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日本唯一、ジビエの競り市を見学した

変わり続ける日本の食文化。「ジビエ」という単語も二十年前にはほとんど聞かなかったと思いますが、よく耳にするようになりました。その背景にあるのは深刻さを増す野生鳥獣による農林水産物の被害。農林水産省の統計によると平成29年度の被害額は164億円で、全体の6割を鹿と猪が占めます。鹿や猪に関しては捕獲後、食肉として利用することが推進されています。いわゆる「国産ジビエ」です。地域によってはアナグマやハクビシンなども食材として流通しているようです。

とはいえ、このような政策が推進される前から日本でも関西や九州などを中心に狩猟肉は食べられてきました。

「樋口さん、熊本の多良木町に日本で唯一のジビエの競り市があるんですよ!」

と知人から誘われまして、見学してきました。残酷と思われる写真が一部あるので、苦手な人は読まないことをオススメします。

鹿児島空港から車で1時間半、熊本県の南にある多良木町の村上精肉店さんの隣がセリ場になっているそう。イノシシ競り市は毎年11月から3月まで、月二回、開催されています。セリは誰でも参加でき、売り買いができるそう。

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到着した時、すでに多くの車が停まっていました。

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手書きの味のある看板がいい感じです。

いのしし

生体とお腹を開いた状態のイノシシが運ばれ、セリにかけられます。競り場には動物園のような匂いがします。お腹を開いた状態のイノシシの写真を残酷に思う方もいるので、ここでは張りませんが、足を向けた状態で並べられています。

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「2万3000、2万4000、2万5000、2万5000円……4万円。4万、4万、あとはないですか、切りますよ。4万、4万、4万1000から4万2000円。4万3000(中略)4万8000円。もうちょっといくかいな……5万、5万、5万です。8番さん」

小気味いい競りの掛け声が続きます。このセリ場は1994年に開設され、もともとは家畜のセリ場だったそうです。県内外の猟師や農家、飲食店関係者らが参加し、競り落としたイノシシは持って帰って自家消費するか、隣の村上精肉店で解体してもらうこともできるそうです。メスのある程度の大きさのあるイノシシは一頭1万〜5万円程度で取引され、個体の小さなものや雄はもっと低い価格で取引されていました。

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競り市自体は小一時間で終了。会場では猪汁が振る舞われていました。猟師の所得向上という観点から考えると一般流通のように競り市で価格が決定する仕組みは興味深いな、と思いました。このような仕組みがあればハンターももっと増えるのではないでしょうか。

というのもハンターの減少は全国的な課題。環境省の統計によると、1970年に53万人いたハンターは2010年には19万人に。それで狩猟頭数は増えているわけですから、現在活躍されている方には頭が下がります。もともと、現在のように報奨金が整備される前の有害鳥獣駆除はハンターのボランティアのようなもの。獲ったものに価格がついて生活できるようになれば、ハンターをやろう、という人も増えるでしょう。

とはいえ、それ以前に、ジビエ利用率は2018年度はシカで13%、イノシシで6%となっており、低い水準。せっかく奪った命を無駄にしているわけです。

先ほどお腹を開いたイノシシの写真を残酷に思う、、、と書きました。食べずに捨てるのと、食べるのではどちらが残酷でしょうか。スーパーに並んでいる肉のパックはどうでしょうか。様々なことが考えられると思いますが、おそらくそれぞれの方が様々に感じ、おそらく一つではないか、と思います。こんなことを考えただけでも現場に足を運ぶ価値はあります。

いずれにせよ、ジビエの消費量を増やすには食べ方を啓蒙する必要があるでしょうし、入手しやすくなるよう流通も整備する必要があります。まだまだ課題は山積していますが、勉強になる取材でした。

取材やご質問等等、お問い合わせがあれば『一般財団法人たらぎまちづくり推進機構』さんにご相談されるのがいいそうです(僕も今回の取材でお世話になりました)

noteもやってますが、ホームページのコンタクトページからが確実か、と思います。


撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!