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縁 -えにし- いただきて


『2022年の私』アドベントカレンダーに参加しています。
12/3 石川 千里 noteは年一投稿ですね…
https://adventar.org/calendars/8058

 数年前に退職してからも付かず離れず連絡をくれる彼女の会社で新しいイベント開催があることを知ったのは6月だったと思う。
 今話題の『海ごみ問題』について考えるワークショップで、湘南での海岸フィールドワーク+カードゲーム体験会という構成。湘南=サザンオールスターズぐらいのイメージしか持たない自分にとっては、参加理由の8割は義理で、なんとなくかっこよさげな海岸の方が人も集まるのか…何はともあれ「湘南」に行った!という札がもらえる、ぐらいの気持ちでイベントチケットを購入していた。
 『海ごみ問題』といえば、海岸清掃(カッコよく言えば「ビーチクリーン」)が連想されるが、なぜまた貴重な週末休みにこの暑い中、わざわざ他人が捨てた汚いものを拾いに行かなければいけないのか…正気の沙汰とは思えない行動であり、海=海鮮丼!ぐらいな自分にとっては、マリンスポーツの「マ」の字も縁がない。 
 フィールドワークでは「マイクロプラスチック」を目の当たりにしながらも、自分が何かをしてどうにかなりそうな気配は皆無だった。ところが、カードゲーム時の説明に使われた一枚の写真でスイッチが入ってしまった。
「絶対イヤ…という自分の身体とのシンクロ」その瞬間「海岸掃除に行こう…湘南ではなく近所の沼津に」と明確な文字が脳に投影された。

ゴミ袋がお尻から出ているウミガメ

 実はこのイベントに参加するか否かと全く関わりのないところで不思議な現象が起こっていた。Facebookである。見ず知らずの(なんとなく人の良さそうな、食べることが好きそうな)顔のおじさんのアイコンがしばしば「知り合い候補」として表示され、その度に「知らない人」としてXボタンを押していたが、まるで回転寿司のネタのように何度となく現れる…「誰?これ?」と開いた時、海岸清掃を毎週されている方なのか、という認識だけが残っていた。
 湘南からの帰りポツポツ調べると、件の方はやはり毎週沼津で海岸清掃をされている『地球🌏をきれいにする会』の主催者の方だった。
 この「毎週開催」が鉄を熱いうちに打たせた。
 ワークショップの翌週、清掃場所をナビに入れ、海岸で掃除をしている人など数が知れてるから行けばなんとかなるだろう、という持ち前の行き当たりバッチリ感で身体が勝手に動いた(から出かけた)ことを今でも鮮明に覚えている。お邪魔すると、「うちは自由だから!一応、僕は7:00-10:00にいるけど、どの時間に来てもいいし途中で帰ってもいい。自分が好きな場所で好きなゴミ取って!トングと軍手、ゴミ袋はあるから!」
 なんて明確に自由!
 周りの参加されている方も本当に出入り自由な感じだった。ある意味、最大公約数をとれるスタイルであり、参加云々の連絡やりとりも不要。心の負担がほぼない。いうまでもなく、私の週末の最優先項目にこの「海岸清掃」が組み込まれることとなった。

牛臥海岸

 正直、沼津の牛臥海岸・島郷海岸というのは私にとって「海岸」として描かれる絵から程遠い。まず第一に砂が黒い…なぜ黒い…黒い砂浜…どういうこと???
 砂浜とは白く輝いているはずのものなのに…そして夥しいほどの藁ゴミ、流木、石、人工ゴミ…先週行った湘南とも全く勝手が違う。
 始めのうちは人工ゴミが気になり拾っていた。やがて、地形のせいか蓄積されていく自然ゴミの下にマイクロプラスチックが潜んでいることを発見する。ともかくゴッソリ取らなければ終わらない…終わるのか???これ…
 2回目の参加にして生意気にも会の代表の方に「重機買ってくださ〜い」と言い始めた。どう考えても終わらないでしょう。この量。

畑じゃなくって海岸ですよ。愛用道具たちと

 しかし、不思議なことは起こるもので、参加の翌週ぐらいから新しい方がまたポツリポツリ…そして海岸清掃にハマっていく…毎週小道具を開発して作業効率を研究される方が現れたり、会の記念撮影はドローン!というハイテク仕様だったり…そのうち沼津一斉清掃なるイベント(https://youtu.be/ZjpdnxoAvGY)が開催され、念願の重機も登場!夏のサンタさんが休暇中なのにプレゼントをくれたような奇跡が起こり続けた。
 たった一枚の写真から踏み出した一歩。そこから大きな歯車が回り始めたように思う。人の縁とは摩訶不思議なものである。自ら会を作り育てようとされている方の志に神が宿り、そこに引き寄せられたのだと思う。


海岸一斉清掃の模様(空撮;LIBERTY FLAP)

 一方、海岸にいると釣り人やサーファーの方もいらっしゃる。なんとなく清掃部隊と彼らとの間に見えない何かをふと感じる。が、お互いやりたいことをやってることに変わりはなかろう…そんなモヤッも少しづつほどいていきたいと思う。
 寅年でもあり、生きているうちに一番たくさん"2"が並ぶ年を迎えるにあたり、密かに「波瀾」の「瀾(大きな波)」を期待していたと思う…が、物事を順序よく組み立てて、というような工程は全く抜きにしてひたすらに幸運と縁が押し寄せた1年だった。
  デジタル化とアルゴリズムが相まって自分が一瞬ネット上で興味を示したものを起点に次々と「これはどう?」「こっちはどう?」と提示を受ける。が、実は近しい人や新しく出会った人がふと見せてくれた「全く無縁だったもの」「興味のカケラもなかったもの」に目を向けた時、それらは新しい次の扉を開けてくれるように思う。
 2023年、卯の年なら飛び跳ねるような飛躍があるのか…多くの方に新しい扉が開きますように…これからも新しい扉の向こうにあるもの、人との縁をまた楽しみたいと思う。
 2022年をありがとう。



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