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星空観望会で曇ったら(星座神話・秋)

市街地での観望会(移動天文台)を考えると、見える恒星は3等星ぐらいまでかと思います。

10月1日20時ごろの空(Stellariumで表示)

仮に2.5等星まで(大気による減衰あり)として、秋の移動天文台(10月1日20時)を想定すると、視界が開けていれば見えている星は

1等星
 ・ベガ(こと座)
 ・デネブ(はくちょう座)
 ・アルタイル(わし座)
 ・フォーマルハウト(みなみのうお座)
 ・カペラ(ぎょしゃ座)

2等星
 ・アリオト(おおぐま座)
 ・アルカイド(おおぐま座)
 ・ポラリス(こぐま座)
 ・コカブ(こぐま座)
 ・サドル(はくちょう座)
 ・エルタニン(りゅう座)
 ・ラスアルハゲ(へびつかい座)
 ・スケダル(カシオペヤ座)
 ・ナビ(カシオペヤ座)
 ・アルフェラッツ(アンドロメダ座)
 ・ミラク(アンドロメダ座)
 ・アルマク(アンドロメダ座)
 ・ハマル(おひつじ座)
 ・ミラファク(ペルセウス座)
 ・アルゴル(ペルセウス座)
 ・ディフダ(くじら座)

でしょうか(星図上でどれがどれか分かります?)

このうち、話のメインになりそうなのは
 ・こぐま座
 ・へびつかい座
 ・こと座
 ・わし座
 ・はくちょう座
 ・みなみのうお座
 ・おひつじ座
 ・ペガスス座やアンドロメダ座などの古代エチオピア神話

ほとんど見えていないですが
 ・やぎ座
 ・みずがめ座
 ・うお座
 ・ヘルクレス座
 ・いるか座
 ・や座

といったところでしょうか。

※注意※
星座神話については多くの場合、複数のお話が伝わっています。
本の書かれた時期やターゲットとする年齢層などにより、細かい内容やニュアンス、最新の研究結果と異なることが多いため「あくまで一つの紹介例」としてご覧ください。

こぐま座(おおぐま座)

おおぐま座とこぐま座の星座神話は一つの物語で紹介することが多いです。

おおぐまの正体はアルカディア王リュカオンの娘カリストになります。アルテミスの従者として狩りに明け暮れる生活をしていたカリストは、ある日、木陰で休んでいるところを大神ゼウスに気に入られ、やがて男の子アルカスを授かります。
これを妬んだゼウスの妻ヘラ(ヘーラー)はカリストを熊の姿に変え森の中へ追いやってしまいます(処女の誓いを破られたことに怒ったアルテミスが熊に変えたという話もあります)。
それから十数年ののち、カリストは森の中で成長した息子アルカスに出会います。
森の中で熊に出会ったアルカスは驚きますが、母カリストは息子であることに気づきます。会えた嬉しさのあまり抱きしめようと近づきますが、熊が母であることを知らないアルカスは後退りし、槍で突こうとします。
この様子を見ていたゼウスはアルカスに母殺しの大罪を犯させまいと、アルカスも熊に変え天上に上げて、母カリストをおおぐま座に、息子アルカスをこぐま座(うしかい座とした話もあります)にしました。

この時、ゼウスが熊の尻尾を持って天に放り投げたため、おおぐま座とこぐま座の尻尾は長い、という説明がされることもあります。

へびつかい座

へびつかい座は太陽の神アポロンの息子で医者のアスクレピオスの姿とされます。
アポロンは嘘つきカラスの話を信じて妻コロニスを殺してしまいますが、コロニスが身篭っていたアスクレピオスは無事に生まれ、ケンタウロス族の賢者ケイロンに預けます。
ケイロンのもとで医術を学んだアスクレピオスは、蛇が薬草を使って死んだ仲間の蛇を生き返らせるのを見て、死者をも蘇らせる術を知ります。
アスクレピオスの術は冥神ハーデースの怒りを買い、ハーデースに頼まれた大神ゼウスは雷撃を打ってアスクレピオスを家ごと撃ち殺してしまいます。
息子を殺されたアポロンは激怒しますが、ゼウスに頼んで星座にしてもらいます。
へびつかい座が蛇(へび座)と共に描かれているのは、アスクレピオスが蛇から死者を蘇らせる方法を知ったからとも、蛇は脱皮を繰り返すため再生の象徴だからとも言われています。

