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味覚実験「キャリーオーバーとアダプテーション」

今日は趣向を変えて味覚実験のご紹介。人が食べ物をどのように味わっているか、を知るのは料理をする上でも重要ですが、食べる順番も大事です。なぜなら食べ物には後味というものがあるから。

実験で理解しましょう。 用意するものは水とレモンジュース、それから砂糖です。

最初に水を一口飲みます。ただの水の味です。

続いてレモンジュースをスプーン一杯、口に含みます。

──酸っぱいです。ここまでは普通。次に水を飲んだらどんな風に感じると思いますか? 

次に水を飲んでみると、舌の上に甘い味が広がります。レモンの後味が残っているので水が酸っぱく感じられると思った方もいるかもしれませんが、逆なのです。さて、驚くのはここからです。

砂糖をスプーンに少しとって少なくても10秒間は舌の上に載せて、溶かしてください。

そして、もう一度、水を飲みます。今度は水が酸っぱく感じられます! 味覚の研究者達はこの現象を「キャリーオーバー(後味)とアダプテーション(適応)」と呼んでいます。食べ物や飲み物の組み合わせは相互に影響を与えるので、コース料理を組み立てる際には注意が必要なのです。

さて、教科書で「味覚分布地図」というのをご覧になっ た方はいますか? 舌に割り当てられた特定の部位がそれぞれの味を感じる──先端は甘み、奥は苦み ──といったものですが、これは俗説でして、今では間違いとされています。1901年に発表されたドイツの科学者が書いた論文をもとにアメリカの学者が1942年に発表された論文が誤った形で流布されたものです。

科学者による最近の研究ではレセプター(味の受容体)は特定の領域に限定されているわけではなく、それぞれの味のレセプターは口のなかのいたるところにあるそうです。でも、困ったことに本やインターネットなどでは今だにこの地図が紹介されているので、意外とまだ信じている方も多いようなので、ちょっと書いておきました。知見というものは常に更新されます。過ちを広めないよう に、努めたいものですね。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!