見出し画像

いつ、どっちに、何が見える?

星空を見るとき「○月○日、△△時ごろ」という説明をよくされると思います。
この時、多くの方が誤解しがちなのが、その時でしか見られないと思ってしまうことです。

もちろん、日食や月食、流星群のように事象が起こる日時がある程度決まっているものもあります。

ですが、星座や星々の間を動く惑星、夜空に現れる彗星などは数週間から数ヶ月、時間さえうまく合わせれば大概、いつでもみられます。
太陽は毎日見られますが、季節や時間によって方角や高さが異なりますよね?
それと同じように夜空の星々も、地球の運動により位置は変わりますが、日時と方角を意識すれば結構長い期間見ることができるのです。

季節が変わっても見えている星は同じ?

下の三枚のシミュレーション画像を見てみてください。

5月1日 5時
8月1日 23時
11月1日 17時

ほぼ真南にわし座の一等星アルタイルや黄道十二星座のいて座、やぎ座が見えています。
右下にシミュレーション日時が書いてありますが、5月、8月、11月と季節が全く違います。
そして時刻も5時、23時、17時と全く違います。

ですが見えている星空はほぼ同じになります。
わし座やいて座、やぎ座は一般的に夏の星座と言われますが、5月は春ですし、11月は秋です。
夏の星座が春にも秋にも見えている?
それも同じ南の空に?

どうしてでしょうか?

一年は12ヶ月、一日は24時間

地球は太陽の周りを12ヶ月かけて一周します(公転)
そして地球は24時間かけてくるっと一回転します(自転)

身近な物に置き換えてみましょう。
目の前にパソコンなりスマートフォンなりがあると思います。
それらを太陽としましょう。
そして後ろには何があります?(私の部屋には月のポスターがあります)
後ろにあるものを(太陽の反対側なので、夜)夏の星座としましょう。

太陽(パソコン、スマートフォン)を中心に左回り(反時計回り)でくるっと向こう側に回り込む(一周する)動きをイメージしてください。
この動きが公転です。
次に今いる場所でそのまま、今度は左回り(反時計回り)に一回転する動きをイメージしてください。
この動きが自転です。

下の図は太陽の周りを回る地球とその季節に見える黄道十二星座を簡略化して表したものです。

季節ごとに黄道十二星座の見えるイメージ

地球が太陽の周りを回ると、太陽のちょうど反対側に星座が見えているのがわかると思います。
夏であればいて座が見えますが、冬になると太陽の方向にいて座があるので(太陽が眩しくて星が見えなくなるので)見えません。

地球が夏の位置にある場合を例として話を進めます。
太陽が真正面(真南)に見えるのはお昼12時(正午)です。
逆に太陽が全く見えないのが、真夜中の午前0時(24時)です。
では朝日が登るのは?夕日が沈むのは?
1日は24時間ですので、ちょうど6時間ずれた6時と18時です。
(実際は地軸が傾いている関係で季節により前後しますが、簡略化しているので省略します)

(宇宙から見て)時間ごとの真南の向いている方向のイメージ

最初の画像に戻りましょう。
夏、24時の方向にはいて座があります。
では6時の方向は?18時の方向は?

(宇宙から見て)時間ごとの真南の方向に見える黄道十二星座のイメージ

6時の方向にはうお座が、18時に方向にはおとめ座がありますね。
季節は夏のままですが、時間が変われば真正面(真南)に見えている星座は変わるのです。

今、あなたがいる場所の向いている方向を12時(正午)とします。
左に90度向くと18時、右に90度向くと6時、真後ろを向くと午前0時(24時)になり、見えているものが変わりますね。

真後ろのものを見るには、その場で半回転する(自転で12時間進む)か、太陽を見たままくるっと(太陽の)向こうに回って後ろを見る(公転で6ヶ月進む)かになります。

これを簡単に計算すると、
・12ヶ月で公転するので、一周360度を12で割ると、1ヶ月当たり30度
・24時間で自転するので、くるっと360度を24で割ると、1時間あたり15度
となります。

この2つを組み合わせると、
・時間は固定で、日付が1ヶ月進むと30度
・日付は固定で、時間が2時間進むと30度
となります。

つまり、今日(仮に2023年3月1日とします)の20時に見ていた星空が、1ヶ月後の同じ20時と今日の22時で時で同じになるのです。(同じ30度ずれた星空になる)

20時に見ていた星空
1ヶ月後の20時の星空
今日の22時の星空

季節の星座は意外と見えている

大雑把に夜の時間を20時ごろから翌朝4時ごろまでとすると、8時間になります。
日付に換算すると8時間 × 15度 ÷ 30度 = 4ヶ月となります。

つまり、大雑把に行って同じ時間(例えば20時)としても、一つの星座の観望期は4ヶ月あることになります。
もちろん、冬は夜が長いのでこの期間は長くなり、夏は短くなります。
緯度が北であれば、天の北極に近い星座は地平線下に沈まなくなるので、見える期間は長くなります。
実際、北海道では北斗七星は地平線下に沈まないので一年中見えます。

早起きすれば1月に夏の代表的な星座こと座を見ることもできます。
20時ごろ北西の空ではくちょう座のデネブが輝いているのですが、翌朝4時ごろには北東の空からベガが上がってきます。
天の北極に近いためとはいえ、真冬に夏の星座を見るのはとても不思議な気分になります。

星座早見盤や星空シミュレーションソフトがお手元にあれば、日付や時間を動かしてどの星座がいつ、どの方向に見えているか調べてみると面白いかもしれませんよ。

宜しければサポートをお願い致します。ご厚意は天文ボランティア活動の資金とさせて頂きます。 これからも星空に興味を持っていただけるような記事を書きたいと思っています。