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#5【運動連鎖】股関節と足関節の連動を臨床に活かす。

今回は足首と股関節の連動について解説していきます。
臨床でも応用が効く内容ですので、是非参考にされてください。

1.股関節が内旋することの意義

股関節は広い可動域を持つ関節であり、それ故に可動域が狭くなると全身に悪影響が出てくるとても大事な関節です。ジョイントバイジョイント理論でも「動きの関節」に分類されているので股関節の本質は「動くこと」です。

股関節は三平面三軸上で動ける関節ですが、中でも内旋の可動域を僕は重視しています。何故かというと「骨頭被覆率」という考え方があるからです。

股関節 Thanks to @visiblebody

「骨頭被覆率」というのは、股関節を形成している大腿骨の骨頭が、同じく股関節を形成している骨盤の臼蓋にどれくらい覆われているかというのを示した指標です。骨頭被覆率が高いということは、臼蓋と骨頭がしっかりはまり込んでいるということです。しっかりはまり込んでいるということは、骨と骨で関節を支え会えるので安定しやすいとも言えます。

私は、骨で体を支えるのが大事だと考えています。骨で体重を支えられれば、余計な筋肉の緊張が少なくて済むからです。これは慢性痛を考える上で重要な視点です。いわゆる良い姿勢の条件は、体重を骨で支えられる姿勢だと思っています。

勘が鋭い方は気がついているかと思いますが、この骨頭被覆率は股関節が内旋するほど高まります。つまり立位など体を脚で支えるときには、股関節が内旋している方が骨で体を支えられるため、筋への負担が少なく楽に立てるということです。

2.股関節と足関節の連動はどうなっているのか

骨頭被覆率の話は一度置いておいて、運動連鎖という考え方があります。ある関節を動かすと隣接する別の関節も運動が連鎖して起こるという考え方です。

下肢の運動連鎖は足部から上方へ連鎖がつながる上行性運動連鎖と、骨盤から下方へ連鎖がつながる下行性運動連鎖の2つがあると言われています。そして、股関節の内旋は足関節の回内と関係があります。

股関節が内旋すれば足関節は回内し、逆に足関節が回内すれば股関節は内旋します。ということは、立位などで骨頭被覆率を高めようと思えば、足関節がしっかりと回内して立つ必要があるのです。足関節の回内がしっかりできれば、股関節は自然と内旋し余計な筋の緊張なく楽に立っていることができます。

チェックする方法は簡単です。患者さんを仰臥位にして、足関節を他動的に背屈させます。その際に股関節が内旋している様子が観察できればオッケーです。実際にやってみると足関節の背屈に連動して膝蓋骨が内を向くような動きが確認できるはずです。

しかし、中にはどれだけ足関節を背屈させても股関節がピクリとも動かない方もいます。これは運動連鎖が破綻してる状態ですので、何らかの介入が必要になってきます。

立位で腰が痛くなるという方はもちろんですが、他にも様々な不調に繋がっている可能性があります。体の状態をチェックする際に、この足関節と股関節の連動についてもチェックすると施術の方針に幅が広がります。

3.股関節と足関節の連動をつくる

足関節を背屈させても股関節が動かない方には2パターンがあると私は考えています。
①足関節に背屈可動域制限があり股関節まで運動が連鎖しない場合と②足関節がルーズ過ぎて股関節まで運動が連鎖しない場合です。

①足関節の背屈制限があるとき

こちらは、他動的に背屈させようとしてもしっかり背屈できないという状態です。こういう方はたいてい足部が内転しており、背屈させると親指側から背屈されるのが特徴です。足関節捻挫などの既往がある方が多い印象です。

足関節の回内のためには、親指側よりも小指側から背屈されるような動きが必要になってきます。こういう方は下腿後面から足底にかけての緊張が強く、距骨の前方変位が起こっている可能性が高いので、距骨を足関節に押し込むような施術をします。
距骨が足関節にしっかりはまると、背屈可動域が改善し、小指側から背屈する動きが可能になります。

足関節の可動域が伸びてくると、股関節が連動して内旋する様子が確認できるようになります。足関節の背屈(回内)に合わせて股関節が内旋するようになればオッケーです。

②足関節がルーズ過ぎるとき

足関節がルーズな方は、他動的に背屈させるとなんの抵抗もなく小指側から深く背屈できます。しかし股関節が動くことはありません。このような方は、下肢全体の外旋が強くなっているケースが多いです。

まず足関節を構成する下腿の外旋を取りたいので、私は大腿二頭筋をしっかりゆるめる施術をします。足関節がルーズな方はまず間違いなく大腿二頭筋に硬結があります。
大腿二頭筋をしっかり緩めた後、大腿二頭筋の停止部である腓骨頭のモビリゼーションを入れます。下腿を内旋する方向にモビリゼーションすることで下腿の内旋が出やすくなります。

もう一点重要なポイントとして、足部の伸筋支帯もゆるめる必要があると私は考えます。先程、足関節の回内のためには小趾側から背屈しなくてはならないと言いましたが、ある程度は親指側からの背屈も必要です。足関節がルーズな方は親指側からの背屈が全く無いので、そこを改善するために足部の伸筋支帯にもアプローチします。
前脛骨筋腱と内果の間、骨の上を皮膚を動かすようにグッグッと動かすと、多くの方は痛みを訴えます。痛いですが我慢してもらって動かしましょう。ここを緩めることで、親指側からの背屈が少しずつできるようになり、それに伴って足関節のルーズさも改善してくるのがわかるはずです。

足関節の動きが正常になってくれば、先程と同様に股関節の内旋が確認できるようになってきます。そうなれば施術は完了です。

以上が足関節と股関節の連動を利用した、股関節の可動域改善の施術です。
文章だけなのでわかりにくいところもあるかもしれませんが、私が自信を持ってオススメできる施術なので、イメージしながら読んでいただいて、是非現場でも試してほしいと思います。

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