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風の観測地点。

 早瀬章一郎は愕然としていた。
白衣の裾が苛立ちにも似た感情による忙しない貧乏ゆすりに揺れている。

「なんだよこれは・・・。」

全く想定の外だ。この戦闘能力。

早瀬は大きなモニターの前に座りただ、それを眺めていることしかできなかった。潔い孤独感と戦慄が感じうる自分の全てだ。
同時に安堵の裏付けにもなる。

早瀬は、彼の所属する部隊は、それを捕獲することに成功した。ということだったからだ。だがしかし、「これ」をコントロール下に置けるかというと全く話は別だ。そして現状を見ればそれは全く絶望的だとさえ言えた。

彼女はクノイチと呼ぶべき存在だろう。
研究者たちはみんな口をそろえた。
その身なりは、普通の女子高生だ。
まるで現代風な格好。街で歩いているのを見かけてもそれとは気づけないだろう。その風景に溶け込む格好、印象に残らない格好こそがクノイチであることの証拠だろうが。スカートを短くしたセーラー服にベージュのセーターを重ねている。袖口の中に手をほとんど隠しながら、彼女は木から木へと飛び移る。眉毛を隠すくらいの位置で綺麗に切りそろえられた前髪は彼女の表情を隠す。黒髪がなびくほどに、彼女の美しさは極まるばかり。そして、彼女はまるで影のように音もなく移動して、かまいたちのように獲物の命を奪い取っていく。

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