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自由という檻の中で。

 ほとんど異様という他に言い表しようのない熱気だった。
陽はもうとっくに沈んでいて、貧乏くさい裸電球一つを垂らした狭い体育倉庫の中に、彼らはいた。

換気口は開けっぱなしのコンクリートの穴が一つあるだけで、
そこに舞う砂埃も何もかも、あまりにも泥臭く浮き上がっては沈みを繰り返す。まるで人間の営み、その生活の有り様のようだった。
息遣いはそれぞれに荒く、ことの成り行きを見守る眼差しには燃え盛るような熱が込められていた。


ことの発端は、彼らの高校の運営にあった。
「校則の厳守」という題目が校長から告げられた時には体育館が揺れるほどのどよめきが起こったほどだ。

「今のままでは君らが大人になった時に困ることになる。で、あるからして、生徒手帳に明記されている校則からほんの少しでも飛び出したものに関しては問答無用で厳罰を与える。場合によっては謹慎、停学や退学もありうる。これは期限を決めるものでもなく、永久的に続くものだ。これまで君たちを甘やかしていた世界は今日で終わりだ。」

校長の唐突な宣言によって、彼らの高校生活は過酷なものになった。
廊下を歩く方向や、その速度。制服の着こなしはもちろん、髪の長さ、靴下の長さに至るまで毎日毎日徹底的に教師による検査が入った。

ほとんど監視状態であった。
授業中の私語が一話でもあれば生徒は排除され、簡単な小説ほどの反省文を書かされることになり、日を追うごとに学校からは活気が消失し取り締まりをする教師でさえあまりにも遊びのないこの景色に違和感を覚えていた。

自分たちが学生の頃にこんな風でなくてよかった。
というのが生徒の目に触れない場所での教師たちの口癖になりつつあった。

それほど、目に見えて彼らは鬱屈としていた。
その発露が歪んだとしてもそれは、仕方のないことだった。

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