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無題の街。

いつの間にかこの街は、人格をなくしていった。
全く理由のわからない人口の消滅と、それにも関わらず動かない国、行政、司法。親族がどれだけ騒ぎ立てても、波紋にもならず沈んでいく。

この異常が街を蝕んでいるのを誰も止めることができなくなっていた。
今日も誰かが消えた。隣人をもうしばらく見ていない。
夜逃げをしたのか消えたのかもわからない。
あまりに退廃的な街並みはどこまでも灰色で、いくら空が晴れたところで大差ないほど身動きの取れない人々の心が拡散していく。

国はこの街を「無題の街」と呼んだ。

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