少年

車で流れるBGMに対して、たまに息子が「これ何の曲?」と聞くことがある。その時流れていたのは、ゆずの『少年』で、だから私は「少年だよ」と答えた。それに対して息子が

「ムッシュ・ムニエル」

と言って驚いた。

『ムッシュ・ムニエルをごしょうかいします』には確かに、「しょうねん」という言葉が出てくるのだ。ムニエルが魔術の弟子を欲しがり、「しょうねん」を攫おうとする。それは結局失敗するのだが、その話の中に何度か「しょうねん」という言葉が出てきた。

ちゃんと「少年」を単語として認識していたんだな、と思うとともに、「少年」は少し説明が難しい言葉だな、と思う。案の定その後、息子に「少年って何?」と聞かれたので、「息子よりは大きくて、でも大人ではない男の子かな」と答えた。身近にそのくらいの年齢の子がいればイメージしやすいかもしれないが、生憎よく会う人の中にその年齢層はいない。そもそも何歳から何歳までが「少年」かと言われると私もわからない。一応「その年頃の人間」ということで、実際に見ることができる存在だけれど、「りんご」とかと比べると曖昧で説明し辛い単語だと思う。

もっと説明が難しいのは、「目に見えないもの」だろう。最近苦労したのは、寝ている時に見る「夢」だろうか。「寝ている時に見るもの」と言っても、息子がどんな夢を見ているのかわからないし、それを覚えているかもわからないし、具体例も出しにくい。恐らく息子が納得するような説明はできなかったと思う。

「死」に関しても、「死ぬ」という単語は知っているし、「虫を潰したら死んでしまう」ということくらいは認識しているが、「もう動かない」「生き返ることは無い」「だから生きていることを大事にしないといけない」等はまだちゃんとわかっていない気がする。

息子がわからないこと全てを親が教える必要は無いし、生きていけば何となく「これはこういうものなんだな」とわかってくるとは思う。ただ全てを教えないというのも違う気がして、どこまで教えるのがいい塩梅なのかな、と悩む。

とりあえず息子から聞かれたら、そのものズバリを教えるなり、ヒントを教えるなりはするつもりなのだが。これは息子が大きくなったら正解がわかるものなのか、それとも一生答えがわからない問題なのか。いろんな単語に興味を持ってくれるのは嬉しいが、毎回対応に頭を悩ませるのである。


ではまた明日。