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月の大きさは五円玉の穴と同じは本当か!?

突然ですが、月の大きさってどれぐらいでしょうか?
満月の日、東の空から昇ってきた月は、とても大きく見えませんか?
でも、空高いところにある月は、それほど大きく見えません。
なぜでしょうか?

月が、地平線近くでは大きく見え、空高いところでは小さく見える。
理由はいろいろいわれますが、言ってしまえばこれは全て『錯覚』です。
要するに『気のせい』なんですね。

では、本当に気のせいなのか。ちょっと考えて見ましょう。

満月の日。太陽が沈んだ後、東の空から月が昇ってきます。
ビルだったり、森だったり、山々の稜線だったり。
何かしらの近くに見えていると思います。

それに比べて、空高いところの月は、周りに何もありません。
都会だと電線などと一緒に見えるかもしれませんが、月と同じように見上げていると思います。

人はその経験から、水平方向に見る物の大きさはなんとなくわかるものです。
けれど、垂直方向だとその経験が少ないため、物の大きさがよく分からなくなってしまいます。
そしてビルなどの比較するものがある水平方向(月の出後)は、ビルなどに比べて大きく見てしまい、比較するものがない垂直方向(空高い月)は、小さく(本来の大きさ)見てしまっているのです。

では実際、月の大きさはどれぐらいなのでしょうか?

天体としての月の大きさは、直径がおよそ3,470kmと日本列島のその長さにほぼ等しくなります。
つまり、北海道から沖縄までが見えている月の表面にすっぽりと入ってしまうのです。

しかし、月を見てもそれほどの大きさを感じません。
なぜでしょうか?

それは月が非常に遠くにあるからです。

当たり前の質問ですが、目の前においてあるイチゴショートケーキと、100m先にあるイチゴショートケーキ。
どちらが大きく見えるでしょうか?

答えは、【目の前にあるほう】が大きく【見えます】ね。

この【見える】が星空の世界では重要なのです。

直径3,470kmもある月。それが地球から38.5万kmも彼方にあると、非常に小さく【見えます】
ちなみに直径1,392,000kmもある太陽ですが、1億5千万kmも彼方にあるため、月とほとんど同じ大きさに【見えます】
(そのため、皆既日食という一大イベントが起こるのです。その話はまた今度)

この【見える】大きさのことを【見かけの大きさ】といい、星空の世界では【視直径】という単位で表します。

天体の大きさや距離はそれぞれ違います。
そのため、実際の大きさは見る上ではほとんど意味がなく、距離もさほど重要ではありません。
そこで天体の大きさを比較するために【視直径】という単位が考えられたのです。

では、【視直径】とは、いったいなにものなのでしょうか?

今、皆さんはパソコンなり携帯電話の画面を見ていることと思います。
その画面に向かって鼻の位置から左端に伸びる線をイメージしてください。
次に同じく右端に伸びる線をイメージしてください。

今引いた2本の線に挟まれた、鼻の位置にできた角度。
ちょうど三角形の頂点に当たる位置になりますが、この【角度】が目標天体に対する【視直径】なのです。

つまり、天体の両端から引いた2本の線で出来上がる角度が【視直径】になります。

今、皆さんが引いた線ですと、パソコンの場合でおおよそ15から20度ぐらい。携帯電話ですと3度ぐらいでしょうか。
顔を近づけると角度は広がり、離すと狭くなると思います。
もちろん画面の大きさは変わりませんので、見かけの大きさ(=視直径)は、大きさが同じ場合、距離に依存することがわかります。

次にパソコンの画面の位置に携帯電話の画面を置いてみてください。
距離は変わりませんが、画面の端から端までの見かけの大きさ(=視直径)が小さくなったと思います。
つまり、距離が同じ場合、大きさに依存することがわかります。

先ほど、天体を見る上で『実際の大きさも距離もさほど重要ではない』と言いました。
これは【視直径】という共通の単位によって、実際の大きさも距離も関係なく、【見かけの大きさ】を比べることができるからです。

では、月の見かけの大きさ【視直径】は、いくつなのでしょうか?

答えは、『0.5度』です。

ここで注意が1つ。
一般的に角度は『度』で表し、記号は『°』です。
しかし、星空の世界では天体は非常に小さく、恒星は見かけ上、ほとんど“点”です。
月や太陽は最大の部類に入りますが、それでも1°ありません。

そのため、天体の多くは、『度』の下の単位『分』や『秒』を使います。
関係は次のようになります。

 1°(度) = 60′(分) = 360″(秒)

時間と同じような感じですね。
月を例に挙げると、0.5°=30′=180″となります。

この30′という見かけの大きさ(=視直径)。具体的にはどのぐらいの大きさでしょうか?
実際に月を見るのが一番ですが、身近なもので考えて見ましょう。

お財布を開け、5円玉を用意してください。
それを親指と人差し指ではさみ、腕を伸ばしてください(約57cm)。
そして5円玉の真ん中の穴(直径5mm)を見てください。それが0.5°(=30′)です。

小さいでしょ?それが見かけの月の大きさなのです。

『いや、そんなはずはない!』と思ったあなた。今晩、月が見えたら5円玉を持って、
月にかざしてみてください。穴にすっぽりと月が入るはずです。

ちなみに月は楕円軌道のため、地球からの距離が36万kmから40万kmの間で変化します。
そのため、視直径も34′~29′の間で変化します。
5円玉に入らない日もあることになりますね。

※おまけ ・・・ 視直径の計算方法
 難しいことを抜きにすると
  視直径=(360 × 天体の半径)÷(円周率 × 天体までの距離)
 で近似値計算することが出来ます。

 5円玉だと
  (360 × 0.25cm)÷(3.14 × 57cm)=0.502°
 月だと
  (360 × 1,700km)÷(3.14 × 385,000km)= 0.506°
 となりますね。

(この記事は以前別のblogで書いた内容を再編集したものになります)

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