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【臨床医学各論】コロナ禍で急増? 性感染症(STD)について一緒にお勉強しましょう

今回は性感染症(俗に言う性病)についてお勉強しましょう。
あまり得意なテーマではないのでサラッとみていきます。


単純ヘルペス

単純ヘルペスウイルスにはHSV-1とHSV-2の2種類があります。性感染症に分類されるのはⅡ型(HSV-2)です。

<病態>

性行為により感染するケースが多く、唾液や患部の直接接触での感染となります。2〜20日で発症し、性器ヘルペスが左右対称に現れます。ウイルスが腰仙髄にある知覚神経節に潜伏します。ヘルペスが痛いのは、神経節(感覚神経)に潜伏することが原因です。

<治療>

抗ウイルス薬の投与でよくなりますが、免疫力が低下すると再発することがあります。

梅毒

梅毒とは「梅毒トレポネーマ」と呼ばれるスピロヘータ科の螺旋状細菌による性感染症です。疫学的には5類に分類されます。
ちなみに梅毒の「梅」は陽梅(ヤマモモ)のことなんだそうです。

<病態>

梅毒の病期は1〜4期に分類されます。第1期は無痛で、第2期である3ヶ月〜3年経過後に梅毒性バラ診と呼ばれる淡紅色の斑がみられます。”バニラ(バ2ラ)バニラ高収入”と覚えましょう。
第3期となる3〜10年経過後には壊死した組織がゴムのように硬くなった「ゴム腫」が現れます。
10年以降である第4期には神経性梅毒により脊髄癆(せきずいろう)を発症します。すると歩行困難となったり脊髄の障害により知覚障害となります。過去には死亡するケースも多かったようです。

<治療>

ペニシリン系抗菌薬の投与により適切な治療をすることで回復します。

淋病

淋病とは淋菌と呼ばれる菌による急性の性感染症です。
男女で症状が異なり、男性は尿道炎に、女性は子宮頚管炎となります。女性は子宮頸管炎に自覚症状がないことがほとんどで、これが原因で性交渉により男性に罹患するケースが多いようです。

<病態>

三大症状として、排尿痛、頻尿、膿性分泌がみられます。

<治療>

抗菌薬を投与します。なお、予防としてコンドームの使用が有効です。

性器クラミジア

クラミジア、トリコマチスが感染して起こる性感染症を指します。クラミジアは細胞内でのみ増殖する病原微生物で、疫学的には5類感染症に分類されます。

<病態>

頻尿、排尿痛、漿液分泌がみられます。男性では精巣上体炎、女性では子宮頸管炎、子宮内膜症、卵管炎がみられます。

<治療>

感染した上皮細胞の遺伝子検査を行い、抗菌薬を投与することで完治します。

カンジダ症

真菌であるカンジタはヒトの皮膚や消化管にいつもいます。ただし、免疫が低下すると発症しやすくなります。普段から近くにいるんだけれど、免疫力低下で感染してしまうことを日和見感染といいます。


エイズ(AIDS・後天性免疫不全症候群)

HIVとAIDSの違い

HIVとAIDS。両方よく聞くことが多いですが、ふたつの違いは「ウイルスの名称」と「罹患した状態」の差です。
HIVとは、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)でウイルスそのものの名称です。
AIDS(Acquired Immunodeficiency Syndrome)とは後天性免疫不全症候群といい、HIVに罹患した状態を指します。

<病態>

HIVに感染すると、CD4陽性Tリンパ球(ヘルパーT細胞の一種)に感染し、免疫機能が破壊されます。
HIVの感染経路は以下のとおりですが、性交渉による感染が80%程度を占めます。

  • HIV感染者との性交渉

  • HIV混入した輸血

  • 母子感染(垂直感染)

<症状>

発症から2〜4週間後の急性期では、発熱、リンパ節の腫れ、関節痛が見られますが、数週間で消失します。
そして特に症状のない無症候期これが数年から十数年続きます。
しかし、症状がない中で、身体の中ではCD4陽性Tリンパ球が破壊されています。
こうして免疫が低下すると、カンジ病で記載した日和見感染により各種の病気に感染することとなります。

国試の問題を解いてみよう

性行為感染症でないのはどれか。 (はき第9回-82)[臨床医学各論]

  1. クラミジア感染症

  2. 副睾丸結核

  3. 梅毒

  4. 淋病






<答え>

2.副睾丸結核


潜伏期間が最も長いのはどれか。 (はき第29回-44)[臨床医学各論]

  1. ジフテリア

  2. 破傷風

  3. エイズ

  4. 流行性耳下腺炎







<答え>

3.エイズ


以上、性感染症について書いてみました。ではまた!

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