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#22【シンスプリント】脛骨過労性骨膜炎の施術について

前回の記事では、脛骨過労性骨膜炎の病態と原因、評価について紹介しました。

今回は実際に脛骨過労性骨膜炎を発症している選手への施術について紹介していきます。


1.原因となっている筋緊張の緩和

まずは、原因となっている筋の緊張を取らなくてはなりません。原因となる筋は、腓腹筋・ヒラメ筋・長趾屈筋・後脛骨筋などであることは、前回の記事で紹介しました。

1-1.安静が基本

とにもかくにも、安静が基本です。いくら施術で筋をゆるめても、また痛みを我慢しながらランニングなどをすると筋緊張はすぐに戻ってしまいます。
スポーツをしている選手にとって休めというのは酷なことかもしれませんが、安静に勝る薬はないかと思っています。私自身も、負荷をかけないことで脛骨過労性骨膜炎を治しました。

なるべく安静にする、もしくは運動量を減らすということが必要かと思います。
痛みを感じるほどの負荷を加えると、すぐに筋緊張は亢進してしまうと考えておきましょう。

1-2.下腿後面の筋への揉捻

下腿後面の筋をしっかり揉捻して緊張を取っていきましょう。
脛骨の際の炎症部分は圧痛が強い可能性があるので、触る際は注意しましょう。

多くの場合、下腿後面の外側の緊張がかなり強くなっているかと思います。長母趾屈筋が腓骨に付着しているポイントはとくに緊張が強く圧痛も強いので、強すぎない圧でしっかり動かしていきます。長母趾屈筋の走行をイメージしながらゆるめていきましょう。

長母趾屈筋 Thanks to @visiblebody

1-3.アキレス腱部の腱の滑走性の改善

アキレス腱部には、下腿後面の屈筋群や長・短腓骨筋の腱が走行しています。
多くの腱が走行しているところですので、この部分の腱の滑走性をしっかり改善していきます。

アキレス腱をつまみながら、足関節の底背屈を繰り返すことで、腱の滑走が促されます。強い痛みを伴うこともありますので、強さを確認しながら実施していきましょう。

2.脛骨過労性骨膜炎を発症しやすい要因

脛骨過労性骨膜炎を発症する原因はオーバーワークですが、アライメントの崩れなどが間接的に怪我の発生に関係していることがあります。
そうした要因はできるだけ取り除くべきですので、私が考える代表的なものを2つ紹介します。

2-1.足部アーチ機能の低下

足部のアーチとは何かについては今更説明するまでもないと思います。
足部アーチの機能低下は、脛骨過労性骨膜炎と密接に関係しています。

足部アーチを形成するのに一役買っているのが後脛骨筋です。下の画像を見ていただくと、後脛骨筋が内側アーチを下から支えるように付着しているのがわかると思います。

後脛骨筋 Thanks to @visiblebody

足部アーチの機能が低下すると、この後脛骨筋が過剰に伸張されるので、筋の疲労につながり筋緊張の亢進に繋がります。

2-2.股関節屈曲筋(腸腰筋)機能の低下

足関節底屈筋と股関節屈曲筋は密接に関係しています。
それは両筋の筋力発揮が互いにトレードオフの関係になっているのです。
詳しくはこちらの記事で一度書いてますので、御覧ください。

簡単に言えば、股関節屈曲筋の筋出力が低下すると、代わりに足関節底屈筋の筋出力が増大するということです。
つまり股関節屈曲筋の機能低下は、足関節底屈筋の過負荷に繋がり、脛骨過労性骨膜炎のリスクを増大させる可能性があります。

具体的には股関節の伸展可動域と屈曲時の腸腰筋の収縮機能を向上させる必要があります。
股関節の伸展可動域については低下している方が多い印象がありますので、腸腰筋や大腿前面の筋のストレッチングで可動域改善をするべきだと考えます。

3.正しい動作の獲得

最後に、アスレティックトレーナー的な視点になりますが、選手に対して正しい動作への自覚を促して、それを獲得してもらうというのが重要になってきます。
施術ではないですが、私が指導する内容をご紹介します。

3-1.ランニング時の接地方法

ランナーであればランニング中の接地方法を変えるのは一つの方法です。
特に前足部で接地するような走り方は、下腿後面の筋への負担が大きく脛骨過労性骨膜炎のリスクとなりますので注意が必要です。

レベルの高いランナーは前足部で接地するようなランニングフォームです。実際にレベルの高いマラソンランナーはほぼほぼ前足部接地でしょう。
しかしそれは相当な鍛錬を積んだ選手だからできる走り方です。

前足部接地が脛骨過労性骨膜炎の原因として考えられる場合は、踵接地かもしくはミッドフットと呼ばれる足裏全体で接地するように指導するべきです。

接地の仕方を変えるだけで、下腿後面への負荷はかなり減少します。場合によってはそれだけで治る可能性もあります。

3-2.カーフレイズで足関節底屈機能を評価

下腿三頭筋を鍛えるトレーニングに、つま先立ちをするカーフレイズという種目があります。
脛骨過労性骨膜炎の患者さんにつま先立ちをしてもらうと、上手くできないもしくは足部を真っ直ぐにしてつま先立ちができないことがあります。

カーフレイズ(つま先立ち)
カーフレイズ(つま先立ち)NG!

上の画像を見ていただければわかるように、正面から見て踵が見えてしまっているようなカーフレイズはNGです。これは小指側に強く重心をかけている証拠ですが、足関節の底屈に回外という余計な動きが入ってしまっています。

正面から見て踵が見えないようにカーフレイズができるよう練習してもらいましょう。これは母指の機能を高める狙いもあります。長母趾屈筋は後脛骨筋と同じような走行をしていますので、足部アーチを支える役割を担っているとも言えます。
長母趾屈筋がしっかり機能することで、足部アーチの機能を高め、脛骨過労性骨膜炎のリスクを減らす効果があります。

4.まとめ

以上、脛骨過労性骨膜炎への施術と運動指導でした。
マラソンシーズン真っ最中ですので、悩んでいる方も多いのではないかと思います。
是非施術の参考にされてください。

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