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cakes連載〈「 おいしい」をつくる料理の新常識〉第4回余談『湯煎で加熱した目玉焼き』

cakesの連載の4回目。テーマは『目玉焼き』

目玉焼きはすべての料理の基本。焼く調理法をレシピで伝えるのはとても難しいんです。調理には「煮る」「茹でる」「蒸す」「揚げる」「焼く」という5つの調理法がありますが、このなかで「煮る」「茹でる」「蒸す」は水を使った加熱調理法で、一気圧においての温度は100度付近で保たれているので一定。

「揚げる」の場合は油を使うので、温度変化は水よりも大きいものの、たっぷりの油をつかえば温度変化はゆったりとしたもの。火加減と時間を調節しながらコントロールすればいいだけです。

「焼く」という調理法が厄介なのは温度変化が早いこと。熱したフライパンの温度は100度を軽く超えている上に、火にかけていれば、温度はさらに上昇し続けるわけです。本来は車のアクセルワークみたいに、火を強めたり、弱めたりする必要があるのですが、これをレシピで伝えるのが難問。

となると、誰もが上手につくれるレシピを考えた場合、弱火で加熱するというのは一つの解にはなりうるは確か。しかし、メイラード反応が起きない上に水分の蒸発量が多いので、そこそこおいしいという味以上にはならず、しかも時間がかかるというデメリットも。ここらへんはトレードオフの関係にあるので、答えのない話ですね。

さて、目玉焼きを2種類紹介しました。一つ目は低温で焼いたパンにあう目玉焼き、2つ目は高温で焼いたご飯にあう目玉焼きです。1つ目の仕上がりが気になっていて、改善すべき点があるとするなら、白身にできる気泡。これがあると口当たりが悪くなる。

というわけで完璧な白身のために出た結論は湯煎というもの。バターを塗った皿に塩、胡椒を振り、そこに卵を割り入れる。それを湯煎にかけるのです。

できあがったのがこちら。

白身が完璧に火が入っています。ところが……これって湯煎だから『焼いて』ないですよね(笑)うーん、というわけで除外したボツ料理の紹介でした。モダニストキュイジーヌのチームが70℃で卵を加熱し、卵黄と白身を分け、白身にはクリームを混ぜてミキシングし、それを低温のオーブンで加熱。その上に最初に加熱した卵黄を載せる、という目玉焼きを紹介していて、これは面白い完璧な目玉焼きだと思ったので、今度つくってみます。

連載もよろしくお願いいたします! それでは。

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