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秋の日は釣瓶落とし

「秋の日は釣瓶(つるべ)落とし」という諺があります。
秋の日(夕日)は、井戸の釣瓶(井戸で水を汲み上げるために使われる桶)が落ちるように早く沈み、暮れてしまうたとえになります。

一年を通じて日の出日の入りの時刻は変わりますが、日の出日の入りの速さ(明るくなる、暗くなる速さ)は変わるのでしょうか?

国立天文台のWebサイト(暦計算室)では様々な暦に関する計算をすることができます。

そこで日の出・日の入りと薄明(天文薄明)の時刻を計算してグラフ化してみました。

札幌(北海道): Sapporo 緯度:43.0667° 経度:141.3500° 標高: 0.0 m 標準時:UT+9h

黄色線が日の入り時刻になりますが、よく見ると夏至の頃(6月末)の左右を比べると時刻変化の量が違うことに気づきます。
1月から6月にかけての傾きと、7月から12月にかけての傾きが違いますね。
(前者の方が緩やかで後者の方が急です。)
そして12月下旬から1月上旬ごろは日の入り時刻がほとんど変わっていないです。
つまり、日の出・日の入り時刻はピークを中心のその前後で対象にならないのです。

さらに薄明終了時刻(青色線)と日の入り時刻を比べると、その幅(時刻差)が一定ではないこともわかります。

日の入りから薄明終了までの時刻差をグラフにすると

札幌(北海道): Sapporo 緯度:43.0667° 経度:141.3500° 標高: 0.0 m 標準時:UT+9h

と一定ではなく、夏至の頃に比べ9,10月(2,3月)は薄明の時間が短いことがわかります。

このことから秋は
・夏に比べて日の入り時刻が早い
・夏に比べて日の入りから薄明終了までの時間が短い
・日毎の日の入り時刻が早くなる(変化が大きい)
ため、感覚として夏に比べて暗くなるのが早くなり、「秋の日は釣瓶落とし」という諺が生まれたんだと思います。

では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

以下の説明に合わせて、以前書いたnote「夏至の日は昼間が一番長いけど。。。」を読んでいただきたいのですが、端的に言うと

・地球は楕円軌道を回っている
・地軸が傾いている
よって
・南中高度のピークは夏至が最も高く、冬至が最も低いわけではない
・南中高度が高いと日の出は早く、日の入りは遅い(低いと逆)
・夏至の頃の南中時刻は春分・秋分に比べて早く、冬至は逆に遅い
・(地球が近日点を通る)12月下旬から1月上旬に、日の出時刻が長期にわたってほとんど変わらない
となります。

これを表にまとめると

季節ごとの南中・日の出入り時刻変化

となり、
・春(春分)は日の出がどんどん早くなる
・夏(夏至)は日の出が夏至前に最も早く、日の入りが夏至後に最も遅い
・秋(秋分)は日の入りがどんどん早くなる
・冬(冬至)は日の出が冬至後に最も遅く、日の入りが冬至前に最も早い
のです。

おまけ(薄明について)

日の出のすぐ前、または日の入りのすぐ後に空が薄明るい(薄暗い)時のことを『薄明(はくめい)』と言います。
これは太陽光を大気中の塵によって散乱されることにより発生します。
(昼間に空が一様に明るく見えるのと同じ理由になります)

この薄明は太陽の伏角(太陽が地平線下何度にあるか)によって、三つに分けられています。

俯角が0度から6度の場合を常用薄明(市民薄明)と呼び、屋外での作業が問題なく行える程度の明るさになります。
6度から12度の場合を航海薄明と呼び、海上で空と水平線の境目を見分けられる程度の明るさになります。
12度から18度の場合を天文薄明と呼び、星が多く見えるようになりますが天文的にはまだ真っ暗にはなっていない明るさになります。

俯角が18度以上だと薄明しておらず空は真っ暗になります。
天体写真などで空の暗さを意識する場合は天文薄明の開始・終了時間を気にしていないと、撮った後に写真を見るとバック(空)が白く被ってしまいガッカリすることがあります。


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