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約束。

 その日は秋の一大イベントとして、いつもは1000人規模の会場で行う興行も10000人規模にまで拡大。オールファイトジャパン、通称「AFJ」は男女混合を売りにするプロレス団体だ。

勢いのあるAFJの興行は日本武闘館を満タンにしていた。

だが全8試合が組まれたその日、問題は第6試合に起こってしまった。

男女混合異種格闘技と銘打たれたその試合では男子柔道太郎対女子空手友香という異種戦で、ありがちなリアルっぽい雰囲気を醸し出していた。もちろんブックが存在していたが試合後半友香の前蹴りが太郎のみぞおちに入ってしまい、太郎が激怒。友香の髪の毛を引っ張り、場外の固い床で払い腰を決めると一気に雰囲気は荒れて、男子陣と女子陣は緊張感を高めた。結局収拾のつかなくなったその試合はノーコンテスト。太郎に顔面を本気で殴られた友香は顔を腫らして控え室に帰っていった。10000人の観客も騒然となった。

そしてメインエベント、男子チャンピオン、リュート対女子チャンピオン、茜。

双方ベビーフェイスで行われたこの試合は最後こそブック通りにリュートがムーンサルトプレスによって茜をフォールしたが、その内容を微に入り細を穿ち見ていくと決して、リュートにとって順調な試合ではないことが分る。

茜が仕掛けた意趣返しは、観客の誰にも分らないように、リュートを追い込んでいた。

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