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塔 月詠/2021.7

車内ごと光らせてくる揺らめきに川に差し掛かったと分かった

みな窓の先に目をやる高架橋 次はさくらの咲く中目黒

奥行を思い出す 本棚を置くまえの間取りに目をひらくとき

春嵐あとのさくらとその先の都市の臓物みたいなネオン

たんぽぽを蹴散らしていたあの日々の先があなたの頬の産毛だ

――――――

 今月も5首の掲載。4月に送った詠草からの選。

 今月はもう10首載るやろ~の気持ちだったので、分からないものですね。いや分からないとか言ってる場合でもないのですが……。選の理由というか判断基準は個別に示されないので、ブラックボックスに対して詠草出した側が意図を汲み取る式です。10首入れると何首か出てくる函数じみている感じもあって、そのわかんなさを楽しく思いもするし、解せぬ……と渋い顔になったりもする。

 塔は複数名の選者がいて、毎月異なるひとの担当になる。これはぼくの知る限りかなり珍しい形式で、他の結社では選者が固定されていて自他ともに認める強固な師弟関係になっている、というかxxさんの選を受けたい! というモチベーションで入社(入社?)することも多いと聞く。
 ぼくの場合は、ある特定のどなたかと言うよりも、好きな歌人に塔の関係者、出身者が多かった。しかしそもそも塔と関係の深い大学短歌会から短歌を始めたので、刷り込みよろしく親の顔として認識しただけなのかもしれない。不可逆なので、もう何もわかりませんが……。

 選に落ちた歌は改作したり、頑なにしなかったりしますが、他のみなさんの「塔に載らなかった詠草」を読んでみたいです。

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