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北極星も動く

方角を知るのに便利な北極星
実は少しずつ、天の北極からずれているのです。

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『星空散歩(夏)上級編』の note で少し取り上げましたが、かつて『りゅう座』のα星『トゥバン』は北極星だった星です。
今の北極星は、『こぐま座』のα星『ポラリス』です。
そして、未来の北極星は『ケフェウス座』のγ星『エライ』です。

どうしででしょうか?

まず、北極星とはなにか?からお話ししましょう。
地球が地軸を中心にコマのように回転(自転)していることはご存知かと思います。
地球が自転する結果、太陽を含む星が東から登り、南を通って西に沈む日周運動がおこりますが、地軸を延ばした先にある点は、その場で回転しているように見えることはあっても位置は動きません。
この点が、【天の北極(または天の南極)】です。

地球を外から見たとき、地軸の指す方向が動かず一定であれば、天の北極・南極は動かず、結果、北極星も変わりません。

“『りゅう座』のα星『トゥバン』は北極星だった”ということは、“地軸の指す方向が変わっている”となります。

この説明は分かりやすく結果から話していますが、学問の順序としては、逆です。
つまり、事象として【自転している物体の回転軸が、円を描くように振れる現象】があります。
コマを回している場面を思い浮かべてください。
回転軸が垂直の場合、回転は安定していますが、軸が傾きだすと、首を回すように軸が円を描きだします。
これが上記の減少で、【歳差運動】と呼びます。

これが地球の回転(自転)に対しても起こっています。(※)

コマの軸先が変わるように、地軸の向き先も変わっており、およそ25,800年で一周しています。
結果、星座が誕生したとされる5000年ほど前は、『りゅう座』のα星『トゥバン』が北極星でした。
中国で殷王朝が栄えていた3000年ほど前は、『りゅう座』のβ星『コカブ』が北極星でした。
そして、大仙陵古墳(仁徳天皇陵)が作られた1500年ほど前から、『こぐま座』のα星『ポラリス』が北極星となっています。
(北極星と言っても、天の北極にあるわけではなく、わずかにずれていますので、おおよそそのあたりにある時期になります)

『ポラリス』が点の北極にもっと持ち近づくのは、西暦2100年ごろになります。

その後、西暦4000年ごろには『ケフェウス座』のγ星『エライ』が。
西暦10200年頃ごろには『はくちょう座』のα星『デネブ』が。
西暦13500年頃ごろには『こと座』のα星『ベガ』が、北極星として天の北極の近くで輝くことになります。

南極星については、現在は『はちぶんぎ座』のσ星『ポラリス・アウストラリス』がありますが、5.4等級と暗いため、あまり一般的ではありません。
西暦8100年ごろには『りゅうこつ座』のι星『アスピディスケ(2.3等級)』(ニセ十字の左の星)が。
西暦9200年ごろには『ほ座』のδ星『アルセフィナ(2.0等級)』(ニセ十字の右の星)が、南極星となります。

※)
 地球自転に対する歳差運動の理由は、「コマの運動と同じ理由」と説明されることが多いですが、明確に違います。
 (重力のある平面上で軸に支えられているわけではない)
 地球の歳差運動は、地球が赤道部がわずかに膨らんだ球体であるため、太陽や月の重力による影響で、赤道部のふくらみを黄道面と一致させようとする働きの結果になります。

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