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ファイブスター物語事件

こんにちは。

 日本ではロボットアニメが今も昔も変わりなく人気があるのですが、アニメでは表現されていないロボットの細部について、プラモデルを見て初めて理解できたときには、その感動は凄まじいものがありますね。

 さて今日は、アニメのプラモデルの著作権が問題となった「ファイブスター物語事件」(大阪高判平成10年7月31日LEX DB28041575)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 株式会社ボークスの元従業員だった生嶋毅彦氏は、在職中にファイブスター物語の「ジュノーン初期型」などのプラモデルの原型を製作しました。その後、ボークスの代表取締役らが、これを改変した上で商品化し、販売していました。すると、会社を退職した生嶋氏は、自身の著作者人格権を侵害されたとして、株式会社ボークスに対して模型原型の改変の差止と、損害賠償などを求めて提訴しました。

2 生嶋氏の主張

 商品の原型製作者が別の人の名前になっているけど、どう見ても、私が作った原型が使われているじゃないか。プラモデルの原型は、著作権法10条1項4号の「美術著作物」にあたるので著作者人格権に基づいて、商品に表記された原型製作者に対して、私以外の者の名を表示して展示・販売することの禁止、私の意に反する変更、切除その他の改変の禁止、改変した原型による製品について展示・販売することの禁止、慰謝料など約700万円の支払いを求める。

3 ボークスの主張

 プラモデル商品は、二次元的に表現された漫画、映画のキャラクターを、可能な限り忠実に立体化した商品である。したがって、これらの商品及びその立体化の途上で作成される模型原型に創作性はなく、著作物性を認めるべきではない。このような場合に著作物性を認めると、同一のキャラクターをテーマとする全ての立体に対し独占権を与えることになり、不都合な結果が生じる。なぜなら、同じキャラクターをテーマとした後発の立体は全てその原画への忠実性故に、先発の立体と実質的に類似性を有するものとして、先発者に二次的著作権の侵害を主張されかねないからである。

4 大阪高等裁判所の判決

 キャラクターを忠実に模型等の立体に制作しようとする場合には、制作者が、平面的かつ非連続的に表現された漫画の一コマ一コマから原作者の有するイメージに出来るだけ近いキャラクターの全体像を想像して把握し、かつ、紙面に表現されない部分についても表現された部分と齟齬のないよう想像力を働かせて把握することが要請されるから、その作業は単に紙面に表現されたものをそのまま忠実に再現するのとは異なり、その平面に表現された内容から一定の想像力・理解力・感性を働かせて統一的な立体像を制作するという創造的作用を必然的に伴うものである。
 そうすると、問題となった模型原型は、漫画の原画を忠実に再現した複製というに止まらず、生嶋氏の造型師としての感性や解釈に基づく独自の創作作用、すなわち、思想・感情の創作的表現としての一面を有する造形物というべきであって、二次的著作物に当たるものということができる。
 よって、ボークスの控訴を棄却する。

5 プラモデル画像のSNSへの投稿に注意

 今回のケースで裁判所は、漫画からプラモデルの原型を製作した場合にはその製作者に著作権が認められるとして、ボークスの控訴を棄却し、生嶋氏に著作権を認めてボークスに商品販売の差止と55万円の損害賠償を命じた京都地裁の判決が確定しました。
 また著作物であるプラモデルの写真をSNSにアップロードすると、公衆送信権の侵害となる可能性が高いので、十分に注意する必要があるでしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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