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月の科学(月の誕生)

天体としての『月』は太陽系の他の衛星と比べると、ありふれたものかもしれません。
そんな『月』について、少し掘り下げてみましょう。

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『月』の note で取り上げましたが、今回は『月の誕生』についてです。

月がどのようにして誕生したかについては、様々な説が唱えられてきました。
大きく分けると次の4つにまとめられます。

・兄弟説
・親子説
・他人説
・巨大衝突説

名前から何となく推察できますが、順番に見ていきましょう。

○兄弟説
地球の誕生と同時に、月も作られたとする説です。
ですが、月の平均密度から推察される組成が、地球と比較して軽い事(金属類が少ない事)を説明できませんでした。

○親子説
地球自転による遠心力により、一部が飛び出して月となった説です。
事実、月は徐々に地球から遠ざかっており、逆にたどれば一つだったと考えることができますが、それほど地球が高速で自転していた証拠はなく、無理がありました。

○捕獲説
太陽系を周回していた月が地球近傍を通過した際に、地球の重力にとらえられたとする説です。
捉えるにしては月は地球に比べて大きすぎますし、それならば月以外の衛星があってもよさそうです。
また、アポロ計画で採取された月の石の分析から、地球のマントルと月の石の類似性が示されており、その説明ができませんでした。

アポロ計画でもたらされた月の石の分析により、月の誕生が約45.5億年前であること。
誕生の初期に高温であったことが分かり、有力視されるようになったのが、巨大衝突説(ジャイアント・インパクト説)です。
(余談ですが、新世紀エヴァンゲリオンで登場する「セカンドインパクト」は、この月誕生時のジャイアント・インパクトを「ファーストインパクト」としているため、「セカンド(2番目)」という名称がつけられています)

○巨大衝突説(ジャイアント・インパクト説)
誕生して間もないマグマの海に覆われた原始地球に、火星サイズの小天体が衝突。
そのときに破壊された小天体の残骸と、衝突によってえぐりとられた地球の表層物質が集まって固まり、月が誕生したという説です。
この説では、
 ・月の組成が地球のマントル部分と似ている
 ・平均密度が低い(金属類が少ない)
 ・月のコアが小さい
 ・月誕生時の環境が高温であったこと
などをうまく説明できるため、最も有力な説とされています。

この説を基に、さまざまなモデルでコンピュータシミュレーションを行った結果、実際に月が誕生すること。地球の地軸の傾きを説明できること。
実際の衝突から月の誕生まで、わずか1ヵ月程度であること。などが判明しています。

この時に衝突する小天体が大きすぎれば地球は粉々になり、小さすぎれば月は誕生しませんでした。
角度もやや斜めにぶつかったようですが、正面衝突であれば両者は粉々になっていたでしょう。
惑星(地球)に対して大きすぎる衛星(月)の誕生は、まさに偶然の結果なのです。


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