聴こうとしないアルバムが「HORIZON」であり、次作の「Time Passenger」です。

@tpopsreryo:
というわけで土屋昌巳SOLO VOX第4夜「HORIZON」のクロスレビューは終了です。次回はついに最終回、5thアルバム「Time Passenger」です。それでは今回もお疲れ様でした。

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