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冷凍パイシートを使ってミルフイユづくり

今回は冷凍パイシートの使い方をマスターします。

一昔前まで冷凍パイシートといえばマーガリンやショートニングを使った風味に乏しいものが多かったですが、最近はバターを使った製品が主流になりました。さすがに手作りよりも風味は劣りますが、便利です。

色々と試食してみましたが、パイシートはメーカーによる味の差はそれほどないようです。写真の冷凍パイシートはニュージーランド、BELLAMYS社のもの。

ところで今回はミルフイユ(ミルフォイユ)をつくりますが、いきなりですが冷凍パイシートはミルフイユには向いていません。パイは小麦粉とバターが層になっていますが、ミルフイユには729層(6回折り込んだもの)くらいは必要です。しかし、市販品が144層のため。。(とはいえ実際には焼き上げれば50層くらいになるのですが)ボリューム感が出ません。冷凍パイシートに向いているのはアップルパイやミートパイでしょうか。

ちなみにお菓子屋さんなどでは通常の折り込みパイではなく、オランダ式と呼ばれる『逆さ折り込みパイ』を使うところも多いようです。これは小麦粉でバターを包むのではなく、バターで小麦粉を包み込むのが特徴。こちらの作り方のほうが脂肪層が安定するため、きれいな層になり、さらに崩れる食感になります。

冷凍パイシートできれいなミルフイユを作りたければ、重しをして焼き上げる方法があります。しかし、形はきれいになりますが、仕上がりが重くなるというデメリットも。今回はできるだけ軽いミルフイユをめざします。

パイ生地は小麦粉と脂肪が層になっています。それを崩さないようにすることがパイをきれいに焼き上げるコツ。もちろん、アップルパイなど包む場合はある程度しかたがありませんが、なるべく形は崩さないように、あまり触らないようにしましょう。手の温度でも脂肪は溶けてしまうので。

さて、どのように解凍したらいいのでしょうか。パッケージの裏には『室温で五分から十分程度解凍して使う』よう指示されていますが、インターネットを検索すると『冷蔵庫で解凍、室温は駄目』という意見もあるようです。

上の写真は冷蔵庫で3時間解凍した物。パイ生地の温度は冷蔵庫の庫内温度の設定にもよるのですが9度でした。パイ生地はバターが溶けない15度以下で作業する必要がありますので、ぎりぎり許容できる範囲でしょうか。

パッケージに推奨されている室温はどうでしょうか。5分経過した段階で生地の温度は約0度。

これくらいなら包丁で切ることもできますし、十分も置けば成形もできます。

試しに焼いてみましょう。(試し焼きのために砂糖を振ってますがミルフイユをつくるときには必要ありません)右が室温解凍、左が冷蔵庫です。220度のオーブンで焼きました。

生地の温度が低いほうがあきらかに生地の立ち上がりがいいことがわかります。このことから導き出される結論は『冷凍パイシートは室温で5〜10分』の半解凍の状態で扱うのが正しいということになります。パッケージの裏に記載されている記述は基本的に正しいのです。

さて、いよいよ生地を焼いてきますが、その前に『ピケするかしないか』という選択があります。ピケとは生地にフォークなどで穴を開けておくこと。冷凍パイシートのなかにはあらかじめピケされているものも売られています。試しに両方焼いてみましょう。

ピケしないで焼くとこんな感じで、

ピケして焼くとこんな感じ。ピケするとそこから上記が抜けるので、膨らみが弱くなることがわかります。今回は軽い仕上がりを目指すので、ピケはしません。

おいしいパイのコツは『しっかり焼く』ことです。

これも重要な点です。フイユタージュ生地は脂肪層のバターが加熱によって溶け、その際に発生した水蒸気によって小麦粉の層が持ち上げられます。また。溶けたバターによって生地が揚げられたような状態になり、ほろほろとした状態になります。そのため、最初の段階ではより多くの水蒸気を発生させるために高温で焼く必要があります。

ところが高温で焼くと、表面が焦げたのになかに色がついていないという問題も。この写真の右側は失敗例ですが、それを避けるためには二段階の温度を使い分けて火を入れるのがおすすめ。

