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君との出会いとこれからと

私の夫は不思議な人です。
出会った日から今日までの尽きない「?」エピソードは、すぐに答えが見つかったり、時を経て合点がいったり、ずっと謎のまま忘れ去ってしまったり。まぁ退屈する暇をくれない人だと思います。
noteにあまり身の回りのことを書いたことはありませんでしたが、今日また新たな夫への「?」が生まれたので、備忘録として文章に残してみることにしました。


***


まずは少し過去の話を。
アクシデントが縁で大きなフラワーアレンジメントが我が家に持ち込まれたのは、冬も間近な時期のことでした。
咲き誇る花々の寿命が来るまでは…と、オアシスの水が絶えぬように気を配りながら過ごしていましたが、やはり切り花。満開の大輪から順に頭をもたげて萎れていってしまいます。仕方のないことです。
枯れた花茎を取り除きながら「そろそろ最後のひと花か…」と感慨深く穴ぼこだらけの禿山を眺めていると、1本だけ妙にシャンと背筋を伸ばした茎枝が。
花は付いておらず、わさわさした特徴的な形の葉がいかにも装花の賑やかし要員といった印象でした。その時は、長生きするものなんだなぁ、と何の気もなく挿したまま放っておきました。この時点で、花たちを家に迎えて2週間ほど経過していたように記憶しています。

ある朝だったか晩だったか、気付くとオアシスは廃棄されていました。
夫が「片付けたよ」と声を掛けてきて、ふと見ると棚の上で小瓶に挿さっているあの枝。
「それも捨てようよ」と言うと、あれは生きていると夫は反対し、そのまま3ヶ月。夫が数日おきにせっせと水を換えるも、枝は一向に根も出さず、萎れることもない。
「捨てようよ」私はちょっと気味が悪くなり何度か繰り返しました。その度に夫はその枝を庇いました。

春を迎えた頃に異変がありました。1本伸びたきりの枝の先端に、何やら蕾らしき新芽です。まさかの開花かと2人で見守るも、結局は不発。それでも枝が枯れることはありませんでした。
夏の盛り、今度は枝のお尻に異変。若草色の枝の切り口周辺はどす黒くくすんで膨らみ、先端付近が裂傷のように開いていました。何となく「あぁ根を出す気なんだな」と悟り、また2人で見守りました。
程なくして亀裂から根を伸ばし始めた枝は、じきに葉の方も2股、3股と分かれて育っていきました。頃合いを見て屋外の空いたプランターに住処を移して貰い、そこで根付いた枝は、なんとそのまま寒い秋と冬を我が家の吹きさらしのベランダで耐え抜いて春まで気高く背筋を伸ばし続けたのです。
そうしてひたすら時間を掛けてわさわさと、根を、枝葉を張り巡らせて、この春とうとう蕾が一斉に花開き、果てにはベランダから脱走を企てる ←click! ほどの大所帯になろうとは。生命って凄い。


下の写真は、枝と出会った日のものです。元々焦点は花になく、トリミングもバッサリとしているので見辛いですが。
恐らく中央やや左上の、ピョコンと上を向いた小花の隣でせり出しているのが枝自身かまたはその分枝か。ここから我が家にやって来て1年半。生命って、凄い。

私にはずっと気になっていたことがありました。

「これは何という名前の植物なんだろう?」

枝の頃には葉の形状だけで判別する術がなく、ググろうにも良いキーワードが当て嵌まらない。葉に触れると何となく良い馨があるのでハーブの仲間なのかなぁ、などと漠然と考えていました。
ここ最近では「この枝は何者か?」よりも、枝の生への執念に畏れすら抱いていたので、枝の品種を知らないことなどすっかり忘れていました。
そうしてG.Wも、ベランダで花を愛でつつ過ごしていた ←click! そんな今日。枝の名前に出会いました。なんとnoteで!

ローズゼラニウム ←click! と言うそうです。
HerbKuMac ←click! さんありがとう!!勝手にLinkしてごめんなさい。私はやっと、枝を「枝」でない名で呼ぶことが出来ます。


***


さて、話が夫に戻ります。
今日、夫がベランダのプランターをガサゴソとしていたのでその手元を見ると、何やらプラ容器。中には、枯れ葉???

「何してんの?」
「いい香りがするから。」
「生の葉からもするよね?」
「でも、生の葉は傷んでしまうから。」
ちょっと何言ってるか解らないです。(富澤たけし風に)
どんだけその枝を愛してんの?それ、取っておいてどうするの?

私の夫はとても賢い人だと思います。物静かで頭の回転が早くて、ここぞという時には能弁で唸らされることも多くて。無神論者の割に長く使った物を捨てるとき「ありがとう」とごみ箱に手を合わせるような優しくて素敵な旦那さまです。ただ、やっぱりちょっと不思議な人です。
今日も謎だらけの夫でした。

***


ローズゼラニウムは多年草だと知ることができました。うまくすれば来年もまた花を咲かせてくれるでしょう。枝の生殺与奪について、夫が謎に頑固な人でよかった。そう思います。


君とのスリリングな一年半、命の強さと尊さを教わったよ。来年も可愛い花をたくさん見せてね。気味悪がったりしてごめんね。


この続きはまた来年です。むかし夫がマリーゴールドの発芽と間違えてノゲシ(雑草)をせっせと育てていた話も、機会があれば。

《おわり》

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