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窓の外に描く 5話「転入生」

 2学期になった。
バン先生が、教室の扉を開けると、ジニはやはり教室にはいなかった。できることはやったつもりだが、少し期待してしまったから悔しかった。

 新学期は、転入生がやってくる予定だった。2学期に転入して、翌年はオースオラリアに再び帰るらしい。家庭の事情らしいが、詳しくは聞かなかった。役所で手続きを終えたその子は、午後から教室にやってきた。
 名前はフィリックス。綺麗なブロンドの髪で、そばかすのある小柄な少年だった。
 「初めまして。担任のバンです。授業は美術を担当しているよ。よろしく。」
 「よろしくお願いします。フィリックスです。」
 「じゃあ、フィリックス、みんなに自己紹介してくれるか。」
 「あ、はい!オーストラリアから来ました。フィリックスです。ダンスが得意です。ちょっと言葉がわからない時は教えて下さい。よろしくお願いします。」
 元気な明るい子だった。すぐに友達もできそうだと思った。放課後の、掃除の時間になった頃には、女の子に囲まれていた。
 「フィリックス、転入早々で悪いが、美術準備室の掃除を頼むよ。これ、鍵。」
 「はーい、先生!わかりました。」
 女の子達に案内されて美術準備室へ行った。

 5分後、走って教室にフィリックスが戻って来た。
 「バン先生!美術準備室で、誰か寝てるし!起きない!」
 「寝てる?誰だろう。」
 美術準備室に走って行った。施錠していたはずなのに、誰なんだろう。

 準備室を明けると、寝ていたのは、ジニだった。
 「ジニ!学校に来てたのか!」
 「・・・・・・来てたのかって、何だよ。来いって言ったのはお前だろ。」
 「そうだ、そうだな。よく来たよ。」
 「別に。コーラ飲みに来ただけだし。・・・先生の後ろにいるそいつ、何?」
 「ああ、フィリックス。今日来たばっかりの、転入生のフィリックスだ。仲良くしてやってくれ。」
 「・・・・・・・。」
 ジニは黙っていたが、フィリックスは違った。
 「僕、フィリックス!よろしくね!君はジニって言うんだね。」「友達になってよ!」
 「・・・何でだよ。やだよ。」
 「だって!僕、学校に来てからまだ男の子とは誰とも喋ってない!君が初めて!」
 確かに、女の子達に囲まれて、男子は話しかける隙も無かったんだな、とバン先生は苦笑した。
 「わーい、やっと友達ができた。学校楽しくなりそうだな。SNSやってる?アカウント教えてよ。」
 フィリックスはそう言って、ジニと楽しそうに話して家に帰って行った。一方、ジニはコーラを飲み干してからバイクで帰った。


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