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テニススクール事件

こんにちは。

 テニスの王子様というマンガが好きだったのですが、フェデラー選手が公式戦で、不二の必殺技「白鯨」を決めていたことに衝撃を受けたことがありましたね。

 さて今日は、テニススクール事件(横浜地判昭和58年8月24日判タ510号137頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 戸塚ロイヤルテニスクラブに通い始めたばかりの主婦が、松岡コーチの指示により、他の受講生が打ったボールの球拾いをしていました。ところが、ある受講生が打ったボールが右目にあたり、病院で網膜振盪症と診断されました。そのため主婦は、松岡コーチの雇い主であるテニススクールに対して、治療費や慰謝料など約130万円の支払を求めて訴えを提起しました。

2 主婦側の主張

 松岡コーチは、他の受講者がバンバンボールを打ち返している危険な状況のなかで、あえて私にボール拾いをさせていました。しかもボールが途切れないように、松岡コーチが送り出すボールを拾って手許に届けさせるようが指示があり、初心者に向けてボール拾いの危険性やその予防方法についての指導を受けておりませんでした。これは明らかに危険防止義務を怠っています。なので、松岡コーチに過失があり、その雇い主のテニススクールは使用者責任を負うことになるのです。

3 テニススクール側の主張

 以前から、ボールを打つ練習をする際に、練習を連続的、効率的に進める目的で、練習者以外の受講者にボール拾いをさせていたが、あらかじめ受講者にはボールを打つ者に背を向ける姿勢でボールを拾うように指示していた。テニススクールの受講者は、ルールに従って通常予測される動作によって生じる損害についてはあらかじめ承知していたはずだ。

4 横浜地方裁判所の判決

 松岡は、テニススクールのコーチとして、受講者の生命・身体を損なうことのないようその受講者の資質、能力、受講目的に応じた適切な手段、方法で指導をなすべき注意義務があるところ、これを怠り、初心者の主婦に対し、練習者の近くでボール拾いをすることの危険性やその危険防止について何の指導もしないまま、ボール拾いを指示し、その結果、主婦に傷害を負わせるにいたったものと認められるから、松岡の使用者であるテニススクールは、使用者責任に基づき、主婦に対して約80万円を支払え。

5 スポーツ指導における責任

 今回のケースでは、テニスコーチが指示したボール拾いが、初心者に対する指導に沿わない危険な行為と認定されました。テニススクールでは、十分なボールを用意してレッスンをし、途中でボールを拾い集めるときには練習を中止して、受講生がケガをしないように危険防止に努める必要があるでしょう。

では、今日はこの辺で、また。


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