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つまりは単純に君のこと・・・。

少女には傷があった。
外見ではなく、中身に、大きな傷があった。


少女は名前を有栖川優花、といい、優花の方ではなく苗字の方をとって
みんなからはアリス、アリス、と呼ばれていた。
少女はその名前がとても気に入っていて、自分の他の友人とは違う見た目も、その名前のせいで違和感がなくなることを喜んでいた。
小学生のうちから少女は自分の顔の作りが他の生徒たちと圧倒的に違うことを気に病んでいた。無邪気な男子たちは顔を見るなり好きですと告白してきたり、他の女子と比べて石ころとダイヤモンドだと大声で喚いたり。
その度に他の女子たちに申し訳が立たなくなって、いたたまれなくなる。
少女は、だからアリスと呼ばれることを喜んだ。
私は外国人なんだよ、だから、みんなと顔が違っていて当たり前なんだ。
と、そんな言い訳を手にできたような気がしていた。

だが少女はそんな外見的コンプレックスが霞むほどの内面のコンプレックスを抱えていた。それはまるで無視することのできない巨大な影のように、ずっとずっと自分のあとを付いてくる。


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