つまり、200度〜220度の高温のオーブンに10分間入れ、次に温度を150度に落として40〜50分間焼くのです。まずは高温で膨らませて、その後は低温でじっくりと。通常のパイの焼き方のレシピよりもずっと長い時間焼くことになりますが、この焼き方だとほろほろの生地になります。

『カスタードクリームの作り方』

パイを焼く前にカスタードクリームを準備しておきます。

カスタードクリーム
牛乳 200cc
卵黄 40g(L玉 2個分)
グラニュー糖 45g
バニラペースト 少々
小麦粉    10g
コーンスターチ 10g

お菓子作りなので卵黄の分量を出しましたが、実際には2個分の卵黄でOKです。

見慣れない材料にバニラペーストがあると思います。バニラ棒でもいいですが、手軽なので製菓材料店などでみかけたら買っておくと便利です。保存も利きますし、バニラ棒よりも安いです。なければバニラエッセンスかバニラオイルを使ってください。

小鍋で牛乳を温めます。バニラペーストを小さじ四分の一弱くらい入れました。

このときに分量のなかから砂糖を半分入れておくと焦げ付き防止になります。砂糖は下に沈むので牛乳が焦げつかない技です。

カスタードクリームにはコーンスターチと小麦粉を両方使います。小麦粉だけでもOKですし、コーンスターチだけでもいいのですが、小麦粉を入れると粘りが出て、コーンスターチのほうが腰のない仕上がりになります。口溶けが変わってくるので割合を好みで変えていろいろとつくってみるのもいいでしょう。

卵黄をとき、砂糖をすり混ぜ、小麦粉とコーンスターチを加えます。

混ぜたところに温めた牛乳(目安は72℃)を加えます。何回かにわけながら牛乳を加え、よく溶かします。

鍋に戻して加熱します。

マギーキッチンサイエンスによると「小麦粉が保護の役割を果たすので、直火で沸騰させてもだまになることない」のだそう。ゴムべらでやっていますが、泡立て器のほうが向いています。

きちんとかき混ぜて、沸騰させることには2つの目的があります。1つは卵黄のアミラーゼを失活させること。もう1つは澱粉に火を通し、風味をよくするためです。この工程でしっかりと火を入れることが粉っぽくならないコツ。

出来上がったクリームはラップなどに包んで冷やします。かき混ぜながら冷やしてはいけません。せっかくできあがった澱粉の繋がりを壊してしまうことになるからです。

保冷剤ではさんで冷やすと早いです。この分量で260gのカスタードクリームができあがります。カスタードクリームは冷凍が効かないので、都度、つくる必要があります。使う時は泡立て器で混ぜてほぐして、柔らかくしてつかいます。

ホイップクリーム100ccで軽さを加えましょう。生クリーム100ccに10gの砂糖を加えて角が軽く立つまで泡立てます。

柔らかくしたカスタードクリームにホイップクリームを何度かにわけて加え、混ぜ合わせます。

滑らかなクリームになりました。しぼり袋に入れてスタンバイしておきます。冷やすと若干、硬くなるので作業がしやすくなります。パイ生地が薄いので、クリームは若干柔らかめに仕上げています。もしも折り込みパイから手作りで、となったらまたレシピの分量は変わってくるでしょう。

焼き上がったパイを半分に切り、クリームを絞ります。今の時期ですとここにストロベリーなども入れてももちろんOKですし、ジャムでもかまいません。プラリネもおいしいです。

切るとこんな感じ。しっかり焼いてあるのでほろほろです。切るのにテクニックがいりますが、長く重めの包丁を使いとにかく力を入れないで切るのがコツ。パン切り包丁で切るとボロボロになるので、普通の包丁を使います。

冷凍パイシートを使っているため高さはありませんが、それでも崩れるような食感は充分に味わえます。驚くほど軽いミルフイユが、手軽につくれるのが魅力。パイシートは半分に切って焼くだけですので、一度お試しください。

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樋口直哉(TravelingFoodLab.)

樋口直哉 作家・料理家 主な著作として小説『スープの国のお姫様』(小学館)ノンフィクション『おいしいものには理由がある』(角川書店)など。新刊『新しい料理の教科書』が1/17日に発売されました!

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