こと座

こと座の星座神話は、多くのギリシャ神話の中でも人気のあるお話かもしれません。
こと座の「琴」は発明の神ヘルメスが発明し、アポロンが譲り受けて弾いたものになります。アポロンはこの琴を息子のオルペウス(オルフェウス)に譲り、オルペウスは素晴らしいことの名手となります。
やがてオルペウスはエウリュディケと結婚しますが、新婚早々エウリュディケは毒蛇に噛まれて死んでしまいます。
悲しんだオルペウスは冥神ハーデースのところに行き、琴を弾きながら妻を地上に戻してくれるように頼みます。ハーデースはオルペウスの弾く琴の音色が美しいのでこれを許可しますが、地上に戻る途中、決して振り返ってはならないという条件をつけました。
帰る途中、あと少しというところでオルペウスはエウリュディケが後ろをついてきているか不安になり、思わず後ろを振り向いてしまいます。
すると叫び声とともにエウリュディケは冥界に連れ戻されてしまいます。
悲しみにくれたオルペウスは川に身を投げて命を経ってしまいます(酒神ディオニュソス(バッコス)の祭りで泥酔した女たちに殺され、川に投げられたという話もあります)。
オルペウスの琴はそのまま川を流れていたが、大神ゼウスが拾い、その主人の楽才を惜しんで星座としました。

わし座

わし座の星座絵を見ると、少年を連れた鷲の姿で描かれていることがあると思います。
この少年はトロイアの王子ガニュメデスで、とても美しい少年でした。大神ゼウスはその姿を見て、神々の宴で給仕をさせるために化けて天に連れ去ってしまいます。
この時にゼウスが変身した鷲の姿(またはゼウスが使わした鷲)とされます。

またかつてわし座の下にはアンティノウス座という星座がありました。アンティノウスはローマ皇帝ハドリアヌスの愛人として寵愛を受けた男性で若くしてナイル川で溺死しています。
わし座の下に描かれたアンティノウスが、いつしか鷲にさらわれるガニュメデスの姿になった、という研究もあるようです。

はくちょう座

ギリシア神話ではいくつかのお話が伝わっています。
その中でも最も多く話されるのは「大神ゼウスが白鳥に化けた姿」でしょうか。

大神ゼウスはスパルタの王テュンダレオスの妃レダに恋をします。ゼウスは愛の女神アプロディテに助力を求め、自らは白鳥に化け、同じくアプロディテが化けた鷲に追われる形でレダの膝下に逃げ込みます。
白鳥(ゼウス)が去った後、レダは2つの卵を産み落とし、一つからはふたご座の兄弟カストルとポリュデウケスが、もう一つからはヘレネとクリュタイムネストラの姉妹が生まれました。
この時に化けたゼウスの姿がはくちょう座とされます。

他にも「エリダヌス川に落ちた友人を探すキュクノス」や「琴の天才オルペウス(こと座)」などのお話があります。

みなみのうお座

みなみのうお座は、この後で登場するうお座と同じで愛の女神アフロディーテとするお話もありますが、うお座の二匹の魚(北の魚と南の魚)の親であるというお話も伝わっています。
このお話では、シリアの豊穣の女神デケルトが湖に落ちた際に、彼女を助けた魚が天に上げられたとされます。その魚の二匹の子がうお座になります。

おひつじ座

おひつじ座の羊はちょっとかわいそうな羊です。
この羊はヘルメスが大神ゼウスから預けられていた羊で、空を飛び、人の言葉を話すことができる黄金の毛をもつと伝えられています。
テッサリア王アタマスの二人の子供、息子プリクソスと娘ヘレが、継母イノーの悪巧みにより生贄にされそうになったとき、それを救うためにヘルメスが黄金の羊を使わします。
二人を乗せて逃げた羊ですが、途中で妹のヘレが手を滑らせて現在のダーダネルス海峡(ヘレの海を意味する「ヘレースポントス」と呼ばれる)に落ちて死んでしまいます。
無事にコルキスまで逃げられたプリクソスはこの生贄に捧げ、その黄金の毛皮をその土地の王アイエテスに献上します。
(助けたのに毛皮にされちゃうんですね。。。)

アイエテスはこの珍しい毛皮を昼夜眠ることのない竜に番をさせます。
この毛皮を手に入れるための冒険がアルゴ号(アルゴ座)の冒険、アルゴナウタイの神話になります。

ペガスス座やアンドロメダ座などの古代エチオピア神話

ペガスス座にアンドロメダ座、ケフェウス座とカシオペヤ座、ペルセウス座、くじら座の6つの星座を合わせて、古代エチオピア神話が紹介される故ことが多いかと思います。

エティオピア王ケーペウス(ケフェウス座)の妻で王妃であるカッシオペイア(カシオペヤ座)は自慢好きで、常々、娘であるアンドロメダ姫(アンドロメダ座)を自慢し「その美しさは海のニュムペー ネーレーイスに優る」と言っていました(自分の美しさとする話もあります)。
これを聞いたネーレーイスたちは海神ポセイドンに訴えます。ポセイドンはエティオピアに海の怪物ケートス(くじら座)を遣わし、災害を引き起こします。
ケートスに困り果てたケーペウスが神託を立てたところ、娘であるアンドロメダをケートスの生贄に捧げなければならないと啓示を受けます。
国のためアンドロメダをケートスの生贄にするため、海辺の岩に鎖で縛ります。
ケートスがアンドロメダに襲い掛かろうとする、ちょうどその時、ゴルゴーンの一人メドゥーサを退治して帰る途中の勇者ペルセウス(ペルセウス座)が、メドゥーサの血の中から生まれた天馬ペーガソス(ペガスス座)にまたがって通りかかります。
ペルセウスは持っていたメドゥーサの首をケートスに向けて石に変え退治すると、アンドロメダ姫を救いエティオピアへと帰ります。

