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#8【腸脛靭帯炎】腸脛靭帯炎について復習しましょう。

マラソンシーズンが始まっていますね。この時期に増えるのが腸脛靭帯炎、いわゆるランナー膝の痛みで来院される方です。
というわけで腸脛靭帯炎について復習していきましょう。

今回は腸脛靭帯炎の病態、発生機序、評価について一般的な話をしていきます。


1.腸脛靭帯炎の病態

まずは腸脛靭帯を見てみましょう。

腸脛靭帯 Thanks to @visiblebody

青く色付けしているのが腸脛靭帯です。上半分に色がついていないのは、途中から筋肉になって骨盤に付着するからです。腸脛靭帯から大腿筋膜張筋や大殿筋になり骨盤に付着します。

腸脛靭帯炎とは、この靭帯と大腿骨外側上顆が膝の屈伸に際して擦れあい、摩擦を引き起こして炎症が起こったものを言います。腸脛靭帯と骨膜が直接刺激されるか、あるいは外側上顆直上の滑液包に炎症を生じて発症します。

腸脛靭帯炎の好発部位 Thanks to @visiblebody


2.腸脛靭帯炎の発生機序

ほとんどの場合、ランニングや自転車などのスポーツ活動によって発症します。繰り返し負荷がかかることで少しずつ進行してくるもので、いわゆるスポーツ障害に分類されます。

腸脛靭帯は大腿骨の外側を通って脛骨粗面外側のgardy結節という部位に付着します。膝を屈伸させた際、この腸脛靭帯は外側上顆の上を乗り越えるようにして外側上顆の前後に動きます。この乗り越える際に摩擦の負荷がかかります。

何度も繰り返し摩擦の負荷がかかったり、あるいは腸脛靭帯が緊張してピンと張ることで摩擦の負荷が大きくなったりすると、患部の炎症が起こりやすくなります。

また下肢のアライメントとも関係しています。O脚や外反扁平足との関連が示唆されています。腸脛靭帯は膝を外反方向に引っ張るような走行をしているので、外反のモーメントが強くなるようなアライメントは腸脛靭帯炎のリスクを高めます。

3.腸脛靭帯炎の評価

膝の痛みを訴える患者さんが来院された際は、痛む場所を特定するのが重要です。膝の前が痛いのか、内側が痛いのか、それとも外側なのか。腸脛靭帯炎は膝の外側の痛みです。膝の外側が痛いという訴えがあり、ランニングなどのスポーツ活動があったことがヒアリングできれば、腸脛靭帯炎を疑います。

また、痛みが出るタイミングは走り始めというよりも、少し走ってからということが多いです。それも腸脛靭帯炎かどうかを考える指標になります。

触診をして大腿骨外側上顆部分に圧痛が認められれば、腸脛靭帯炎を強く疑います。圧痛が出ない場合もありますので、そういう場合はグラスピングテストを実施します。グラスピングテストは、大腿骨外側上顆を強めに圧迫しながら膝を屈伸させます。その際、圧迫している大腿骨外側上顆部分に痛みが誘発されれば陽性です。

外側半月板損傷や外側側副靭帯滑液包炎などの可能性を除外するためにはMRIの撮影などが有効です。しかし、グラスピングテストで疼痛が再現されるのであれば、腸脛靭帯炎を第一選択として治療をしていいと思います。

以上です。
腸脛靭帯炎について一般的なことをまとめてみました。
次は具体的な施術の方針や、力学的な評価についても深掘りしていきます。

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