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5分で読める現代短歌

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毎週水曜日、北虎あきらが現代短歌を一首ずつ紹介しています。 「そもそも短歌ってどう読むものなの?」から「どんな種類の歌があるの?」くらいのひとに読んでもらえると特にうれしいです。
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記事一覧

この頭に手を/5分で読める現代短歌26

 初読はインターネットだった。  わたしのTwitterには短歌の話題がときどき流れ、いくらかは…

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夜をきさらぎ/5分で読める現代短歌25

白い息に白い息被せゆく夜をきさらぎ、きみもさびしいといい /虫武一俊  おそらく〈きみ〉…

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普通のままに/5分で読める現代短歌24

真ん中にあっても二度と使われず臍はくぼんだ姿のままで /山本夏子  2016年に現代短歌社賞…

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ふへんてきな/5分で読める現代短歌23

恨まれる心づもりはできていて、でも窓辺から共に陽を見た /榊原 紘「でも窓辺から」  第二…

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人類の繁栄は/5分で読める現代短歌22

ドーナツの箱が道路に置いてある 人類の繁栄はこれから /鈴木 ちはね  第2回笹井宏之賞(20…

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ディスビデオ/5分で読める現代短歌21

This video has been deleted. そのようにメダカの絶えた水槽を見る /岡野 大嗣  岡野大嗣…

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イルカがとぶ/5分で読める現代短歌20

イルカがとぶイルカがおちる何も言ってないのにきみが「ん?」と振り向く /初谷 むい  歌集の巻頭歌。どの連作にも属さず、1ページめの中心にこの一首のみが据えられている。ここから、初谷むいの歌が始まる。イントロ、のまえのドラムのカウント、くらいのスピードでメロディに乗せられていく。  初谷の歌、文体の特長のひとつがそのリズム感だろう。 イルカがとぶイルカがおちる何も言ってないのにきみが「ん?」と振り向く  特に現代の短歌韻律の拍については、“短歌4拍子説”が主流のひとつに

手羽先の拳銃/5分で読める現代短歌19

手羽先を拳銃としてわたくしはあなたの不幸を奪う強盗 /工藤 玲音  くどうれいん、と読みま…

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いずれきたる/5分で読める現代短歌18

あなたからきたるはがきのかきだしの「雨ですね」さう、けふもさみだれ /松平修文  松平修…

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縦書きの国に/5分で読める現代短歌17

縦書きの国に生まれて雨降りは物語だと存じています /飯田 和馬  初読で意味がわかって、「…

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小鳥をのせる/5分で読める現代短歌16

ここはしづかな夏の外側てのひらに小鳥をのせるやうな頬杖 /荻原 裕幸  荻原おぎはら裕幸の…

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ひとりの躑躅/5分で読める現代短歌15

さみしいは何とかなるがむなしいは 躑躅の低いひくい木漏れ日 /千種 創一  第二歌集『千夜…

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四葩がゆれて/5分で読める現代短歌14

曲がつてる道は遠くが見えなくて安心できた 四葩がゆれて /魚村 晋太郎  四葩(よひら)は、…

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いのちの戦場/5分で読める現代短歌13

野ざらしで吹きっさらしの肺である戦って勝つために生まれた /服部 真里子 戦って勝つ ために生まれた 戦って 勝つ ために生まれた 戦って勝つために生まれた 戦って勝つために生まれた ------------------------------  冬の歌、だと思う。  上句〈野ざらしで吹きっさらしの〉からは、乾いた広野/荒野が見える。〈肺である〉と自身の身体を認識できるとき、その身体は機能的あるいは感覚的に〈私〉の外にある。たとえば、冬の冷えた空気を深く吸い