色々細かい話はありますが、星空解説の場ではこのくらい短い方が良いかと思います。
くじら座がケートスなのかティアマトなのかとか、ペルセウスがアンドロメダを救う際にペーガソスに乗っていたのかとか、ペルセウスがアンドロメダを救うためにケーペウスに結婚を条件としたとか、アンドロメダとペルセウスの結婚までの紆余曲折とか、エピソードが多いので調べてみてはどうでしょうか。

やぎ座

やぎ座については牧神パン(アイギパーン)の話をされることが多いでしょうか。
ナイル川の岸で神々が宴会を開いていたとき、突然、怪物テューポーンが現れます。驚いた神々は動物に姿を変えて逃げますが、ヤギの頭を持つパンは川に飛び込んだところ下半身だけ魚になり、水に浸からないところはヤギの姿のままでした。その姿を大神ゼウスによって星座とされたのです。

みずがめ座

ギリシア神話では、不死の酒ネクタールを給仕するガニュメデス(わし座)の持つ水がめ(酒器)であるとされます。
わし座では大神ゼウスがガニュメデスを攫う姿が描かれることが多いですが、その連れ去られた先の姿になるのです。

うお座

ギリシア神話では、愛の女神アプロディテとその子エロスにまつわる神話が伝わっています。
アプロディテとエロスがユーフラテス川の岸辺を散歩していると、突然、怪物テューポーンが現れます。
驚いた二人は川に飛び込み、姿を魚に変えて逃げます。このとき、離れ離れにならないように尾をリボンで結んでいたため、この様な姿になったと言われています。

ヘルクレス座

ヘルクレス座のモデルとなったのは、ギリシア神話の英雄ヘラクレスです。
ヘラクレスは大神ゼウスが、ペルセウスとアンドロメダの娘アルクメーネとの間にもうけた子ですが、例によってゼウスの妻ヘラ(ヘーラー)に疎まれてしまいます。
勇者でありながら、ヘラの呪いが付きまとい、ある日気が狂うと妻を殺し三人の子を火の中に投げ込んでしまいます。正気に戻ったヘラクレスはその罪を償うためミュケーナイ王エウリュステウスに仕え、12の冒険(苦行)に赴きます。
冒険を成し遂げた後、ヘラクレスは神となり星座の仲間入りをしました。

このとき成し遂げたヘラクレスの12の冒険は以下になります。

  1. ネメアのライオン退治(しし座)

  2. レルネのヒュドラ退治(うみへび座)

  3. ケリュネイアの魔の鹿の捕獲

  4. エリュマントス山のイノシシの捕獲

  5. アウゲイアスの家畜小屋掃除

  6. ステュムパリデス沼地の怪鳥の退治

  7. クレタ島の牡牛の捕獲

  8. ディオメデスの人食い馬の退治

  9. ヒッポリュテの帯の入手

  10. ゲリュオンとの戦い

  11. 黄金のリンゴの入手(りゅう座)

  12. 番犬ケルベロスの捕獲

いるか座

主に2つの神話が伝わっています。
一つは、海神ポセイドンの妻になることを拒んで逃げたアムピトリテを探し出して連れ戻ったイルカであるというお話。
もう一つは、詩人アリオンが音楽会から故郷に帰る際に賞金に目がくらんだ船員がアリオンを殺そうとします。そのとき、アリオンが弾いた琴の音でイルカが集まってきます。アリオンはそのまま海に身を投げますが集まったイルカに助けられ無事に故郷に帰るというお話です。

や座

古来から多くの地域で矢として認識された星座です。そのせいか、伝わっている話も多く、「アポロンがキュクロプス(サイクロプス)」を撃ち殺した矢」、「毎日鷲に肝臓をついばまれているプロメテウスを見たヘラクレスが、鷲を殺した矢」、「ゼウスをガニュメデスに夢中にさせた、愛の神エロスの矢(いわゆるキューピッドの矢)」などです。

最も人気のある話は、やはり「エロスの矢」でしょう。
エロスは軍神アレスと愛の女神アフロディーテの子であるとされ、黄金で出来た矢に射られた者は激しい恋心を抱き、で出来た矢に射られた者はどんな恋もいっぺんにさめてしまうというものでした。
さて、夜空にある矢は、どちらの矢なのでしょうか?


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